【よしさんコメント】
写真のカイミジンコ(fig.01)は、千葉県亀山湖(神社下)のプランクトン定期調査で、よしさんが採取した1個体です。
良く見かけるミジンコ類やワムシ類と、外観形状が大きく相違しているにもかかわらず、ミジンコ類に分類されるのは、
二枚貝の中にエビ(節足動物)が入っているような構造のプランクトンだからです(カイムシ=貝虫とも呼ばれます)。
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カイミジンコ類は、海産種・化石種を含め世界で約33,000種類が報告され、未発見の種も多いとされていますが、
現存種は10,000〜15,000種類であるとされます。
中でも淡水産種は数千種と言われ、日本では『淡水産種についての文献はほとんどない(中略)
本図説に淡水産種40種をあげたが、少なくとも100種は生息すると考えられるので、まだまだ多くの新種
や日本新産の種が発見される可能性のある動物群である。』(※01)、淡水産種のカイミジンコ類は全てポドコーパ目
Order Podocopida Sars,1866 で、『普通にみられる淡水産カイムシ類は99.9%までキプリス上科に属する。』(※01)
と書かれるように、研究の貧弱な分野です。
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キプリス上科以外の淡水産カイミジンコには、ダーウィヌラ上科(ダーウィニュラとも)Darwinulacea があり、世界で30種、日本では
Darwinula stevensoni(Brady et Robertson,1870)1種が知られていました(0.1%の希少さです)。
写真のカイミジンコ(fig.01)の中央に見える中心筋痕と呼ばれる模様に特徴があり、ロゼット状(約10ケ・
個体により1〜2の変異あり)に並ぶのは、ダーウィヌラ上科の検索の確かな根拠で、同定は比較的容易です。
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2億年前から、メスだけで無性生殖を続けてきたとされるダーウィヌラ上科に、新種(Vestalenula cornelia)のオス
が、ロビン・J・スミス博士・神谷隆宏教授らのグループにより、屋久島の池から発見された(※02)2006年04月13日の発表は、
日本のダーウィヌラ上科に新種を追加したにとどまらず、有性生殖が続いていた可能性を示唆する重要な業績です。
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ワカサギからは大分脱線しましたが、オマケついでに、前述のスミス博士(琵琶湖博物館学芸員)の
『カイミジンコの研究・カイミジンコについての驚くべき事実9』には
『カイミジンコは魚に食べられてもまだ生き延びることができます』(※03)という観察事例
が紹介され、釣り人には興味深い話題です。
亀山湖における、カイミジンコ Darwinula stevensoni(Brady et Robertson,1870)の採取・観察報告は、本稿が国内初と思われます。
魚とプランクトンの個人研究の楽しさ、伝わったかなぁ。
【参考文献】
(※01)『日本淡水動物プランクトン検索図説』水野寿彦・高橋永治 2000年03月31日改訂第1版第1刷 東海大学出版会 ¥18,900
(※02)プレスリリース(pdfファイル)
(※03)『カイミジンコの研究・カイミジンコについての驚くべき事実9』
(04)大久保一郎『琵琶湖産淡水カイミジンコDarwinula stevensoni』日本生物地理学会会報、2001年12月12日、第56巻,39−43pp.
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