【よしさんコメント】
沖野外輝夫博士の『諏訪湖 ミクロコスモスの生物』(※02)を三読していたら、
「第4章アオコ現象とミクロキスティス」の70ページに、気になる記述があった。
『諏訪湖でも、この数年、6月から7月の一時期にアオコ現象の先駆けとなるアナベナが急激に細胞を崩壊して、
消滅するという現象が観察されている。見た目の結果としては湖水の表面に白い皮膜様のものが拡がり、「アオコ」
に対して「シロコ」的な状態となる。この現象はせいぜい数日間しか続かないが、顕微鏡で観察してみると、
アナベナの細胞がばらばらに壊れているのがわかる。その原因は藍藻を選択的に摂食または溶解する微生物
の存在にあることがわかってきた。』(ここまで引用)
この「シロコ」的な状態が、2005年07月25日(月)〜26日(火)に亀山湖全域で発生していた可能性が高いことを思い出した。
当日の写真もなく、水面から湖水のサンプルも未採取のため、確認ができないのが残念である。
しかし、
2005年07月20日(水)天候○ 0.5m減水 水温29.0℃ 水色かなりマッディー アオコ現象あり
2005年07月21日(木)天候○
2005年07月22日(金)天候◎
2005年07月23日(土)天候◎
2005年07月24日(日)天候◎
2005年07月25日(月)天候○◎●
2005年07月26日(火)天候● 台風7号鴨川市に上陸(20:00)
2005年07月27日(水)天候○ 0.3m減水 水温25.0℃ 水色かなりマッディー アオコ現象なし
26日(火)の降雨により亀山湖(ダム湖)の湖水が入れ替わった効果も手伝ってか、27日(水)には灰白青色は
消滅、アオコ現象も見られなかった。
上記の経緯と、「湖水の表面に白い皮膜様のものが拡がり、灰白青色に見えた」現象面を考え合わせ、
さらに2006年夏に観察確認・発表した、亀山湖のアオコ現象を引き起こす原因と推定されるアナベナの存在
を考慮すれば、諏訪湖における「シロコ」的な状態が亀山湖においても発生していた可能性が高いものと
思われる。
そうとすれば、藍藻・アナベナの細胞がばらばらに壊れて、肉眼では「湖水の表面に白い皮膜様のものが拡がり、灰白青色に見えた」
ことになる。
それは、亀山湖にも時と場合によって、アナベナだけを「選択的に摂食または溶解する微生物」が出現する事例であるが、
「時」も「場合」も詳細定義は未解明である。
もし、藍藻・アナベナの天敵である微生物(ウイルスか粘液細菌かと思われる)を特定し、分離・培養・増殖できれば、
アナベナ異常繁殖時に抑制目的で使用できるかも知れない。
本稿は、よしさん自身の備忘のため、書き残すものである。
【追記:2009年06月21日】
生嶋 功 編『水の華の発生機構とその制御』(※03)の第3章「水の華発生時の生態系内の生物相互作用」に、
湖沼に出現する藻食性アメーバのリストがあり、「長野県木崎湖の場合は、Anabaena の水の華形成後に、Anabaena を
捕食する浮遊性アメーバ、アステロカエラム Asterocaelum が大増殖し湖面全体を白色皮膜状に覆ってしまった」
と山本鎔子博士が述べている(※01)。
1982年10月05日撮影の湖面に集積したアメーバの写真等も大変興味深い。
【追記:2010年08月27日】
村上哲生(名古屋市環境科学研究所)は『身近な水辺 ため池の自然学入門』の「プランクトンによる池の水の着色」で藻食性アメーバにふれ、同書口絵Gに
名古屋市守山区大村池の事例・白色皮膜状写真を掲載している(※04)。
【参考文献】
(※01)船越真樹・清沢弘志・林 秀剛(1985):
『木崎湖における浮遊性アメーバの爆発的増殖』環境化学研究報告集 29〜43pp
(※02)沖野外輝夫(1990):『諏訪湖 ミクロコスモスの生物』八坂書房
(※03)生嶋 功 編(1991):『水の華の発生機構とその制御』第2刷 東海大学出版会 116〜121pp
(※04)ため池の自然談話会(1994):『身近な水辺 ため池の自然学入門』合同出版 124〜125pp
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