スポンサードなし、よしさんの自費研究成果です

ワカサギふ化放流ノート
雄蛇ケ池でふ化した仔稚魚用、餌料プランクトン調査報告(2010)
Postlarva and juvenile stage fish initial bait charges survey in the onjyaga-ike pond.
fig.0a 雄蛇ケ池(ボートハウスツカモト桟橋)
fig.0a 雄蛇ケ池(ボートハウスツカモト桟橋)

【雄蛇ケ池でふ化した仔稚魚用、餌料プランクトン調査報告(2010)】
雄蛇ケ池(千葉県東金市)は、1614(慶長19)年に完成した、大規模な灌漑用溜池である(※04)。

【目的】
漁業権設定のなされていない雄蛇ケ池では、法令に基づく魚類増殖義務がないこともあり、 魚類資源管理という概念は浸透しておらず、ましてや、雄蛇ケ池で自然産卵され、 ふ化した仔稚魚用の餌料プランクトン調査は、過去に見当たらないようだ。
よしさんは以前、雄蛇ケ池のプランクトン調査を報告している(※07〜※11)が、不十分であったため、 仔稚魚用餌料プランクトン環境を明らかにすることを目的に、2010年07月04日(日)、 毎年恒例の雄蛇ケ池クリーンアップ大作戦に参加し、ゴミ拾い等が終了し解散後の機会をとらえ、 昼食休憩をはさんで、ボートハウスツカモト桟橋で(ボートを使用せず)プランクトンを採取し(fig.0a 写真)、 現地でただちにホルマリン固定の上、持ち帰り検鏡観察した。

【結果】

fig.01 ケンミジンコ属
fig.01 ケンミジンコ属
Cyclopoida sp.
fig.02 ヒゲナガケンミジンコ属
fig.02 ヒゲナガケンミジンコ属
Diaptomidae sp.
fig.03 ゾウミジンコ
fig.03 ゾウミジンコ
Bosmina longirostris
fig.04 ネコゼミジンコ属
fig.04 ネコゼミジンコ属
Ceriodaphnia sp.
fig.05 オオアタマミジンコ
fig.05 オオアタマミジンコ
Diaphanosoma dubia
MANUILIOVA
fig.06 ヒロハネウデワムシ
fig.06 ヒロハネウデワムシ
Polyarthra euryptera
fig.07 ハネウデワムシの一種
fig.07 ハネウデワムシの一種
Polyarthra remata
fig.08 フクロワムシ
fig.08 フクロワムシ
Asplanchna priodonta
fig.09 テマリワムシ
fig.09 テマリワムシ
Conochilus hippocrepis
fig.10 コガタツボワムシ
fig.10 コガタツボワムシ
Brachionus angularis
var.angularis
fig.11 ツボワムシ
fig.11 ツボワムシ
Brachionus calyciflorus
f.amphiceros
fig.12 ミジンコワムシ
fig.12 ミジンコワムシ
Hexarthra sp.
fig.13 ディフルギア科
fig.13 ディフルギア科
Difflugiidae spp.(原生動物)
(ツボカムリ)
fig.14 アルケラ属
fig.14 アルケラ属
Arcella sp.(原生動物)
(ナベカムリ)
fig.15 少毛目ハルテリア属
fig.15 少毛目ハルテリア属
Halteria sp.(原生動物)
fig.16 ボルボックス属
fig.16 ボルボックス属
Volvox sp.(原生動物)
fig.17 ユーグレナ属
fig.17 ユーグレナ属
Euglena sp.(原生動物)
fig.18 ファークス属
fig.18 ファークス属
Phacus sp.(原生動物)
fig.19 不詳
fig.19 不詳
Unknown
fig.20 フラギラリア属
fig.20 フラギラリア属(珪藻) Fragilaria sp. (オビケイソウ)
fig.21 クンショウモ(緑藻)
fig.21 クンショウモ(緑藻)
Pedia strum sp.
検鏡し撮影した顕微鏡写真を、上記に示す(fig.01-fig.21)、なお背景のグリッドは100μm間隔である。
今回のプランクトン調査結果の、圧倒的優占種は、ボルボックス属(fig.16)であった (但し、別途報告した藍藻類※14を除く)。
次に多く見られた種は、ゾウミジンコ(fig.03)・フクロワムシ(fig.08)で、他は少数派であった。
まとめると、ミジンコ類5種・ワムシ類7種・原生動物6種が観察された。
植物プランクトンの珪藻類では、フラギラリア属(fig.20)と、特徴ある形の緑藻類クンショウモ(fig.21)の出現を確認した。
同日調査した水の華(アオコ現象)の原因藍藻類については、別途報告している(※14)。

