【考察】 家庭環境で整う、居室・上水・ビーカー・冷蔵庫等を用いて、室内で簡単にワカサギ受精卵 (胚)の発生段階及び発眼状況並びに仔魚ふ出の時期等を観察した。 写真記録が不要であれば、光学顕微鏡と顕微鏡専用デジタルカメラも不要となり、目視で観察することになるが、 発眼卵に成長すれば状況は十分に把握できる(fig.09)。 今回サンプルに用いた受精卵は、ふ化塔式ふ化設備に収容したものの一部であるが、 これを「受精卵を付着させたシュロ枠の一部を切取ったもの」に置き換えても、同様の観察 は可能である。 漁場と室内、内外の条件差による補正は、個々に検討する今後の課題であるが、 漁場に浸漬するものの、ほんの一部(20〜30粒でも可)を、手元に設置する簡易対照区で 観察することにより、漁場の受精卵(胚)の状態をある程度把握する道が拓けた。 本・室内ビーカー対照区法が、「受精卵を付着させたシュロ枠を湖水に直接浸漬する、暗中模索状態の従来法」の 目安として併用されることを期待したい。
【参考文献】 (※01)佐藤隆平(1954)「ワカサギの漁業生物学」東京大学農学部水産学科、水産増殖叢書5 (※02)白石芳一(1961)「ワカサギの水産生物学的ならびに資源学的研究」淡水区水産研究所研究報告第10巻第3号、別刷 (※03)白石芳一(1967)「ワカサギ」養魚学各論,170-171pp及び図6.2,恒星社厚生閣