【結果】
このノロは、亀山湖（千葉県君津市）のプランクトン定期調査（st.k）で採取されたメスです。
●背部の卵嚢の中に、２ケの胚（夏卵）が納まっています（fig.02）。
●卵嚢は通常萎んでおり目立ちませんが、抱卵中は、直径約９００μｍ程度の楕円状に膨らみます（fig.02）。
●胚（夏卵）の直径は、約２６０μｍ程度です（fig.03 写真測定）。
●細胞が分裂している様子は分かりますが、胚（夏卵）の成長段階は観察事例の十分な公表がないようで、現時点では判定できません（fig.03）。
【考察】
★ノロは２００６年（※０３〜１０）・２００７年（※１１〜１３）と各年に観察されている状況証拠を根拠に、
亀山湖において繁殖しているものと推定していましたが、今回２００８年に抱卵個体を確認したことにより、
亀山湖において繁殖している直接的証拠が得られました。
★抱卵数は、２００７年０７月の茨城県牛久沼の事例（※１３）と同様に、亀山湖においても２ケでしたが（fig.02-03）、
中国の大家・堵南山博士は「夏卵毎胎１−２５個、直径０．２０４−０．２５５毫米。」（82pp）と報告しています（※０１）。
さらに冬卵（耐久卵の意）について「冬卵受精之後、不進入孵育嚢而直接排倒体外、（以下略）」（82pp）と記載されており（※０１）、
今回の抱卵個体の胚（卵）は夏卵と考えられます。
★繁殖の季節は、茨城県牛久沼で０７月３０日前後が含まれ（※１３）、千葉県亀山湖で０７月２６日前後が含まれることが確認され、
亀山湖における繁殖の場所に「角柳」（st.k）が含まれることが、明らかになりました。
亀山湖における、ノロの胚（夏卵）の採取・観察報告は、本稿が国内初と思われます。
【参考文献】
（※０１）蒋燮治・堵南山（１９７９）：「中国動物誌 節足動物門甲殻綱淡水枝角類」科学出版社 297pp,北京, 3.00元（中文）
（※０２）商務印書館出版（１９９５）：新華字典（１９９２年重排本）86pp+661pp,北京, 5.50元（中文）
（※０３）よしさん（２００６）：「亀山湖のノロ（貴重種動物プランクトン）その１」http://wakasagi.jpn.org/
（※０４）よしさん（２００６）：「亀山湖のノロ（貴重種動物プランクトン）その２」http://wakasagi.jpn.org/
（※０５）よしさん（２００６）：「亀山湖のノロ（貴重種動物プランクトン）その３ メス名鑑」http://wakasagi.jpn.org/
（※０６）よしさん（２００６）：「再び、亀山湖のノロ（貴重種動物プランクトン）その４」http://wakasagi.jpn.org/
（※０７）よしさん（２００６）：「再び、亀山湖のノロ（貴重種動物プランクトン）その５」http://wakasagi.jpn.org/
（※０８）よしさん（２００６）：「再び、亀山湖のノロ（貴重種動物プランクトン）その６」http://wakasagi.jpn.org/
（※０９）よしさん（２００６）：「みたび、亀山湖のノロ（貴重種動物プランクトン）その７」http://wakasagi.jpn.org/
（※１０）よしさん（２００６）：「みたび、亀山湖のノロ（貴重種動物プランクトン）その８」http://wakasagi.jpn.org/
（※１１）よしさん（２００７）：「よたび、亀山湖のノロ（貴重種動物プランクトン）その９・オス♂発見」http://wakasagi.jpn.org/
（※１２）よしさん（２００７）：「ごたび、亀山湖のノロ（貴重種動物プランクトン）その１０・またオス発見」http://wakasagi.jpn.org/
（※１３）よしさん（２００７）：「牛久沼のノロ（貴重種動物プランクトン）その２（メス♀頭部）＆彼女の卵」http://wakasagi.jpn.org/
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