【考察】
07月に観察した動物プランクトンをサイズ別に見ると、 ハネウデワムシ類(fig.06-fig.07)・テマリワムシ(fig.09)・ツボワムシ類(fig.10-fig.11)・ミジンコワムシ(fig.12)等、 比較的小型のワムシ類や原生動物(ボルボックス属を除く)は個体数こそ少ないものの、多種が観察されている。
また中型では、ケンミジンコ属(fig.01)・ゾウミジンコ(fig.03)・ネコゼミジンコ属(fig.04)が観察され、特にゾウミジンコ(fig.03)の 個体数が多数であった。
さらに大型では、ヒゲナガケンミジンコ属(fig.02)・オオアタマミジンコ(fig.05)・フクロワムシ(fig.08)が見られ、 特にフクロワムシ(fig.08)の個体数が多数であった。
口径の小さな仔魚(※01・※13)の初期餌料に適する200μm以下のサイズのプランクトンは少量だったものの、 雄蛇ケ池で自然産卵し、ふ化すると想定される仔稚魚が卵黄を吸収し、摂餌を開始する時期は、概ね03月〜04月から07月頃で あることを踏まえ、調査日現在の再生産魚は、それなりに成長し口径も大きくなっていると考えられた。
従って、ある程度成長し口径の大きな稚魚の需要に応える中大型プランクトン、ゾウミジンコ(fig.03)・フクロワムシ(fig.08)の 量的存在から、07月の雄蛇ケ池は良好な餌料プランクトン環境にあると見られる。

今回調査で圧倒的優占種であった、ボルボックス属(fig.16)は、淡水域で水の華を引き起こすことが、有賀祐勝(東京水産大学)により指摘されており(※02)、 珪藻のフラギラリア属(fig.20)は、時として人造湖で水の華を形成する事例が九州で報告されている(※12)ため、 雄蛇ケ池において水の華(アオコ現象)を正確に監視する必要があれば、藍藻類の他、この2種の挙動も観察継続することがベターであろう。

【謝辞】
プランクトン調査のため、桟橋利用を快諾されたボートハウスツカモトに感謝します。 

【参考文献】
(※01)代田昭彦(1975):「若幼魚及び稚仔魚の口径と餌料」水産餌料生物学,170-187pp,恒星社厚生閣,東京, \7500
(※02)猪木正三(1981):「C.おもな赤潮原生動物」『原生動物図鑑』,189-190pp,講談社,東京, \25800
(※03)福代康夫(1995):『日本の赤潮生物-写真と解説-』407pp,第2版,内田老鶴圃(東京), \13390
(※04)よしさん(1996〜2010):雄蛇ケ池「ザ・レイクチャンプ」http://lake-champ.com
(※05)千原光雄(1997):『藻類多様性の生物学』1-386pp,内田老鶴圃(東京), \9000+税
(※06)水野寿彦・高橋永治(2000):『日本淡水動物プランクトン検索図説』1-551pp,東海大学出版会(東京), \18900
(※07)よしさん(2006):「雄蛇ケ池(ボートハウスツカモト桟橋)の動物プランクトン」http://wakasagi.jpn.org/
(※08)よしさん(2006):「雄蛇ケ池(余水吐前)の動物プランクトン」http://wakasagi.jpn.org/
(※09)よしさん(2007):「雄蛇ケ池(余水吐前)の動物プランクトン」http://wakasagi.jpn.org/
(※10)よしさん(2008):「雄蛇ケ池(養安寺堰堤前)の動物プランクトン」http://wakasagi.jpn.org/
(※11)よしさん(2008):「雄蛇ケ池(余水吐前)の動物プランクトン」http://wakasagi.jpn.org/
(※12)筑後川ダム統合管理事務所(2008):「下筌ダム湖における藻類の大量発生について」
http://www.qsr.mlit.go.jp/toukan/kona-simo/pdf/20080909.pdf
(※13)よしさん(2010):「ワカサギふ化仔魚の口器及び口径観察日誌(2010)」(2010年04月)http://wakasagi.jpn.org/
(※14)よしさん(2010):「アオコ現象連続発生の千葉県雄蛇ケ池」http://wakasagi.jpn.org/

採取:2010年07月04日(日)12:00 天候◎○ 気温:30.1℃ (at12:00 mobara) 水温:29.6℃
水位:0.8m減水 水の透明度:不良 検鏡撮影:2010年07月08日(木)〜10日(土)
発表:2010年07月13日(火)前・牛久沼漁業協同組合顧問よしさん
「ザ・レイクチャンプ」シークレット・ポイント0001 雄蛇ケ池
転載許可: 「雄蛇ヶ池バスフィッシングガイド」 に本稿転載を許可します。よしさん。

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