亀山湖・牛久沼は首都圏近郊のワカサギ釣り場をめざします

ワカサギふ化放流ノート
牛久沼における網走湖産ワカサギ卵ふ化放流日誌(2008)
Hatching diary Abashiri lake products eggs of japanese-smelt, Hypomesus nipponensis in the Ushiku swanp(2008).
2008年は、茨城県牛久沼水系を漁場とする牛久沼漁業協同組合の、ワカサギ増殖3ケ年計画の最終年にあたります。
ワカサギの主群は牛久沼内で自然産卵・ふ化していますが、ふ化仔魚に適す初期餌料プランクトン(小型のツボワムシ等)や 後期稚魚に適すプランクトン(ゾウミジンコ・ケンミジンコ等)の発生は、いつでもワカサギの成長段階と合致するわけではありません。
餌料不足による初期減耗は、ワカサギ資源量を変動させる大きな原因のひとつです。
牛久沼漁業協同組合では、ワカサギの管理型ふ化放流によるワカサギ資源量の安定供給を目的に、 芦之湖漁業協同組合が開発実用化した「ふ化器」を中心とした「ワカサギ卵恒久ふ化設備システム」を 2007年に独自設計・製作・施工導入しました。
本日誌は、網走湖産受精卵3000万粒を用いた「ワカサギ卵恒久ふ化設備システム」運転の記録です。
ふ化器 jar hatchery
ワカサギ卵検鏡 egg
ノート note
fig.a01 受入初日
fig.a01 受入初日
fig.b01 受入初日
fig.b01 受入初日
【受入初日】2008年04月16日(水)○
08:50受精卵受取(クール宅配便近傍拠点迄漁協が往復し受取)
08:50〜09:50袋入り受精卵を水温15.0℃地下水で養生・水温順応
10:00〜13:00受精卵の脱粘・洗浄処理
10:30〜13:00受精卵を1〜5号機に収容
13:00給水温度15.0℃
19:00検卵検鏡(持帰り)
正常受精卵20ケ/20ケ
白石図6−7(受精後30〜100hr相当)
fig.a02 受入2日目
fig.a02 受入2日目
fig.b02 受入2日目
fig.b02 受入2日目
【受入2日目】2008年04月17日(木)◎●
給水温度16.0℃
給水水量バタツキあり
08:15〜09:30パイセス175ml薬浴
15:30検卵検鏡(持帰り)白色化気配あり
fig.a03 受入3日目
fig.a03 受入3日目
fig.b03 受入3日目
fig.b03 受入3日目
【受入3日目】2008年04月18日(金)●
給水温度15.5℃
朝、水生菌微量あり
給水水量確認(10Lバケツ計量で4筒分10L=31秒≒20L/分を確認)
08:30〜09:40パイセス175ml薬浴
08:50水量低下発生(原因不明)
09:40〜給水槽保有水をバケツで排水&手動原水弁開により注水置換
13:00検卵検鏡(現場)全機検卵・撮影は4号機卵
13:40観察水槽の卵を1号機に収容
白石図9−10(受精後170〜230hr相当)
fig.a04 受入4日目
fig.a04 受入4日目
fig.b04 受入4日目
fig.b04 受入4日目
【受入4日目】2008年04月19日(土)◎
給水温度15.0℃
給水水量バタツキ前夜間なし・水生菌なし
08:30〜09:40パイセス175ml薬浴
09:40〜給水槽保有水をバケツで排水&手動原水弁開により注水置換
11:00検卵検鏡(現場)全機検卵・撮影は4号機卵
白石図10−11(受精後230〜270hr相当)
fig.a05 受入5日目
fig.a05 受入5日目
fig.b05 受入5日目
fig.b05 受入5日目
【受入5日目】2008年04月20日(日)◎
給水温度15.0〜15.5℃(牛久沼水温14.0℃)
卵色は黄白色から灰色系黄土色に変化・水生菌なし
08:15〜09:30パイセス175ml薬浴
09:30〜給水槽保有水をバケツで排水&手動原水弁開により注水置換
12:00検卵検鏡(現場)全機検卵・撮影は4号機卵
卵の中で心臓動いている・魚体盛んに動く
5号機卵の半分を3号機に移し替え収容
白石図11−12(受精後270〜320hr相当)
fig.a06 受入6日目
fig.a06 受入6日目
fig.b06 受入6日目
fig.b06 受入6日目
【受入6日目】2008年04月21日(月)○
給水温度15.5℃
ふ化棟内やや腐臭あり
1号機中層卵に水生菌あり・5号機に水生菌若干あり(大方除去)
卵色はふ化器下部が灰黒色系に変化
08:15〜09:30パイセス175ml薬浴
09:30〜給水槽保有水をバケツで排水&手動原水弁開により注水置換
11:00検卵検鏡(現場)全機検卵・撮影は4号機卵
白石図12(受精後320hr相当)
fig.a07 受入7日目
fig.a07 受入7日目
fig.b07 受入7日目
fig.b07 受入7日目
【受入7日目】2008年04月22日(火)○
給水温度16.0℃
1〜4号機最上層の死卵を、エキスパンションにより初排出
09:10〜10:20パイセス150ml薬浴
10:20〜給水槽保有水をバケツで排水&手動原水弁開により注水置換
12:00検卵検鏡(現場)全機検卵・撮影は2号機卵
白石図13(受精後350hr相当)
fig.a08 受入8日目
fig.a08 受入8日目
fig.b08 受入8日目
fig.b08 受入8日目
【受入8日目】2008年04月23日(水)○
給水温度16.0℃(牛久沼水温16.5℃)at10:00
1〜4号機最上層の死卵を、エキスパンションにより排出(第2回)
09:15〜10:25パイセス175ml薬浴
10:25〜給水槽保有水をバケツで排水&手動原水弁開により注水置換
13:30 1〜4号機&観察槽で、ふ出仔魚目視確認
13:30牛久沼水位YP6.14m
fig.a09 受入9日目
fig.a09 受入9日目
fig.b09 受入9日目
fig.b09 受入9日目
【受入9日目】2008年04月24日(木)●◎
給水温度15.5℃(牛久沼水温16.0℃)at08:00
07:30三日月橋下プランクトン採取・気温17.0℃・YP6.15m
07:40 1〜4号機より仔魚ふ出継続中
08:30たまや桟橋プランクトン採取・気温17.0℃・YP6.15m
09:00ふ出仔魚サンプリング(ホルマリン固定)
13:30給水温度15.5℃&越流樋水温17.0℃
fig.a10 受入10日目
fig.a10 受入10日目
fig.b10 受入10日目
fig.b10 受入10日目
【受入10日目】2008年04月25日(金)◎○
給水温度15.0℃(牛久沼水温16.0℃)at08:00
08:00たまや沖プランクトン採取・気温11.0℃・YP6.21m
08:20 1〜4号機より仔魚ふ出継続中
08:20 2号機及び4号機の収容卵嵩が半減(前夜主力がふ出と推定)
08:20 1号機及び3号機の収容卵嵩も減少(前夜主力がふ出と推定)
09:00ふ出仔魚サンプリング(ホルマリン固定)
fig.a13 受入13日目
fig.a13 受入13日目
fig.b13 受入13日目
fig.b13 受入13日目
【受入13日目】2008年04月28日(月)◎○
給水温度15.5℃・越流樋水温16.0℃(牛久沼水温16.5℃)at08:50
09:00牛久沼水位YP6.14m・気温14.0℃
09:00 3〜4号機より仔魚ふ出継続中
09:00 1〜2号機に残卵ほとんどなし、3〜4号機に残卵少量あり
09:20 5号機残卵を4号機に移し替え収容
fig.a15 受入15日目
fig.a15 受入15日目
【受入15日目】2008年04月30日(水)○
給水温度15.5℃・越流樋水温16.5℃(牛久沼水温18.0℃)at07:50
08:00牛久沼水位YP6.06m
08:00 1〜2号機に生卵&仔魚なし
08:00 3〜4号機に残卵微量あり、仔魚遊泳あり
08:00〜09:00 3〜4号機の流量増加運転(残卵&仔魚を牛久沼へ放流)
08:00〜09:00 1〜2号機を下部より排水・内部水洗清掃
09:00気温19.0℃・給水ポンプ&ばっ気ブロワー停止
09:00〜10:30 3〜4号機を下部より排水・内部水洗清掃
10:30運転終了
【よしさんコメント】
受精卵受入日の検卵でほぼ100%の受精率を確認し、毎日の検卵検鏡で卵の発育を見守り、 受入8日目に、ふ出仔魚を目視確認する等、事実に基づくワカサギの管理型ふ化放流は、 茨城県内初の事業規模プラントとして成功裏に終了しました。
しかし、ワカサギ増殖事業は、ふ出仔魚を放流して終わりではありません。
初期餌料プランクトンの確認を初め、稚魚・成魚の成長と量を順次追跡把握する、 資源のマイルストーン管理が控えています。
2008年に続き、2009年は「ワカサギ卵恒久ふ化設備システム」による管理型ふ化放流の確立と、 ワカサギ資源のマイルストーン管理を併用し、牛久沼に調和した新しいスタイルの ワカサギ増殖事業を構築したく思います。

