亀山湖・牛久沼は首都圏近郊のワカサギ釣り場をめざします

ワカサギふ化放流ノート
牛久沼における芦ノ湖産ワカサギ卵ふ化放流日誌(2009)
Hatching diary lake Ashinoko products eggs of japanese-smelt, Hypomesus nipponensis in the Ushiku swanp(2009).
茨城県牛久沼において、ワカサギの主群は牛久沼内で自然産卵・ふ化していますが、ふ化仔魚に適す初期餌料プランクトン(小型のツボワムシ等)や 後期稚魚に適すプランクトン(ゾウミジンコ・ケンミジンコ等)の発生は、いつでもワカサギの成長段階と合致するわけではありません。
近隣の霞ケ浦では、餌料不足による初期減耗が、ワカサギ資源量を変動させる最大の原因と考えられています(※04)。
牛久沼漁業協同組合は、ワカサギの管理型数次人工ふ化放流によるワカサギ資源の安定供給を目的に、 2006年を初年度とする「ワカサギ増殖3ケ年計画」を事業展開し、 芦之湖漁業協同組合が開発実用化した「ふ化器」を中心とした「ワカサギ卵恒久ふ化設備システム」を 2007年に独自設計・製作・施工導入しました。
本日誌は、芦ノ湖産受精卵1000万粒を用いた、2009年第1期「ワカサギ卵恒久ふ化設備システム」運転の記録です。
ふ化器 jar hatchery
ワカサギ卵検鏡 egg
ノート note
fig.a01 受入初日
fig.a01 受入初日
fig.b01 受入初日
fig.b01 受入初日
【受入初日】2009年03月14日(土)●◎
08:30受精卵受取(クール宅配便近傍拠点迄漁協が往復し受取)
08:30〜09:30袋入り受精卵を水温15.2℃地下水で養生・水温順応
09:30〜11:00受精卵の脱粘・洗浄処理
09:30〜11:00受精卵を1・3号機に収容
11:00給水温度15.6℃
12:00検卵検鏡
正常受精卵20ケ/20ケ
白石図6(受精後30hr相当)
胚の卵割は桑実期
牛久沼水温9.6℃(08:00)
fig.a02 受入2日目
fig.a02 受入2日目
fig.b02 受入2日目
fig.b02 受入2日目
【受入2日目】2009年03月15日(日)○
08:50給水温度   14.2℃
08:50ふ化器出口水温14.6℃
08:50〜09:20パイセス150ml薬浴
09:20〜給水槽保有水をバケツで排水&手動原水弁開により注水置換
11:00検卵検鏡
白石図10(受精後230hr相当)
胚上部に魚体形成中
牛久沼水温6.6℃(09:00)
牛久沼水温7.8℃(11:00)水位YP6.00m
牛久沼水温9.6℃(13:00)
fig.a04 受入4日目
fig.a04 受入4日目
fig.b04 受入4日目
fig.b04 受入4日目
【受入4日目】2009年03月17日(火)○
08:30給水温度   15.6℃
08:30ふ化器出口水温16.0℃・水生菌なし
08:35〜09:05パイセス150ml薬浴
09:05〜給水槽保有水をバケツで排水&手動原水弁開により注水置換
11:00検卵検鏡
白石図12(受精後320hr相当)
魚体は卵黄を1.5周、眼は白色・尾動かす
牛久沼水温10.8℃(08:30)
牛久沼水温11.0℃(10:00)水位YP5.95m
牛久沼気温15.0℃(10:00)
fig.a06 受入6日目
fig.a06 受入6日目
fig.b06 受入6日目
fig.b06 受入6日目
【受入6日目】2009年03月19日(木)○
08:00給水温度   15.4℃
08:00ふ化器出口水温15.8℃・水生菌なし
ふ化器内の受精卵の色は灰黒色に変化する
10:00検卵検鏡
白石図15(受精後480hr相当)
眼は黒色・筋節鮮明・顕微鏡動画撮影
11:00本日より薬浴不要と判定
11:00ふ出に備え観察槽底栓&越流口網撤去
13:00最初の数尾ふ出を1号機で確認
牛久沼水温11.4℃(08:00)
牛久沼水温14.0℃(11:00)水位YP5.87m
fig.a08 受入8日目
fig.a08 受入8日目
fig.b08 受入8日目
fig.b08 受入8日目
【受入8日目】2009年03月21日(土)○
08:00給水温度   14.8℃
08:00ふ化器出口水温15.2℃・水生菌なし
ふ化棟内にやや腐臭あり
09:15〜10:00最上層の卵膜&死卵をエキスパンション排出(第1回)
14:00 1・3号機で、仔魚ふ出継続中
14:00ふ出仔魚サンプリング(生体持帰り)
牛久沼水温10.8℃(08:00)
牛久沼水温13.0℃(10:30)水位YP5.79m
牛久沼水温14.0℃(14:00)水位YP5.78m
【受入9日目】2009年03月22日(日)◎
06:00 1号機及び3号機の収容卵嵩5%程度に減少
(前夜主力95%が、ふ出と推定)
牛久沼水位YP5.76m(06:00)気温14.0℃
fig.a10 受入10日目
fig.a10 受入10日目
fig.b10 受入10日目
fig.b10 受入10日目
【受入10日目】2009年03月23日(月)○
08:20給水温度   15.5℃
08:20ふ化器出口水温16.0℃
卵膜&死卵に水生菌付着繁殖し、ふ化器下層コーン部に堆積・水流閉塞(既設定水量で)流動せず
ふ化器中上層に仔魚遊泳あり
09:40〜13:00 1・3号機の流量増加運転(ふ化器内仔魚を牛久沼へ放流)
13:00〜14:30 1・3号機を下部より排水・内部水洗清掃
14:30給水ポンプ&ばっ気ブロワー停止
14:30設備運転終了
牛久沼水温11.0℃(09:00)水位YP5.73m
牛久沼気温14.0℃(09:00)北西風9m/sec
【よしさんコメント】
ワカサギの胚(受精卵)を顕微鏡観察し、細胞が分裂し卵割のすすむ発生過程を確認し、 胚の発育を見守りつつ、一連のふ化管理作業を行い、 受入6日目に、ふ出仔魚を目視確認する等、事実に基づくワカサギの管理型ふ化放流は、 茨城県内初の事業規模プラントとして、2009年第1期運転も成功裏に終了しました。
しかし、ワカサギ増殖事業は、ふ出仔魚を放流して終わりではありません。
初期餌料プランクトンの確認を初め、稚魚・成魚の成長と量を順次追跡把握する、 資源のマイルストーン管理が控えています。
2008年に続き、2009年は「ワカサギ卵恒久ふ化設備システム」による管理型ふ化放流の習熟と、 ワカサギ資源のマイルストーン管理を併用し、牛久沼に調和した新しいスタイルの ワカサギ増殖事業を構築したく思います。

