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ワカサギふ化放流ノート
群馬県榛名湖のクロモ
Water Thyme of Lake Haruna, gunma.
【群馬県榛名湖のクロモ】
湖面標高1084m・最大水深14.6m・面積122haの榛名湖(群馬県高崎市)は、説明するまでもなく、カルデラ湖(正確には火口原湖)である。

【目的】
2010年11月18日(木)午後、榛名湖の江原ボート店桟橋付近の護岸にて、 打ち上げられた水生植物を拾得し、持ち帰り検鏡観察したので報告する。

【結果】

fig.01 クロモ全景
fig.01 クロモ全景 Hydrilla verticillata Casp.
fig.02 葉の先端部
fig.02 葉の先端部
fig.03 葉の細胞
fig.03 葉の細胞
fig.04 葉縁の細鋸歯
fig.04 葉縁の細鋸歯
fig.05 中央脈と周辺細胞
fig.05 中央脈と周辺細胞
拾得した水生植物の全景を最上段に示す(fig.01)。
観察部分の茎は円柱形で、太い箇所の径1mmから0.5mm・さらに先端は細い。
節間の長さは、最大37mmから、27mm・23mm・10mm・8mm・4mmと、先端の間隔は詰まっている。
節から葉が輪生し、枝も分岐させる。
輪生葉は、1節に5〜6枚で最大は8枚、葉片は無柄で線形軟質、葉縁に細鋸歯がある(fig.02-fig.04)。
葉片の長さは8〜11mm、幅は1.5〜2mm、中央脈が明瞭である(fig.05)。
拾得した水生植物は、拾得地と観察結果から、『日本水生植物図鑑』(※01)により、 沈水性多年草の一種、トチカガミ科のクロモ Hydrilla verticillata Casp. と同定した。

【考察】
『日本の生物』(※03)に、クロモは国内各地の湖沼・溜め池・河川・水路に生育するだけでなく、 旧大陸(ユーラシア・アフリカ・オーストラリア)に広く分布し、新大陸へも帰化侵入している、と角野康郎博士が述べている。
1属1種の水草が、特定地域限定の遺存種的存在ではなく、広域に分布することは驚異的だ。
時節柄(花期は終わっているため)、拾得したクロモに花はなく、花と花粉は未観察である。

榛名湖の水生植物は、水深3〜4m位までの沿岸部に見られ、魚類の良い産卵・摂餌の場所になっており(※02)、 魚族繁殖を願う釣り人には、心強く大切な存在である。
榛名湖のプランクトンと、セキショウモについては、別途報告した(※06〜※07)。

【謝辞】
榛名湖視察に便宜を与えて頂いた、伊勢崎市在住古田ひろよしさんに感謝します。

【参考文献】
(※01)大滝末男・石戸 忠(1980):「クロモ」.『日本水生植物図鑑』.北隆館,東京,188-189pp.
(※02)五味禮夫(1980):「榛名湖」『群馬の湖沼』,170-182pp,巻末26-27pp,上毛新聞社出版局,前橋, \1600
(※03)角野康郎(1989):日本の水草 その自然史10「生活史と種内変異」.『日本の生物』3(5),may,1989,55-60pp.
(※04)よしさん(2010):「第15回ワカサギに学ぶ会参加報告」http://wakasagi.jpn.org/
(※05)よしさん(2010):「群馬県鳴沢湖のプランクトン」http://wakasagi.jpn.org/
(※06)よしさん(2010):「群馬県榛名湖のプランクトン」http://wakasagi.jpn.org/
(※07)よしさん(2010):「群馬県榛名湖のセキショウモ」http://wakasagi.jpn.org/

採取:2010年11月18日(木)12:30 天候●雪のち○ 気温:9.7℃ (at13:00 kamisatomi) 水温:7.6℃
水位:満水 水の透明度:約2m 検鏡撮影:2010年11月19日(金)〜27日(土)
発表:2010年11月29日(月) 前牛久沼漁業協同組合顧問よしさん

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