【目的】
ワカサギ及びチカふ化仔魚の初期餌料に適した小型プランクトンの状況を明らかにするため、
茨城県涸沼の、水深1m付近の湖面に設置された、チカ(Hypomesus pretiosus)人工増殖用ふ化盆の
周辺でプランクトンを採取した。
【結果と考察】
●圧倒的な優占種は、ヒゲナガケンミジンコ科であった(fig.01-03)。
●ヒゲナガケンミジンコ(メス♀)の多くは、尾部にオス♂からもらった精莢を付着させていた(fig.02)。
●ユーグレナ属(ミドリムシ)も多く観察された(fig.04-05)。
●海産で温帯の沿岸性珪藻を確認した(fig.07)。
●その他は、イサザアミが多く、プランクトンネットに入った(別報で報告)。
●調査ポイント(st.hk01)は、人工増殖用ふ化盆の直近という特殊条件下の狭い水域である。
●経過期間の異なるチカ受精卵が、ふ化盆により湖面浸漬されており、その周囲にヒゲナガケンミジンコ科が
密集し、底部にイサザアミが徘徊する水中構成と推定される。
●ふ化仔魚の初期餌料に適した小型プランクトンは少なく、劣悪な環境と言えよう。
●2009年02月13日に、調査ポイント(st.hk01)を含む涸沼(上石崎)一帯で確認された赤潮の原因と
考察された渦鞭毛藻(虫)類とクリプト藻類(※05)は、25日採取のサンプル中に未観察で
あったこと、及び、涸沼の水色も採取日に「平常」と聞いたため、藻類の異常繁殖は沈静化したものと思われる。
【参考文献】
※01 山路 勇(1979):珪藻類.日本海洋プランクトン図鑑 増補改訂.保育社.大阪,pp.1−3.
※02 監修・猪木正三(1981):ユーグレナ類.原生動物図鑑 第1刷.講談社.東京,pp.240−266.
※03 水野寿彦・高橋永治編(2000):ヒゲナガケンミジンコ.ミドリムシ目.
日本淡水動物プランクトン検索図説 改訂第1版第1刷 東海大学出版会.東京,pp.9−16.392−427.
※04 どろおいみじんこ(2009):「ケンミジンコの精莢について」.Webサイト「淡水プランクトンのページ」より
※05 茨城県内水面水産試験場(2009):「赤潮に関するメモ」(pdfファイル)
※06 よしさん(2009):「涸沼における、チカ受精卵の湖面浸漬(受入初期)2009」.http://wakasagi.jpn.org/
※07 よしさん(2009):「涸沼における、チカ受精卵に付着した菌類と原生動物」.http://wakasagi.jpn.org/
※08 よしさん(2009):「涸沼のイサザアミ」.http://wakasagi.jpn.org/
|