【要旨】
ハスの茎〔葉柄 the stem (a leafstalk) of the lotus.〕の特徴を明らかにするために、形態観察を行った。
葉柄断面の観察で、大小の通気道や、通気道内部へ伸びる細胞が観察された。
縦断面では、表皮の下層に有棘多角物質が散乱分布する様子を観察した。
しかし、市販のレンコンの縦断面において、表皮の下層に有棘多角物質は認められなかった。
【緒言】
ハス(Nelumbo nucifera Gaertn.)は、別名ハチス(蜂巣)と呼ばれるスイレン科の植物(2n=16)である。
種子・地下茎・葉を食用とし、本州・四国・九州・中国大陸・インド・オーストラリアに分布している(大滝 1980)。
本研究では、草食魚ソウギョ(Ctenopharyngodon idella.)の冬季餌料の一部として、水面下に残存するハスの茎(葉柄)の利用の可能性を探るため、
ソウギョの消化管内容物との比較資料を得る目的で、ハスの茎(葉柄)の形態観察を行った。
【材料と方法】
ハスの茎(葉柄)供試品は、2008年11月21日、茨城県牛久沼で採取した葉柄を用いた。
レンコン(ハスの地下茎)供試品は、2008年11月23日、千葉県四街道市スーパーセンドウで購入し、用いた。
観察開始時に、供試品の葉柄直径を金属定規で測定し、その後、安全カミソリの刃(フェザーハイステンレスFH-10 刃厚100μm)
を使用した徒手切片法により、葉柄の横切片及び縦切片、並びにレンコンの横切片及び縦切片を作り、
光学顕微鏡(オリンパス生物顕微鏡EH)で断面を観察した。
また、フジ写真フイルムデジタルカメラFinePix6800Z改造顕微鏡専用機を用いて、
自動露出に設定し、各断面の顕微鏡写真を撮影した。
【結果と考察】
葉柄の直径は14mm、断面は円形で内部に大小の通気道が観察された(fig.01-fig.06)。
一部に通気道内部へ伸びる細胞も観察された(fig.05)。
縦断面では、表皮に棘(fig.07 右端)と、表皮の下層に有棘多角物質が散乱分布する様子を観察した(fig.07-fig.08)。
しかし、地下茎(市販のレンコン)の縦断面において、表皮の下層に有棘多角物質は認められなかった(fig.11)。
ソウギョは、咽頭歯で餌料植物をすりつぶして採餌すると考えられるため、葉柄をすりつぶした供試品
の形態観察は今後の課題である。
【参考文献】
(※01)大滝末男・石戸 忠(1980):ハス.日本水生植物図鑑.北隆館,東京,pp.100−101.
(※02)土屋 実・中村一雄・船坂義郎・寺尾俊郎・粟倉輝彦(1970):草魚・連魚.草魚・姫鱒他.緑書房,東京,pp.11−89.
(※03)宮地傳三郎・川那部浩哉・水野信彦(1981):
ソウギョ.原色日本淡水魚類図鑑(原色図鑑32)全改訂新版6刷.保育社.大阪,pp.151−154.
(※04)● 作組(1983):草魚.中国薬用動物志.天津科学技術出版社,天津・中国,pp.203−205.(姓は十偏にソウ=刀の両脇にハネ点)
(※05)よしさん(2003):「釣り人ご用達・水生植物水草図鑑」.「ザ・レイクチャンプ」.http://lake-champ.com/odl0075.htm
(※06)よしさん(2008):「これがソウギョの糞塊だ(千葉県雄蛇ケ池の事例)」.亀山湖牛久沼ワカサギ情報.http://wakasagi.jpn.org/
(※07)よしさん(2008):「ガマの葉の断面」.亀山湖牛久沼ワカサギ情報.http://wakasagi.jpn.org/
(※08)よしさん(2008):「マコモの葉の断面と茎の断面」.亀山湖牛久沼ワカサギ情報.http://wakasagi.jpn.org/
(※09)よしさん(2008):「ヨシの葉の断面と茎の断面」.亀山湖牛久沼ワカサギ情報.http://wakasagi.jpn.org/
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