検鏡し撮影した顕微鏡写真を、上記に示す(fig.02-fig.13)、なお背景のグリッドは100μm間隔である。
今回のプランクトン調査結果の優占種は、ハネウデワムシ(fig.05-fig.06)であったが、個体数は少数に留まった。
他の種はさらに少なく、藍藻類のミクロキスティス、アナベナは出現しなかった。
まとめると、ミジンコ類3種・ワムシ類2種・原生動物2種等が確認された。
【考察】
一般釣り人のワカサギ釣果は、3〜数十尾、全長は3cm内外のヤセ型で(fig.14)、透視度2m以上の水面直下を遊泳するワカサギ多数を目視した。
2010年春は、諏訪湖産・群馬県田代湖産・自湖産の合計1億粒の放流実績であることを踏まえ、ワカサギの成長度(全長)を考察すると、
直感的に餌料不足が疑われた。
検鏡結果は、その懸念を裏付けるに足りる内容で、ワカサギの餌料プランクトンは質・量ともに貧弱であった。
ベントスの調査は実施していないが、11月18日現在のワカサギの成長度・他からは、優良な餌料生物としてのベントスは、
これもまた貧弱であろうと推定された。
従って、鳴沢湖における今季のワカサギは、少ない餌料プランクトン(原生動物も含めて)とデトリタスを奪い合い、
充分に成長できぬ状態と考えられる。
fig.14 鳴沢湖のワカサギ
鳴沢湖の水量的なマテバラを、以下の条件で検討する。
■灌漑期間 04月01日〜09月30日の182日間(と仮定)
■計画配水量 0.417m3/s=36,028.8m3/day
■貯水量 1,283,417.5m3
すると、配水量を上回る導水路からの流入があり、配水は満水から35.6日もつことになり、仮定した全灌漑期間(約6ケ月)を通じ、鳴沢湖の水は5.1回転(杯分)
利用されていることが解かる。
仮定した全灌漑期間は、ワカサギふ化増殖(及び成長)期間とほぼ重複し、この期間に餌料プランクトンを含む用水が、
鳴沢湖5杯分置換されるとすれば、遊漁資源管理面で手痛い。
データ(※04)を更に蓄積し対策を決すべきであろうが、ワカサギの大型化を図るなら、餌料生物量に合わせ、放流受精卵数を減じる措置も止むを得まい。
fig.15 プランクトン採取中のよしさん(撮影:古田ひろよし)
【謝辞】
プランクトン調査を快諾された高崎市箕郷支所産業課飯島 均課長に感謝します。
【参考文献】
(※01)五味禮夫(1980):「鳴沢湖」『群馬の湖沼』,183-189pp,巻末27-28pp,上毛新聞社出版局,前橋, \1600
(※02)猪木正三(1981):「少毛類」『原生動物図鑑』,762-763pp,講談社,東京, \25800
(※03)水野寿彦・高橋永治(2000):『日本淡水動物プランクトン検索図説』,東海大学出版会(東京), \18900
(※04)久下敏宏・鈴木紘子他(2004):「農業用溜池(蟹沼,鳴沢湖)におけるプランクトン調査」『群馬県水産試験場研究報告』No.10, 21-23pp
(※05)よしさん(2010):「千葉県雄蛇ケ池の少毛目ハルテリア属」http://wakasagi.jpn.org/
(※06)よしさん(2010):「第15回ワカサギに学ぶ会参加報告」http://wakasagi.jpn.org/
(※07)よしさん(2010):「群馬県榛名湖のプランクトン」http://wakasagi.jpn.org/
(※08)よしさん(2010):「群馬県榛名湖のクロモ」http://wakasagi.jpn.org/
(※09)よしさん(2010):「群馬県榛名湖のセキショウモ」http://wakasagi.jpn.org/
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