【要旨】
マコモ(真菰)の葉と茎(the leaf and the stem of the water oat.)の特徴を明らかにするために、形態観察を行った。
葉の表裏面と横断面の観察で、多数の葉脈と葉脈間が薄い様子が観察された。
中央脈は裏面側に隆起し特に顕著であることが観察された。
茎の断面は楕円形で、内部に渦巻き状に並ぶ大小の通気道を観察した。
【緒言】
マコモ(Zizania latifolia Turcz.)は、カテミ(糧実)の転訛したカツミ(勝見)の別名を持つ、イネ科の植物(2n=30)である。
果実は家畜の飼料となり、北海道から沖縄・シベリア・中国大陸・台湾・東南アジアに広く分布している(大滝 1980)。
本研究では、草食魚ソウギョ(Ctenopharyngodon idella.)の餌料の一部として、マコモの利用の可能性を探るため、
ソウギョの消化管内容物との比較資料を得る目的で、マコモの形態観察を行った。
【材料と方法】
マコモ供試品は、2008年11月21日、茨城県牛久沼で採取し用いた(fig.01)。
観察開始時に、供試品の茎直径を金属定規で測定し、その後、安全カミソリの刃(フェザーハイステンレスFH-10 刃厚100μm)
を使用した徒手切片法により、葉の横切片、及び茎の横切片並びに縦切片を作り、
光学顕微鏡(オリンパス生物顕微鏡EH)で表裏面と各断面を観察した。
また、フジ写真フイルムデジタルカメラFinePix6800Z改造顕微鏡専用機を用いて、
自動露出に設定し、表裏面と各断面の顕微鏡写真を撮影した。
【結果と考察】
葉の最大幅は18mm、表裏面とも緑色が著しく、多数の葉脈が通り凹凸があって、手ざわりはザラつく(fig.02-fig.04)。
葉の横断面では、葉脈部が厚く、葉脈間が薄い様子が観察された(fig.05)。
中央脈は裏面側に隆起し特に顕著であり(fig.06)、内部に大小の通気道と無色透明な細胞の充填された区画が観察された(fig.06-fig.07)。
茎の断面は長径10mm・短径5mmの楕円形で、内部に渦巻き状に並ぶ大小の通気道が観察された(fig.08)。
接線断面(縦断面)では、表皮(一重目)と二重目の間に、渦巻き状に並ぶ通気道の一部がが観察された(fig.09)。
また、表皮を横断して内部に達し、通気道をも連絡細胞で横断接続する機構が、多数認められた(fig.09)。
ソウギョは、咽頭歯で餌料植物をすりつぶして採餌すると考えられるため、葉と茎をすりつぶした供試品
の形態観察は今後の課題である。
【参考文献】
(※01)大滝末男・石戸 忠(1980):マコモ.日本水生植物図鑑.北隆館,東京,pp.174−175.
(※02)土屋 実・中村一雄・船坂義郎・寺尾俊郎・粟倉輝彦(1970):草魚・連魚.草魚・姫鱒他.緑書房,東京,pp.11−89.
(※03)宮地傳三郎・川那部浩哉・水野信彦(1981):
ソウギョ.原色日本淡水魚類図鑑(原色図鑑32)全改訂新版6刷.保育社.大阪,pp.151−154.
(※04)● 作組(1983):草魚.中国薬用動物志.天津科学技術出版社,天津・中国,pp.203−205.(姓は十偏にソウ=刀の両脇にハネ点)
(※05)よしさん(2003):「釣り人ご用達・水生植物水草図鑑」.「ザ・レイクチャンプ」.http://lake-champ.com/odl0075.htm
(※06)よしさん(2008):「これがソウギョの糞塊だ(千葉県雄蛇ケ池の事例)」.亀山湖牛久沼ワカサギ情報.http://wakasagi.jpn.org/
(※07)よしさん(2008):「ガマの葉の断面」.亀山湖牛久沼ワカサギ情報.http://wakasagi.jpn.org/
(※08)よしさん(2008):「ハスの茎(葉柄)とレンコンの断面」.亀山湖牛久沼ワカサギ情報.http://wakasagi.jpn.org/
(※09)よしさん(2008):「ヨシの葉の断面と茎の断面」.亀山湖牛久沼ワカサギ情報.http://wakasagi.jpn.org/
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