亀山湖・牛久沼は首都圏近郊のワカサギ釣り場をめざします

ワカサギふ化放流ノート
紅葉してもアオコ現象の千葉県雄蛇ケ池
It is still Onjyaga-ike pond of the waterbloom in being the season of colored leaves.
fig.01 雄蛇ケ池の紅葉(一本松の鼻)
fig.01 雄蛇ケ池の紅葉(一本松の鼻)
fig.02 水面のアオコ現象(塚本ボート桟橋近傍)
fig.02 水面のアオコ現象(塚本ボート桟橋近傍)

【紅葉してもアオコ現象の千葉県雄蛇ケ池】
雄蛇ケ池(千葉県東金市)は、1614(慶長19)年に完成した、大規模な灌漑用溜池である(※04)。

【経緯と目的】
千葉県雄蛇ケ池では、繁茂した水生植物の除去を目的に、2006年早春に草食魚ソウギョが放流された。
2007年に水生植物の減少が顕著になり、 2007年秋季までに、水生植物帯の約70%程度が消滅し、生態系に最大級の影響を与えた。
水生植物はソウギョに食害され、水中に排出されたソウギョの糞塊は微生物による分解変質を経て、 植物プランクトンに利用されやすい中間体となり、水面被植面積縮小による高水温と底泥巻上げを併せ、 ミクロキスティス・アナベナ・オシラトリア等の藍藻類大繁殖を助長し、重度で複合したアオコ現象を 毎年反復し招来させていることが、明らかになった(※06〜※11)。
換言すれば、雄蛇ケ池の水生植物はソウギョの糞塊となり、藍藻類異常繁殖を引起す主因になっている という相関関係が指摘できる。

2009年には、ソウギョ放流推進派により、アオコ現象の著しい夏季に、 雄蛇ケ池の貯水を水深約1m分捨水し、表層の目視されやすい水の華(アオコ現象)を排出低減させよう とする新しい試み(捨水管理)が、2度反復実施された。
06月下旬〜07月下旬の第1回目結果を追試解析すると藍藻類5種が残存し(※12)、 08月中旬〜08月下旬の第2回目捨水管理結果では、藍藻類8種の雄蛇ケ池内繁殖が確認された(※13)。

2009年11月02日東京地方で木枯らし1号観測、03日盛岡・山形・新潟で初雪観測、04日水戸で初氷観測、 雄蛇ケ池では紅葉の季節(fig.01写真)を迎える等、 外気温及び水温低下条件により、水の華(アオコ現象)の原因藍藻類の衰退状況と変移状況を確認するため、 2009年11月16日(月)午後、塚本ボート桟橋近傍の堰堤で池水を採取し(fig.02写真)、持帰り、検鏡した。

【結果】
採取した池水を顕微鏡下で観察したところ、水中の藍藻類は以下のようであった(fig.03写真)。

fig.03 池水の顕微鏡観察
fig.03 池水の顕微鏡観察

さらに詳細に観察すると、今回の水の華(アオコ現象)は、
藍藻のミクロキスティス エルギノーザ(fig.04)、 ミクロキスティス ノバセキ(fig.05)、 ミクロキスティス ベーゼンベルギー(fig.06)、 ミクロキスティス イクチオブラーベ(fig.07)、 ミクロキスティス ビリディス(fig.08)、 アナベナ フロスアクアエ(fig.09)、 アナベナ マクロスポーラ(fig.10)、 の合計7種からなる複合現象で、優占種はアナベナ フロスアクアエ(fig.09)であることが明らかになった。

fig.04 ミクロキスティス
fig.04 ミクロキスティス
Microcystis Aeruginosa
エルギノーザ
fig.05 ミクロキスティス
fig.05 ミクロキスティス
Microcystis Novacekii
ノバセキ
fig.06 ミクロキスティス
fig.06 ミクロキスティス
Microcystis Wesenbergii
ベーゼンベルギー
fig.07 ミクロキスティス
fig.07 ミクロキスティス
Microcystis Ichthyoblabe
イクチオブラーベ
fig.08 ミクロキスティス
fig.08 ミクロキスティス
Microcystis viridis
ビリディス
fig.09 アナベナ
fig.09 アナベナ
Anabaena flos-aquae
フロスアクアエ
fig.10 アナベナ
fig.10 アナベナ
Anabaena macrospora
マクロスポーラ
種の状態を見ると、
ミクロキスティス エルギノーザ(fig.04)、ミクロキスティス ノバセキ(fig.05)、ミクロキスティス ベーゼンベルギー(fig.06)、 の3種は個体数が(前回調査2009年09月に比較し)減少傾向であった。
ミクロキスティス イクチオブラーベ(fig.07)の個体数は(同)横這い、 ミクロキスティス ビリディス(fig.08)は、2008年09月以来の再出現、 アナベナ フロスアクアエ(fig.09)は、不規則に曲がった糸状体の規模も大きく、 今回調査の優占種であった。
アナベナ マクロスポーラ(fig.10)の個体数は(同)横這いであったが、 糸状体が長く連続した個体が多く観察された。
国立環境研究所の提唱する「見た目アオコ現象」は池全体で1〜2レベル、塚本ボート桟橋周辺で3〜5レベルであった。