【謝辞】
永年にわたり「ふ化器」を開発・実用化された
芦之湖漁業協同組合に深謝します。
さらに、ワカサギ受精卵を牛久沼へ初出荷くださった芦之湖漁業協同組合と、仲介頂いた
茨城県内水面漁業協同組合連合会にお礼申し上げます。

【参考文献】
(※)白石図は、『川村(1916)及び佐藤(1953)より、白石が作成し、養魚学各論(1967)の「6.ワカサギ」に掲載された、 図6.2「ワカサギの発生及びふ化後の形態変化」』を指します
(※01)佐藤隆平(1954)「ワカサギの漁業生物学」東京大学農学部水産学科、水産増殖叢書5
(※02)白石芳一(1961)「ワカサギの水産生物学的ならびに資源学的研究」淡水区水産研究所研究報告第10巻第3号、別刷
(※03)白石芳一(1967)「ワカサギ」養魚学各論,170-171pp及び図6.2,恒星社厚生閣

(※04)茨城県内水面水産試験場(2004)「重要魚種資源変動機構解析調査(うちワカサギ資源変動要因把握調査)」
(※05)橘川宗彦・大場基夫・工藤盛徳(2006)「粘着性除去したワカサギ卵の孵化器による孵化管理」水産増殖54(2),231-236pp 別刷
(※06)久下敏宏(2006)「群馬県におけるワカサギの増殖に関する研究」群馬県水産試験場研究報告第12号別冊
(※07)よしさん(2008)「牛久沼における網走湖産ワカサギ卵ふ化放流日誌(2008)」http://wakasagi.jpn.org/

運転期間:2009年03月14日(土)〜03月23日(水)の10日間
発表:2009年03月26日(木) 牛久沼漁業協同組合顧問よしさん
転載許可:牛久沼漁業協同組合ホームページに本稿転載を許可します。よしさん。

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