亀山湖・牛久沼は首都圏近郊のワカサギ釣り場をめざします

ワカサギふ化放流ノート
牛久沼における、ワカサギ初期餌料調査報告(200904)
Japanese-smelt initial bait charges survey in the Ushiku swamp.
茨城県牛久沼における、牛久沼漁業協同組合ワカサギ増殖事業のうち、2009年第2回目RUNとして 「ワカサギ卵恒久ふ化設備」に収容し、ふ化管理していた網走湖産ワカサギ受精卵(3000万粒)の、 ふ出初日は、2009年04月21日(火)17:30、ワカサギ仔魚の大半がふ出したのは04月23日(木)夜でした。
ワカサギふ化仔魚は、ふ出から4日以内に初期餌料(原生動物・小型プランクトン)を摂餌しなければ餓死する(初期減耗)ため(※05)、 ふ化日に合わせ、漁場のプランクトン調査を実施しました。

【table.01 牛久沼(レンタルボートたまや桟橋)に出現したプランクトン】
fig.01 不詳(原生動物)
fig.01 不詳(原生動物)
unknown
10μm
fig.02 ユーグレナ属(原生動物)
fig.02 ユーグレナ属(原生動物)
Euglena sp.
20μm
fig.03 不詳(卵)
fig.03 不詳(卵)
unknown
70μm
fig.04 コシブトカメノコウワムシ
fig.04 コシブトカメノコウワムシ
Keratella quadrata var.quadrata
80μm
fig.05 ハネウデワムシ
fig.05 ハネウデワムシ
Polyarthra frigla
90μm
fig.06 ダフニア(幼生)
fig.06 ダフニア(幼生)
Daphnia sp.
90μm
fig.07 カイアシ類(卵)
fig.07 カイアシ類(卵)
Copepoda sp.
100μm
fig.08 ダフニア(卵)
fig.08 ダフニア(卵)
Daphnia sp.
100μm
fig.09 ワムシの一種
fig.09 ワムシの一種
100μm
fig.10 フクロワムシ属(小型)
fig.10 フクロワムシ属(小型)
Asplanchna sp.
120μm
fig.11 ツボワムシ
fig.11 ツボワムシ(変異型・卵3)
Brachionus calyciflorus f.anuraeiformis
120μm
fig.12 ツボワムシ
fig.12 ツボワムシ(変異型・卵4)
Brachionus calyciflorus f.anuraeiformis
130μm
fig.13 ツボワムシ
fig.13 ツボワムシ(変異型・卵1)
Brachionus calyciflorus f.anuraeiformis
170μm
fig.14 ツボワムシ
fig.14 ツボワムシ(変異型・卵5)
Brachionus calyciflorus f.anuraeiformis
170μm
fig.15 ワムシの一種
fig.15 ワムシの一種
180μm
fig.16 コシカクミジンコ
fig.16 コシカクミジンコ
Alona rectangula
250μm
fig.17 フクロワムシ属(中型)
fig.17 フクロワムシ属(中型)
Asplanchna sp.
260μm
fig.18 ハリナガミジンコ(丸頭)
fig.18 ハリナガミジンコ(丸頭)
Daphnia longispina hyalinagaleata
300μm
fig.19 オオアタマミジンコ
fig.19 オオアタマミジンコ
Diaphanosoma dubia MANUILIOVA
300μm
fig.20 ケンミジンコ属
fig.20 ケンミジンコ属
Cyclopoida sp.
300μm
fig.21 ヒゲナガケンミジンコ
fig.21 ヒゲナガケンミジンコ
DIAPTOMIDAE
300μm
fig.22 ゾウミジンコ
fig.22 ゾウミジンコ
Bosmina longirostris
350μm
fig.23 フクロワムシ属(大型)
fig.23 フクロワムシ属(大型)
Asplanchna sp.
420μm
【結果】
2009年04月22日(水)、「牛久沼(レンタルボートたまや桟橋)に出現したプランクトン」を table.01 に示します。
04月の優占種は、フクロワムシ属(fig.10,17,23)で、小型・中型・大型個体を多く観察しました。
次いで、多く見られた種はツボワムシ(fig.11-14)で、ほとんどの個体が抱卵(1〜5ケ)しています。
3番目に、コシブトカメノコウワムシ(fig.04)及びハネウデワムシ(fig.05)が多く、他は少数派です。
シカクミジンコの仲間・コシカクミジンコ(fig.16)は、牛久沼で今回初観察の種です。
04月のプランクトン相は、ミジンコ類6種・ワムシ類6種・原生動物2種・不詳1の合計15種の出現を観察しました。

