亀山湖・牛久沼は首都圏近郊のワカサギ釣り場をめざします

ワカサギふ化放流ノート
書斎で可能な、ワカサギ受精卵の観察日誌(2010)
The Hatching diary of a Japanese-smelt eggs, in the Study possible(2010).
【目的】
ワカサギ受精卵のふ化作業には、さまざまな形態がある。
産卵基質に粘着性受精卵を付着させ、湖水に直接浸漬し、ふ化を待つふ化方法は、浸漬後に手間が 掛からないことが最大のメリットである。
反面、ふ出仔魚の目視確認ができず、相当期間経過後に湖水から浸漬しておいた産卵基質を取り上げ、 「産卵基質に受精卵が残っていない」ことを確認し、「ふ化した」ようだと、推定せざるを得なかった。
受精卵を付着させたシュロ枠を湖水に直接浸漬する、暗中模索状態の従来法を改善するため、 受精卵(胚)の発生段階及び発眼状況並びに 仔魚ふ出の時期に関する、何らかの手がかり・ガイドラインづくりをめざし、 室内ビーカー観察を実施した。
結果を以下に示す。
ワカサギ卵検鏡 egg
ワカサギ卵検鏡 egg
ノート note
fig.01a 受入初日
fig.01a 受入初日
fig.01b 受入初日
fig.01b 受入初日(胚径870μm)
【受入初日】2010年03月18日(木)
08:15受精卵受取(クール宅配便近傍拠点迄漁協が往復し受取)
08:15〜09:30袋入り受精卵を水温15.6℃地下水で養生・水温順応
09:30〜11:00受精卵の脱粘・洗浄処理
09:30〜11:00受精卵を1〜2号機に収容
11:00給水温度15.6℃
牛久沼水温13.8℃(at11:00)
21:00検鏡(持帰り)
fig.02a 受入2日目
fig.02a 受入2日目
fig.02b 受入2日目
fig.02b 受入2日目
【受入2日目】2010年03月19日(金)
ビーカー内水温14.0℃(09:00)
死卵除去
fig.03a 受入3日目
fig.03a 受入3日目
fig.03b 受入3日目
fig.03b 受入3日目
【受入3日目】2010年03月20日(土)
死卵除去
水生菌微量出現
ビーカー内水温20.0℃に上昇したため冷蔵庫に収容(24:00)
fig.04a 受入4日目
fig.04a 受入4日目
fig.04b 受入4日目
fig.04b 受入4日目
【受入4日目】2010年03月21日(日)
fig.05a 受入5日目
fig.05a 受入5日目
fig.05b 受入5日目
fig.05b 受入5日目
【受入5日目】2010年03月22日(月)
死卵除去
魚体出来

牛久沼ふ化設備で発眼確認(1〜2号機at10:40)
fig.06a 受入6日目
fig.06a 受入6日目
fig.06b クリックで動画スタート
fig.06b クリックで動画スタート
(別画面8秒・戻りは赤×で閉じる)
【受入6日目】2010年03月23日(火)
ビーカー内水温16.2℃
心臓動いている
胚の中で魚体くねる
fig.07a 受入7日目
fig.07a 受入7日目
fig.07b クリックで動画スタート
fig.07b クリックで動画スタート
(別画面9秒・戻りは赤×で閉じる)
【受入7日目】2010年03月24日(水)
ビーカー内水温15.8℃
fig.08a 受入8日目
fig.08a 受入8日目
fig.08b クリックで動画スタート
fig.08b クリックで動画スタート
(別画面12秒・戻りは赤×で閉じる)
【受入8日目】2010年03月25日(木)
ビーカー内水温12.6℃(at06:00)
ビーカー内水温16.6℃(at14:30)

牛久沼ふ化設備でふ出確認(1〜2号機at14:00)
fig.09 受入9日目
fig.09 受入9日目(ビーカー内)
【受入9日目】2010年03月26日(金)
ビーカー内水温16.2℃(at12:00)
fig.10 受入10日目
fig.10 受入10日目(ふ出仔魚・全長4.3mm)
【受入10日目】2010年03月27日(土)
ふ出確認(at07:30)
ビーカー内水温15.0℃(at08:00)
ビーカー内水温16.4℃(at09:30)

牛久沼ふ化設備でふ出終了(1〜2号機at06:00)
【観察方法・器具】
●2010年03月17日出荷、翌03月18日受入の芦ノ湖産ワカサギ受精卵を、脱粘処理・洗浄処理 しサンプルに用いた。
●受精卵約200粒は、容量約200ccの蓋付き透明ビーカーに収容、観察した。
●ビーカーは、室内に静置し、昼間は概ね室内照明の下、夜間は消灯暗闇の環境下とした。
●用水は、家庭用上水をポリバケツに汲み、概ね24時間屋外に置いた(雨ざらし)後、毎日夕刻、 ビーカーの水を全量入替えると同時に、死卵・糸状菌付着卵をスポイトで除去した。
●ビーカー内、用水の表層水温は小型デジタル水温計で随時測定し、18.0℃を超過した場合は、ビーカーごと 家庭用冷蔵庫に収容し、水温を下げた。
●ビーカーには、ばっ気装置を設けず、随時スポイトで水面上から勢い良く気泡を発生するよう注水し、 Do(溶存酸素)を補った。
●用水に、菌発生抑制等の薬剤は添加していない。
●毎日20:00頃、光学顕微鏡でランダムに受精卵を検鏡し、デジタルカメラで写真撮影した。

【考察】
家庭環境で整う、居室・上水・ビーカー・冷蔵庫等を用いて、室内で簡単にワカサギ受精卵 (胚)の発生段階及び発眼状況並びに仔魚ふ出の時期等を観察した。
写真記録が不要であれば、光学顕微鏡と顕微鏡専用デジタルカメラも不要となり、目視で観察することになるが、 発眼卵に成長すれば状況は十分に把握できる(fig.09)。
今回サンプルに用いた受精卵は、ふ化塔式ふ化設備に収容したものの一部であるが、 これを「受精卵を付着させたシュロ枠の一部を切取ったもの」に置き換えても、同様の観察 は可能である。
漁場と室内、内外の条件差による補正は、個々に検討する今後の課題であるが、 漁場に浸漬するものの、ほんの一部(20〜30粒でも可)を、手元に設置する簡易対照区で 観察することにより、漁場の受精卵(胚)の状態をある程度把握する道が拓けた。
本・室内ビーカー対照区法が、「受精卵を付着させたシュロ枠を湖水に直接浸漬する、暗中模索状態の従来法」の 目安として併用されることを期待したい。

【参考文献】
(※01)佐藤隆平(1954)「ワカサギの漁業生物学」東京大学農学部水産学科、水産増殖叢書5
(※02)白石芳一(1961)「ワカサギの水産生物学的ならびに資源学的研究」淡水区水産研究所研究報告第10巻第3号、別刷
(※03)白石芳一(1967)「ワカサギ」養魚学各論,170-171pp及び図6.2,恒星社厚生閣

観察期間:2010年03月18日(木)〜03月27日(土)の10日間
発表:2010年03月28日(日) 前・牛久沼漁業協同組合顧問よしさん

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