【状況】
2008年06月02日(月)、茨城県牛久沼の水辺で、牛久沼漁業協同組合役員により拾得されたワカサギ稚魚1尾の全長は、
40.0mm・体長は35.0mm(fig.01写真)であった。
☆
牛久沼では、2008年の諏訪湖産ワカサギ受精卵は、2008年03月20日受入、湖面浸漬法により03月31日までにふ化終了を確認。
一方、網走湖産ワカサギ受精卵は、2008年04月16日受入、ワカサギ卵恒久ふ化設備により04月30日までにふ化を終了している(※01)。
【結論】
考察から、2008年06月02日に拾得されたワカサギ稚魚(fig.01写真)は、2008年春の放流によるものではなく、
牛久沼で2008年01月24日+α(より以前)+α(より以前)に産卵され、03月29日+α(より以前)頃ふ化した、
自然繁殖グループのワカサギであることが、明らかになった。
(注)より精度の高い推定は、ワカサギの耳石輪絞による日令査定法がある。
【考察】
上記の状況から、ワカサギ稚魚の出自を検討するため、以下の数項に着目した。
●全長から、2007年春生まれの2年魚ではなく、明らかに2008年生まれであろう
●2008年03月及び04月受入受精卵のふ化仔魚の成長としては著しく速く、既知の知見と整合しない可能性がある
そこで、得られた全長・体長から逆算し、ふ化時期(ふ出日)、さらには産卵日の概略推定を試みると、
●「ふ化後66日目で全長30mmに成長する」(佐藤隆平1954)(※02)という根拠が見つかる。
写真の個体は全長40mmであるから、ふ化後66日よりも永い日数が経過したと判断できる。
従って、ふ化時期(ふ出日)は少なくとも、66日以前の2008年03月29日+α(より以前)と想定される。
また、牛久沼の02月初旬〜03月下旬の水温は、4.0℃〜14.0℃で、平均水温を8.0℃とすれば、
●「ワカサギ受精卵のふ化に要する日数は、ふ出初日が28日目、90%ふ化日は37日目」(久下敏宏2006)(※03)という
8℃区(7−10℃間で変動)の根拠が見つかる。
これを適用し、90%ふ化日を基準に逆算すれば、受精日(産卵日)は、2008年03月29日+α(より以前)を37日
さかのぼり、超概略2008年01月24日+α(より以前)+α(より以前)と推定される。
【謝辞】
研究成果をご紹介頂いた、群馬県の久下敏宏博士に感謝致します。
【参考文献】
(※01)よしさん(2008):「牛久沼における網走湖産ワカサギ卵ふ化放流日誌(2008)」.亀山湖牛久沼ワカサギ情報.http://wakasagi.jpn.org/
(※02)佐藤隆平(1954):「ワカサギの漁業生物学」東京大学農学部水産学科、水産増殖叢書5
(※03)久下敏宏(2006):「群馬県におけるワカサギの増殖に関する研究」.群馬県水産試験場研究報告第12号別冊.1−126pp
【参考事項】
「茨城県内水面漁業調整規則」により05月01日から07月20日は、ワカサギ禁漁期間に該当します
牛久沼漁業協同組合ではワカサギ成長調査のため、特別採捕許可を得ています
【写真提供】
牛久沼漁業協同組合組合長 堤 隆雄様