スポンサードなし、よしさんの自費研究成果です

ワカサギふ化放流ノート
群馬県鳴沢湖のプランクトン
Microphotographs of the freshwater plankton of Lake Narusawa, gunma.
fig.01 鳴沢湖
fig.01 高崎市営ワカサギ釣り場 鳴沢湖

【群馬県鳴沢湖のプランクトン】
鳴沢湖(群馬県高崎市箕郷町)は、1938(昭和13)年着工・1950(昭和25)年竣工の灌漑用溜池である(※01・※06)。

【目的】
第15回ワカサギに学ぶ会の2日目(2010年11月18日)は、ワカサギ釣り場視察で視察地・鳴沢湖(高崎市)へ向った。
視察日現在の餌料プランクトン環境を明らかにする目的で、桟橋においてプランクトンを採取し(fig.15)、 現地でただちにホルマリン固定の上、持ち帰り検鏡観察したので報告する。

【結果】

fig.02 ケンミジンコ属
fig.02 ケンミジンコ属
Cyclopoida sp.
fig.03 ヤマトヒゲナガケンミジンコ
fig.03 ヤマトヒゲナガケンミジンコ
Eodiaptomus japonicus
fig.04 ゾウミジンコ
fig.04 ゾウミジンコ
Bosmina longirostris
fig.05 ハネウデワムシの一種
fig.05 ハネウデワムシの一種(卵)
Polyarthra remata
fig.06 ハネウデワムシの一種
fig.06 ハネウデワムシの一種
Polyarthra remata
fig.07 フクロワムシ
fig.07 フクロワムシ
Asplanchna priodonta
fig.08 少毛目ハルテリア属
fig.08 少毛目ハルテリア属
Halteria sp.(原生動物)
fig.09 不詳
fig.09 不詳
Unknown
fig.10 不詳
fig.10 不詳
Unknown
fig.11 不詳
fig.11 不詳
Unknown
fig.12 シネドラ属(珪藻)
fig.12 シネドラ属(珪藻)
Synedra acus
fig.13 デトリタス
fig.13 デトリタス Detritus
検鏡し撮影した顕微鏡写真を、上記に示す(fig.02-fig.13)、なお背景のグリッドは100μm間隔である。
今回のプランクトン調査結果の優占種は、ハネウデワムシ(fig.05-fig.06)であったが、個体数は少数に留まった。
他の種はさらに少なく、藍藻類のミクロキスティス、アナベナは出現しなかった。
まとめると、ミジンコ類3種・ワムシ類2種・原生動物2種等が確認された。

【考察】
一般釣り人のワカサギ釣果は、3〜数十尾、全長は3cm内外のヤセ型で(fig.14)、透視度2m以上の水面直下を遊泳するワカサギ多数を目視した。
2010年春は、諏訪湖産・群馬県田代湖産・自湖産の合計1億粒の放流実績であることを踏まえ、ワカサギの成長度(全長)を考察すると、 直感的に餌料不足が疑われた。
検鏡結果は、その懸念を裏付けるに足りる内容で、ワカサギの餌料プランクトンは質・量ともに貧弱であった。
ベントスの調査は実施していないが、11月18日現在のワカサギの成長度・他からは、優良な餌料生物としてのベントスは、 これもまた貧弱であろうと推定された。
従って、鳴沢湖における今季のワカサギは、少ない餌料プランクトン(原生動物も含めて)とデトリタスを奪い合い、 充分に成長できぬ状態と考えられる。

fig.14 鳴沢湖のワカサギ
fig.14 鳴沢湖のワカサギ

鳴沢湖の水量的なマテバラを、以下の条件で検討する。
■灌漑期間  04月01日〜09月30日の182日間(と仮定)
■計画配水量  0.417m3/s=36,028.8m3/day
■貯水量  1,283,417.5m3
すると、配水量を上回る導水路からの流入があり、配水は満水から35.6日もつことになり、仮定した全灌漑期間(約6ケ月)を通じ、鳴沢湖の水は5.1回転(杯分) 利用されていることが解かる。
仮定した全灌漑期間は、ワカサギふ化増殖(及び成長)期間とほぼ重複し、この期間に餌料プランクトンを含む用水が、 鳴沢湖5杯分置換されるとすれば、遊漁資源管理面で手痛い。
データ(※04)を更に蓄積し対策を決すべきであろうが、ワカサギの大型化を図るなら、餌料生物量に合わせ、放流受精卵数を減じる措置も止むを得まい。

fig.15 プランクトン採取中のよしさん
fig.15 プランクトン採取中のよしさん(撮影:古田ひろよし)

【謝辞】
プランクトン調査を快諾された高崎市箕郷支所産業課飯島 均課長に感謝します。 

【参考文献】
(※01)五味禮夫(1980):「鳴沢湖」『群馬の湖沼』,183-189pp,巻末27-28pp,上毛新聞社出版局,前橋, \1600
(※02)猪木正三(1981):「少毛類」『原生動物図鑑』,762-763pp,講談社,東京, \25800
(※03)水野寿彦・高橋永治(2000):『日本淡水動物プランクトン検索図説』,東海大学出版会(東京), \18900
(※04)久下敏宏・鈴木紘子他(2004):「農業用溜池(蟹沼,鳴沢湖)におけるプランクトン調査」『群馬県水産試験場研究報告』No.10, 21-23pp
(※05)よしさん(2010):「千葉県雄蛇ケ池の少毛目ハルテリア属」http://wakasagi.jpn.org/
(※06)よしさん(2010):「第15回ワカサギに学ぶ会参加報告」http://wakasagi.jpn.org/
(※07)よしさん(2010):「群馬県榛名湖のプランクトン」http://wakasagi.jpn.org/
(※08)よしさん(2010):「群馬県榛名湖のクロモ」http://wakasagi.jpn.org/
(※09)よしさん(2010):「群馬県榛名湖のセキショウモ」http://wakasagi.jpn.org/

採取:2010年11月18日(木)10:20 天候○◎のち● 気温:10.1℃ (at11:00 kamisatomi) 水温:11.8℃
水位:0.5m減水 水の透明度:約2m 検鏡撮影:2010年11月19日(金)〜25日(木)
発表:2010年11月29日(月) 前牛久沼漁業協同組合顧問よしさん
鳴沢湖ワカサギ釣り情報

http://wakasagi.jpn.org/ ワカサギふ化放流ノートトップページへ Copyright by yoshisan.