【考察01】
2009年の雄蛇ケ池の水位は、06月〜11月の期間、減水1.1m〜満水を幾度か繰り返し、 水温は、07月19日の28.6℃から、11月16日の15.8℃まで下降した(※12・13)。
しかし、水の華(アオコ現象)を引き起こす藍藻類は、07月の5種から、2ケ月後の09月に8種へと増加出現し、 11月になっても7種が観察された。
この事実は、水位と水温の変動のみが、水の華(アオコ現象)を引き起こす藍藻類の消長を制限する要素ではない ことを明示すると共に、この2つの要素より(藍藻類の維持・繁殖にとって)優位にある(光・太陽光線以外の) 別の要素の存在を暗示している。
植物に重要な要素とは、栄養塩(N・P)に他ならず、従って、水中の窒素・燐濃度が高く維持継続されている ことをうかがわせるに足り、他の灌漑用溜池・ダム湖における水の華(アオコ現象)の終息時期を踏まえ、 雄蛇ケ池のプランクトン藍藻類観察結果を併せ、栄養塩の起源はソウギョの排出する糞塊と考察される。

11月上旬に塚本ボート桟橋周り全体で大規模に「今まで見たことがない手のひらサイズのアメーバ?状の浮遊物が かなり浮いていた」ことが、釣り人により報告された(※14)。
得た情報の範囲内では「湖沼に出現する藻食性アメーバ」による現象(※05)に類似(限定一部出現)と想定されるが、 よしさんはサンプル未入手で未確認のため、本稿では扱わない。
有識者の継続観察が望まれる。

【謝辞】
雄蛇ケ池を観察し旬の話題を提供くださる「雄蛇ヶ池の話 〜蛇(じゃ)の道は蛇(へび)〜」主宰つかじーさんに感謝します。

【参考文献】
(※01)生嶋 功(1991):「水の華の発生機構とその制御」第2刷,183pp,東海大学出版会,\1648
(※02)藤田善彦・大城 香(1993):「ラン藻という生きもの」第2刷,134pp,東京大学出版会,\1648
(※03)渡辺真利代・原田健一・藤木博太(1994):「アオコ−その出現と毒素−」257pp,東京大学出版会,\4738
(※04)よしさん(1996〜2009):雄蛇ケ池「ザ・レイクチャンプ」http://lake-champ.com
(※05)よしさん(2006):「水の華シロコ現象とは(亀山湖における2005年の事例)」http://wakasagi.jpn.org/
(※06)よしさん(2006):「アオコとは(雄蛇ケ池における2006年の事例)」http://wakasagi.jpn.org/
(※07)よしさん(2007):「アオコとは(雄蛇ケ池における2007年の事例)」http://wakasagi.jpn.org/
(※08)よしさん(2008):「雄蛇ケ池のアオコ現象と原因藍藻類の変遷(2006〜2008年)」http://wakasagi.jpn.org/
(※09)よしさん(2008):「見た目アオコ指標と指標写真」http://wakasagi.jpn.org/
(※10)よしさん(2008):「雄蛇ケ池におけるアオコ現象と想定される毒性」http://wakasagi.jpn.org/
(※11)よしさん(2008):「これがソウギョの糞塊だ(千葉県雄蛇ケ池の事例)」http://wakasagi.jpn.org/
(※12)よしさん(2009):「雄蛇ケ池のアオコ現象、見た目と実態(2009年)」http://wakasagi.jpn.org/
(※13)よしさん(2009):「アオコ現象の千葉県雄蛇ケ池における捨水管理と結末」http://wakasagi.jpn.org/
(※14)つかじー(2009):「雄蛇ヶ池の話 〜蛇(じゃ)の道は蛇(へび)〜」http://ojyagaike.naturum.ne.jp/

採取:2009年11月16日(月)14:40 天候◎ 気温:16.9℃ (at14:00 mobara) 水温:15.8℃
風:北西1m/秒 水位:ほぼ満水 水の透明度:不良
検鏡撮影:2009年11月17日(火)
発表:2009年11月20日(金)牛久沼漁業協同組合顧問よしさん
「ザ・レイクチャンプ」シークレット・ポイント0001 雄蛇ケ池
転載許可: 「雄蛇ヶ池バスフィッシングガイド」 に本稿転載を許可します。よしさん。

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