【謝辞】
永年にわたり「ふ化器」を開発・実用化された
芦之湖漁業協同組合に深謝します。
また、ワカサギ受精卵を今年も出荷くださった西網走漁業協同組合と、仲介頂いた
茨城県内水面漁業協同組合連合会にお礼申し上げます。
牛久沼へ来場頂き、具体的ご指導を頂戴した
茨城県内水面水産試験場増殖部に感謝します。

【参考文献】
(※)白石図は、『川村(1916)及び佐藤(1953)より、白石が作成し、養魚学各論(1967)の「6.ワカサギ」に掲載された、 図6.2「ワカサギの発生及びふ化後の形態変化」』を指します
佐藤隆平(1954)「ワカサギの漁業生物学」東京大学農学部水産学科、水産増殖叢書5
白石芳一(1961)「ワカサギの水産生物学的ならびに資源学的研究」淡水区水産研究所研究報告第10巻第3号、別刷
白石芳一(1967)「ワカサギ」養魚学各論,170-171pp及び図6.2,恒星社厚生閣
橘川宗彦・大場基夫・工藤盛徳(2006)「粘着性除去したワカサギ卵の孵化器による孵化管理」水産増殖54(2),231-236pp 別刷

運転期間:2008年04月16日(水)〜04月30日(水)の15日間
発表:2008年05月04日(日) 牛久沼漁業協同組合顧問よしさん
転載許可:牛久沼漁業協同組合ホームページに本稿転載を許可します。よしさん。

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