【千葉県雄蛇ケ池のヒメネコゼミジンコ】
雄蛇ケ池(千葉県東金市)は、1614(慶長19)年に完成した、大規模な灌漑用溜池である(※02)。
2010年07月04日(日)、ボートハウスツカモト桟橋で(ボートを使用せず)プランクトンを採取し、
現地でただちにホルマリン固定の上、持ち帰り検鏡観察した結果は、既に報告している(※05〜※09)。
雄蛇ケ池のネコゼミジンコ属は、別途報告した(※05)が、気になったので、保存サンプルを用い追加観察を実施し、
新規に2個体を確認した(fig.01,fig.03)。
前回確認分(fig.02)と合わせ♀メス3個体を仔細に観察し、『中国動物誌 節足動物門甲殻綱淡水枝角類』(※01)・『日本淡水動物プランクトン検索図説』(※03)と比較照合し、
ヒメネコゼミジンコ(fig.01〜fig.03)と、種の同定をした。
ネコゼミジンコ属の後背隅は明らかに後ろ向きに尖り突出し、日本で知られる6種の大部分は温帯性とされ(※03)、中国では固有種を含む10種が知られている(※01)。
本種ヒメネコゼミジンコ(fig.01〜fig.03)は、小型で♀メスの体長は500μm前後、鞘面の下半分に網状紋があり、
楕円形の耐久卵1個を蓄え、3月頃出現し10月頃に消滅、北海道大沼・山梨県河口湖・愛知県宇連湖(鳳来湖か?)・長野県牧尾ダムに分布する
とされる(※03)が、中国では「種群3月始出現、10月消失、夏卵毎胎2〜3ケ、多至8〜9ケ」で、
分布は「我国湖北、西蔵、新疆、国外欧洲、美洲」と記載され(※01)、図も詳しい。
よしさんは、千葉県亀山湖で、2009年12月22日にヒメネコゼミジンコを採取した事例を報告している(※04)。
従って、千葉県下の分布は、亀山湖(人造湖)・雄蛇ケ池(灌漑用溜池)が確認され、12月22日でも消滅しない
ことが明らかになった。
『日本淡水動物プランクトン検索図説』は『中国動物誌 節足動物門甲殻綱淡水枝角類』他の和訳合冊の如き様相であるが、
日本における最近の知見を加え、改訂増補されることを期待したい。
余談ながら、『日本淡水動物プランクトン検索図説』(※02)の、ヒメネコゼミジンコ説明部(144pp) の学名 Ceriodaphmia pulchella は誤りと思われ、
Ceriodaphnia pulchella とすべき箇所の校正ミスであろう。
念のため書架から同書旧版(1991年06月25日初版第1刷)を久しぶりに取出し調べたところ、同様のミスを確認した(146pp)ので、
所蔵の諸兄は、急ぎ、チェック・修正方。
【謝辞】
プランクトン調査のため、桟橋利用を快諾されたボートハウスツカモトに感謝します。
【参考文献】
(※01)蒋燮治・堵南山(1979):『中国動物誌 節足動物門甲殻綱淡水枝角類』第1版,130-143pp,科学出版社(北京),3.00元
(※02)よしさん(1996〜2010):雄蛇ケ池「ザ・レイクチャンプ」http://lake-champ.com
(※03)水野寿彦・高橋永治(2000):『日本淡水動物プランクトン検索図説』1-551pp,東海大学出版会(東京), \18900
(※04)よしさん(2009):「亀山湖(F.コテージつばきもと桟橋)の動物プランクトンとワカサギ増殖事業への提言」http://wakasagi.jpn.org/
(※05)よしさん(2010):「雄蛇ケ池でふ化した仔稚魚用、餌料プランクトン調査報告(2010)」http://wakasagi.jpn.org/
(※06)よしさん(2010):「アオコ現象連続発生の千葉県雄蛇ケ池」http://wakasagi.jpn.org/
(※07)よしさん(2010):「千葉県雄蛇ケ池の少毛目ハルテリア属」http://wakasagi.jpn.org/
(※08)よしさん(2010):「千葉県雄蛇ケ池のヒロハネウデワムシ」http://wakasagi.jpn.org/
(※09)よしさん(2010):「千葉県雄蛇ケ池のミジンコワムシ」http://wakasagi.jpn.org/
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