【状況】
2008年06月30日(月)、茨城県牛久沼の張り網で、特別採捕されたワカサギ未成魚の内、9尾の全長は、
39・39・42・43・48・53・55・56・58mmであった(fig.01写真)。
☆
また、2008年06月02日(月)、牛久沼畔で偶然拾得されたワカサギ稚魚は全長40mmであった(※01)。
さらに、2008年06月13日(月)、茨城県牛久沼の張り網で、特別採捕されたワカサギ未成魚は全長50〜53mmであった(※02)。
牛久沼では、2008年の諏訪湖産ワカサギ受精卵500万粒を、2008年03月20日受入、湖面浸漬法により03月31日までにふ化終了を確認。
一方、網走湖産ワカサギ受精卵3000万粒は、2008年04月16日受入、ワカサギ卵恒久ふ化設備により04月30日までにふ化を終了している(※03)。
【まとめ】
既に前報(※01)から、2008年06月13日に特別採捕されたワカサギ未成魚は、2008年春の放流によるものではなく、
牛久沼で2008年01月24日+α(より以前)+α(より以前)に産卵され、03月29日+α(より以前)頃ふ化した、
自然繁殖グループのワカサギであることが、明らかになっている。
2008年06月30日、特別採捕されたワカサギ未成魚の内、全長48〜58mmの大型グループは、この自然繁殖グループ
が成長したものと考えられる。
一方、全長39〜43mmの小型グループは、考察(後述)から、
2008年04月02日+α(より以前)+α(より以前)に産卵され、04月26日+α(より以前)頃ふ化した、
ワカサギであることが、判る。
小型グループの出自に関係しそうな、@牛久沼で自然繁殖A諏訪湖産ワカサギ受精卵B網走湖産ワカサギ受精卵、
3例の内、B網走湖産ワカサギ受精卵は無関係であろう。
なぜなら、ふ化日の+αが合致しないことと、30mmから39mmにいたる9mmの成長期間が不整合となるからである。
同様に、A諏訪湖産ワカサギ受精卵も、30mmから39mm(または43mm)にいたる9mm(または13mm)の成長期間が
不整合となる可能性が高い。
つまり、出自の異なる2群のワカサギの繁殖が牛久沼で確認され、明らかになった。
これとは別に、卵放流とふ化仔魚放流による増殖の2群を加え、牛久沼のワカサギ資源構成は(現在のところ、少なくとも)計4群と考えられる。
【考察】
2008年06月30日、特別採捕されたワカサギ未成魚の全長にバラツキがあり、ワカサギ稚魚の出自を検討するため、
小型グループ(全長39〜43mm)に着目した。
●全長から、2007年春生まれの2年魚ではなく、明らかに2008年生まれであろう
●2008年03月及び04月受入受精卵のふ化仔魚の成長としては著しく速く、既知の知見と整合しない可能性がある
そこで、得られた全長・体長から逆算し、ふ化時期(ふ出日)、さらには産卵日の概略推定を試みると、
●「ふ化後66日目で全長30mmに成長する」(佐藤隆平1954)(※04)という根拠が見つかる。
写真の最小個体は全長39mmであるから、ふ化後66日よりも永い日数が経過したと判断できる。
従って、ふ化時期(ふ出日)は少なくとも、66日以前の2008年04月26日+α(より以前)と想定される。
また、牛久沼の03月中旬〜04月下旬の水温は、12.2℃〜16.5℃で、平均水温を12.0℃とすれば、
●「ワカサギ受精卵のふ化に要する日数は、90%ふ化日は25日目」(久下敏宏2006)(※03)という12℃区の根拠が見つかる。
これを適用し、90%ふ化日を基準に逆算すれば、受精日(産卵日)は、2008年04月26日+α(より以前)を25日さかのぼり、
超概略2008年04月02日+α(より以前)+α(より以前)と推定される。
(注)より精度の高い推定は、ワカサギの耳石輪絞による日令査定法がある。
2008年の3事例をグラフ「牛久沼における、ワカサギの成長(2008年魚)」に示す(fig.02)。