【状況】
2008年05月16日、茨城県牛久沼において、沼に刺し立ててあった真竹を抜いたところ、真竹の約1.2m範囲(水面から沼底
迄の水深に相当する水没区間)に、産着卵を発見した(※03)。
真竹の発眼卵区間から、発眼卵を金属製スプーン状器具で、コソギ落とし、沼水を入れたビーカーに採取した。
採取直後のビーカー内に、泳いでいる仔魚多数が確認され、よしさんが人工で卵幕を破り、ふ出させた格好になった。
ビーカーを室内放置し、翌17日朝、仔魚を観察・撮影(fig.01)後、5%ホルマリン固定し、顕微鏡撮影した(fig.02)。
【特徴】
●仔魚全長は5.0mmである(fig.02 写真計測 背景のグリッドは0.1mm=100μm間隔)
●瞳孔は(写真では)黒いが、(目視で)虹彩は金色である
●浮袋を備えている
●黒色胞(菌糸状が目立つ)は、頭部背面・卵黄側面・浮袋背面・腹・尾と全身にある
●卵黄は明確である
●仔魚はメダカに似ており、俊敏に遊泳できる(fig.01)
●上記から、前期仔魚段階のモツゴ仔魚と推定
モツゴ仔魚については、青柳も「既に、JORDAN と HUBBS(1925)や田中(1936)によって指摘されているように、
TEMMINCK と SCHLEGEL(1846)とが記載した F.virescens は本種の幼魚を誤認したものであろうと思われ、
本邦には Fundulus 属に該当する魚族は見られないようである。事実本種の幼魚が水面近くを群泳している有様は、
メダカ類の姿態に酷似しており、筆者も嘗つて長野県菅平高原の魚相を調査中に斯る事実を目撃したことがある。」
と述べるほど(※01)、似ている。
仔魚の同定を、茨城県内水面水産試験場にお願いしたところ、「モツゴ」との回答を頂戴しました。
写真(fig.02)をクリックして、大判写真もご覧下さい。
【参考文献】
※01 青柳兵司(1979):モツゴ.日本列島産淡水魚類総説(復刻版).淡水魚保護協会.大阪,pp.106−108.
※02 宮地傳三郎・川那部浩哉・水野信彦(1981):
モツゴ.原色日本淡水魚類図鑑(原色図鑑32)全改訂新版6刷.保育社.大阪,pp.186−188.
※03 よしさん(2008):「モツゴの産卵場と産着卵(茨城県牛久沼の事例)」.亀山湖牛久沼ワカサギ情報