それぞれの種の経緯を見ると、
ミクロキスティス ベーゼンベルギー(fig.05)は、今回調査中の優占種であった。
ミクロキスティス イクチオブラーベ(fig.06)は、北米・ロシア(の西端)にも分布し、
中国名で「魚害微嚢藻」と呼ばれ(※02)、今回も多く観察された。
ミクロキスティス エルギノーザ(fig.03)、ミクロキスティス ノバセキ(fig.04)、も多く見られ、
アナベナ スピロイデス クラッサ(fig.07)、アナベナ マクロスポーラ(fig.09)の個体数は比較的に少なかった。
コエロスファエリウム ナゲリアナム(fig.08)は、インド・中華人民共和国各地に分布し、
中国名は「納氏腔球藻」で、「有時形成水花」の生境とされる(※02)、が今回の出現は極少であった。
国立環境研究所の提唱した「見た目アオコ現象」(※11)のレベルをあてはめると、
池全体は3〜4、塚本ボート桟橋周辺・堰堤北側・弁天谷津(東側・西側共)でレベル5であった。
【考察01】
平均水深2m程度と浅い皿池形状の雄蛇ケ池において、重度で複合したアオコ現象が
毎年反復し発生している原因は、既に明らかにした(※07〜※16)。
動物プランクトンの糞塊(未消化排出物)は、雄蛇ケ池におけるソウギョの糞塊と比較し、あまりにも小規模であるが、
長野県の灌漑用溜池白樺湖(面積は雄蛇ケ池の約1.5倍)において、次の事例が報告されている(※06)。
すなわち、灌漑用溜池の植物プランクトンの捕食を目的に、茨城県霞ケ浦由来の
動物プランクトンの一種・カブトミジンコ Daphnia galeata を移殖放流したところ、白樺湖の
植物プランクトン量が減少し透明度が上昇すると共に、水中の全リン量が減少し、逆に池底の
全リン濃度が高くなる傾向がみられたことから、カブトミジンコがリンを糞塊に変え、水深8mの池底に沈降・蓄積させている
と考えられる(※06)、というもの。
浅い池底に、ソウギョの糞塊として蓄積された大量の栄養塩は、波浪により容易に雄蛇ケ池全体に拡散し、
高水温と太陽光線に後押しされ、藍藻類の異常繁殖を招いていると、よしさんが指摘した原因のメカニズムの一端は、
上述の事例からも暗示される。
【謝辞】
雄蛇ケ池を通年観察し、都度状況を報告くださる「雄蛇ヶ池の話 〜蛇(じゃ)の道は蛇(へび)〜」主宰つかじーさんに感謝します。
【参考文献】
(※01)生嶋 功(1991):「水の華の発生機構とその制御」第2刷,183pp,東海大学出版会,\1648
(※02)朱 浩然(1991):「中国淡水藻志 第二巻 色球藻綱」第1版,vi+161pp,科学出版社(北京),13.00元
(※03)藤田善彦・大城 香(1993):「ラン藻という生きもの」第2刷,134pp,東京大学出版会,\1648
(※04)渡辺真利代・原田健一・藤木博太(1994):「アオコ−その出現と毒素−」257pp,東京大学出版会,\4738
(※05)よしさん(1996〜2010):雄蛇ケ池「ザ・レイクチャンプ」http://lake-champ.com
(※06)河 鎭龍・花里孝幸(2006):「バイオマニピュレーションが行なわれた湖(白樺湖)では何故全リンが減ったのか」
日本陸水学会 講演要旨集 http://www.jstage.jst.go.jp/article/jslim/71/0/62/_pdf/-char/ja/
(※07)よしさん(2006):「水の華シロコ現象とは(亀山湖における2005年の事例)」http://wakasagi.jpn.org/
(※08)よしさん(2006):「アオコとは(雄蛇ケ池における2006年の事例)」http://wakasagi.jpn.org/
(※09)よしさん(2007):「アオコとは(雄蛇ケ池における2007年の事例)」http://wakasagi.jpn.org/
(※10)よしさん(2008):「雄蛇ケ池のアオコ現象と原因藍藻類の変遷(2006〜2008年)」http://wakasagi.jpn.org/
(※11)よしさん(2008):「見た目アオコ指標と指標写真」http://wakasagi.jpn.org/
(※12)よしさん(2008):「雄蛇ケ池におけるアオコ現象と想定される毒性」http://wakasagi.jpn.org/
(※13)よしさん(2008):「これがソウギョの糞塊だ(千葉県雄蛇ケ池の事例)」http://wakasagi.jpn.org/
(※14)よしさん(2009):「雄蛇ケ池のアオコ現象、見た目と実態(2009年)」http://wakasagi.jpn.org/
(※15)よしさん(2009):「アオコ現象の千葉県雄蛇ケ池における捨水管理と結末」http://wakasagi.jpn.org/
(※16)よしさん(2009):「紅葉してもアオコ現象の千葉県雄蛇ケ池」http://wakasagi.jpn.org/
(※17)つかじー(2010):「雄蛇ヶ池の話 〜蛇(じゃ)の道は蛇(へび)〜」http://ojyagaike.naturum.ne.jp/