それぞれの種の経緯を見ると、
アナベナ マクロスポーラ(fig.02)は、今回調査中の優占種で、2006年にも出現していた(※09・※10)。
ミクロキスティス ノバセキ(fig.03)・ミクロキスティス ベーゼンベルギー(fig.04)・ミクロキスティス イクチオブラーベ(fig.05)・の3種は、
亀山湖で今回初観察した種で、個体数は比較的に少なかった。
この状況を、国立環境研究所の提唱した「見た目アオコ現象」(※17)のレベルをあてはめると、
湖全体は2〜3、F.コテージつばきもと桟橋周辺・他でレベル3〜4であった。
【考察】
亀山湖でアオコ現象を引き起こした原因藻類の変遷を見ると、2006年はアナベナ3種(※09・※10)、
2007年はアナベナからミクロキスティスへ変化(※11〜※14)、2008年はアナベナからシネドラ属(珪藻)へ変化(※15・※16)、
2010年はアナベナ1種とミクロキスティス3種の合計4種混合であった。
これらの事実を踏まえ、気がかりの一つは、異属の多種混合出現という、より一層富栄養化への傾斜を強めた亀山湖の、今後の動向である。
別の気がかりは、強力な肝臓毒の一つミクロシスチンをつくる系統とつくらない系統の2つの性質を持つ、
ミクロキスティス イクチオブラーベ(fig.05)の初観察にある。
なぜなら、亀山湖の貯水は灌漑用水として水田に使用され米になり、また下流で君津広域水道企業団に取水され上水道で配水され(※06)、
「食の安全」に思いをいたすからである。
【参考文献】
(※01)生嶋 功(1991):「水の華の発生機構とその制御」第2刷,183pp,東海大学出版会,\1648
(※02)朱 浩然(1991):「中国淡水藻志 第二巻 色球藻綱」第1版,vi+161pp,科学出版社(北京),13.00元
(※03)藤田善彦・大城 香(1993):「ラン藻という生きもの」第2刷,134pp,東京大学出版会,\1648
(※04)渡辺真利代・原田健一・藤木博太(1994):「アオコ−その出現と毒素−」257pp,東京大学出版会,\4738
(※05)福代康夫(1995):「日本の赤潮生物-写真と解説-」第2版,xv+407pp,内田老鶴圃,\13390
(※06)よしさん(1996〜2010):亀山湖「ザ・レイクチャンプ」http://lake-champ.com
(※07)千原光雄(1997):「藻類多様性の生物学」vii+386pp,内田老鶴圃,\9000+税
(※08)よしさん(2005):「水の華シロコ現象とは(亀山湖における2005年の事例)」http://wakasagi.jpn.org/
(※09)よしさん(2006):「アオコとは(亀山湖における2006年の事例)」http://wakasagi.jpn.org/
(※10)よしさん(2006):「アオコとは(亀山湖における2006年の事例)その2」http://wakasagi.jpn.org/
(※11)よしさん(2007):「亀山湖(神社下)のアナベナ」http://wakasagi.jpn.org/
(※12)よしさん(2007):「亀山湖(神社下)のアナベナ その2」http://wakasagi.jpn.org/
(※13)よしさん(2007):「亀山湖(神社下)のアナベナ その3」http://wakasagi.jpn.org/
(※14)よしさん(2007):「亀山湖(角柳)のミクロキスティス」http://wakasagi.jpn.org/
(※15)よしさん(2008):「亀山湖のシネドラ属」http://wakasagi.jpn.org/
(※16)よしさん(2008):「藍藻アナベナ(亀山湖2008年の事例」http://wakasagi.jpn.org/
(※17)よしさん(2008):「見た目アオコ指標と指標写真」http://wakasagi.jpn.org/