【考察】
ふ化仔魚は、餌料の一部を齧ったり食いちぎることをせず、丸ごと飲み込む摂餌スタイルであるため、 餌料の最大巾(または最大高さ)が、物理的にふ化仔魚の口に入るかが問題となり、餌料の長さは(ひとまず)不問として良いようです。
04月の定期プランクトン調査結果は、ふ化仔魚の初期餌料調査結果面を明確にするため、 通常月の分類学的掲載順と相違し、変則的ながら実践的な「餌料プランクトンの大きさ順リスト」としています。
本稿の「大きさ」とは、前体部+後体部の全長、殻長、体長等でなく、 当該プランクトン等を丸飲みする時の最大値(巾または高さ)を指し、測定値を各々の写真の下段に示すと共に、最大値の小から大へ昇順リストとしました。

ワカサギの摂餌開始時の体長は5.0〜6.2mm、口径は226μm、摂餌することが可能な餌料サイズは115〜170μmと代田(※01)は述べ、 代田に従い table.01 から170μm以下の餌料を探せば、
★不詳(原生動物)・★ユーグレナ属(原生動物)・★不詳(卵)・★コシブトカメノコウワムシ・★ハネウデワムシ
★ダフニア(幼生)・★カイアシ類(卵)・★ダフニア(卵)・★ワムシの一種・★フクロワムシ属(小型)・★ツボワムシが、
今回ふ化したワカサギ仔魚の初期餌料に好適であると判断できます。
従って、牛久沼産人工ふ化ワカサギ(2009年第2回目RUN群)は、初期餌料に遭遇できる可能性が高いと考えられます。

さらに本調査結果は、調査日(2009年04月22日)以前に、牛久沼でふ化し成長中の仔稚魚(口径も大きい)には、 250μm〜420μm級のプランクトンも餌料範囲にあることを示しています。

【参考文献】
(※01)代田昭彦(1975):「水産餌料生物学」恒星社厚生閣.東京.175〜181pp
(※02)よしさん(2008):「牛久沼(レンタルボートたまや沖)におけるワカサギ初期餌料調査報告(2008)」.http://wakasagi.jpn.org/
(※03)よしさん(2009):「牛久沼における、ワカサギの自然産卵とふ出日推定(2009年魚)」.亀山湖牛久沼ワカサギ情報.http://wakasagi.jpn.org/
(※04)よしさん(2009):「牛久沼で産卵したワカサギ(2009年主群)用、初期餌料調査報告」.亀山湖牛久沼ワカサギ情報.http://wakasagi.jpn.org/
(※05)よしさん(2009):「ワカサギ仔魚の、ふ化後5日間の成長(その3)」.亀山湖牛久沼ワカサギ情報.http://wakasagi.jpn.org/

採取:2009年04月22日(水)09:30 天候◎ 気温19.0℃ at09:00 水温18.4℃ at09:30
水位YP6.25 水色ややマッディー
発表:2009年04月27日(月) 牛久沼漁業協同組合顧問よしさん
転載許可:牛久沼漁業協同組合ホームページに本稿転載を許可します。よしさん。

http://wakasagi.jpn.org/ ワカサギふ化放流ノートトップページへ Copyright by yoshisan.