【千葉県雄蛇ケ池のヒロハネウデワムシ】
雄蛇ケ池（千葉県東金市）は、１６１４（慶長１９）年に完成した、大規模な灌漑用溜池である（※０６）。
２０１０年０７月０４日（日）、ボートハウスツカモト桟橋で（ボートを使用せず）プランクトンを採取し、
現地でただちにホルマリン固定の上、持ち帰り検鏡観察した結果は、別途報告している（※０９～※１１）。
ハネウデワムシ属は、体長７０μｍ～２５０μｍ程度で、動物プランクトンでは小型の部類に入り、昆虫のセミが水中にいるようなイメージなら理解しやすかろう。
ただし、鳴きはしないし、ハネ（棘・付肢）は３本１組が体の４ケ所からでており（つまり１２本）、体長やそのハネ（棘・付肢）の形状により、
種が分かれる。
体長が大きくハネ（棘・付肢）が（あたかも桜の葉のように・葉脈もあり）幅広く葉状という特徴を持つのが、ヒロハネウデワムシ（fig.01 左）で、
北海道から九州までと韓国の人造湖や溜池に分布するとされる（※０７）。
しかし、よしさんは千葉県亀山湖・同三島湖・茨城県牛久沼・同中沼・山形県蛭沢湖・同水窪ダム貯水池等において、
ヒロハネウデワムシ（fig.01 左）は未観察で、同属 Polyarthra sp. を頻繁に観察しているため、ヒロハネウデワムシ（fig.01 左）の
分布する水体が限定され、あるいは個体数が少ない可能性も考えられる。
また、掲載のハネウデワムシの一種（fig.01 右）は、Polyarthra remata と思われ、標準和名はないようであるから
「ハネウデワムシの一種」としたが、ハネ（棘・付肢）は剣状で幅は狭いことに特徴があり、比較できるよう写真を掲載した。
ハネウデワムシ属も、魚類ふ化仔魚の初期餌料に適するプランクトンのひとつであると先学も指摘しており、ワカサギでは、
佐藤隆平博士が小川原沼（※０１）・白石芳一博士が諏訪湖（※０２）・山岸 宏博士が諏訪湖（※０３）・久下敏宏博士が群馬県内複数湖沼（※０８）の
事例を報告しており、他の淡水魚類仔魚においても事情は同様で、重要な餌料プランクトンのひとつと推測される。
日本各地に分布する、ハネウデワムシ属 Polyarthra trygla は、中華人民共和国のミャンマー国境に近いチベット自治区察隅区
（標高１５５０ｍ・気温２６℃・水温２８℃）や（※０４）、太湖でも観察されている（※０５）が、中国の国内分布は狭いようだ（※０４）。
【謝辞】
プランクトン調査のため、桟橋利用を快諾されたボートハウスツカモトに感謝します。
【参考文献】
（※０１）佐藤隆平（１９５４）：「ワカサギの漁業生物学」『水産増殖叢書No.5』,34pp,東京大学,
（※０２）白石芳一（１９６１）：「ワカサギの水産生物学的ならびに資源学的研究」『淡水区水産研究所研究報告Vol.10,No.3』別刷,71pp,
（※０３）山岸 宏（１９７４）：「諏訪湖におけるワカサギ稚魚の生態」『日本生態学会誌Vol.24,No.1』,15pp,
（※０４）蒋燮治（１９８３）：『西蔵水生無脊椎動物』第１版,6pp,401pp,科学出版社（北京）,80元
（※０５）水野寿彦（１９９２）：『水野寿彦私のスケッチ画集第Ⅱ部』197pp,トンボ出版（大阪）, \3800
（※０６）よしさん（１９９６～２０１０）：雄蛇ケ池「ザ・レイクチャンプ」http://lake-champ.com
（※０７）水野寿彦・高橋永治（２０００）：『日本淡水動物プランクトン検索図説』1-551pp,東海大学出版会（東京）, \18900
（※０８）久下敏宏（２００６）：「群馬県におけるワカサギの増殖に関する研究」『群馬県水産試験場研究報告,No.12』別刷,31-34pp,
（※０９）よしさん（２０１０）：「アオコ現象連続発生の千葉県雄蛇ケ池」http://wakasagi.jpn.org/
（※１０）よしさん（２０１０）：「雄蛇ケ池でふ化した仔稚魚用、餌料プランクトン調査報告（２０１０）」http://wakasagi.jpn.org/
（※１１）よしさん（２０１０）：「千葉県雄蛇ケ池の少毛目ハルテリア属」http://wakasagi.jpn.org/
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