スポンサードなし、よしさんの自費研究成果です

ワカサギふ化放流ノート
師走の雄蛇ケ池における魚類餌料プランクトン調査報告(2010)
Fish bait charges plankton survey in the onjyaga-ike pond of the December(2010).
fig.00 雄蛇ケ池(ボートハウスツカモト桟橋)
fig.00 雄蛇ケ池(ボートハウスツカモト桟橋)

【師走の雄蛇ケ池における魚類餌料プランクトン調査報告(2010)】
雄蛇ケ池(千葉県東金市)は、1614(慶長19)年に完成した、大規模な灌漑用溜池である(※01)。

【目的】
漁業権設定のなされていない雄蛇ケ池では、法令に基づく魚類増殖義務がないこともあり、 魚類資源管理という概念は浸透しておらず、ましてや、雄蛇ケ池で自然産卵され、 ふ化した仔稚魚用の餌料プランクトン調査は、過去に見当たらないようだ。
よしさんは2010年07月、仔稚魚用餌料プランクトン環境を明らかにすることを目的に、 雄蛇ケ池のプランクトン調査を実施・報告している(※05)が、冬期の状況を把握するため、 2010年12月08日(水)、ボートハウスツカモト桟橋で(ボートを使用せず)プランクトンを採取し(fig.00 写真)、 現地でただちにホルマリン固定の上、持ち帰り検鏡観察したので報告する。

【結果】

fig.01 ケンミジンコ属
fig.01 ケンミジンコ属
Cyclopoida sp.
fig.02 ヒゲナガケンミジンコ属
fig.02 ヒゲナガケンミジンコ属
Diaptomidae sp.
fig.03 ヒゲナガケンミジンコ属
の精嚢
fig.03 ヒゲナガケンミジンコ属
の精嚢
Diaptomidae's seminal vesicle.
fig.04 ゾウミジンコ
fig.04 ゾウミジンコ
Bosmina longirostris
fig.05 ヒメネコゼミジンコ
fig.05 ヒメネコゼミジンコ
Ceriodaphnia sp.
fig.06 カブトミジンコ
fig.06 カブトミジンコ
Daphnia galeata
fig.07 ハネウデワムシの一種
fig.07 ハネウデワムシの一種
Polyarthra remata
fig.08 フクロワムシ
fig.08 フクロワムシ
Asplanchna priodonta
fig.09 テマリワムシ
fig.09 テマリワムシ
Conochilus hippocrepis
fig.10 テマリワムシ
fig.10 テマリワムシ
Conochilus hippocrepis
fig.11 カメノコウワムシ
fig.11 カメノコウワムシ
Keratella cochlearis
fig.12 トゲナガワムシ
fig.12 トゲナガワムシ Kellicottia longispina
fig.13 不詳
fig.13 不詳(ワムシ)
Unknown
fig.14 サヤツナギ属(原生動物)
fig.14 サヤツナギ属(原生動物)
Dinobryon sp.
fig.15 ツボカムリ属
fig.15 ツボカムリ属
Difflugia sp.(原生動物)
fig.16 不詳
fig.16 不詳(原生動物)
Unknown
fig.17 クンショウモ(緑藻)
fig.17 クンショウモ(緑藻)
Pedia strum sp.
検鏡し撮影した顕微鏡写真を、上記に示す(fig.01-fig.17)、なお背景のグリッドは100μm間隔である。
今回のプランクトン調査結果では、多種多量のプランクトンが観察された。
多く見られた種は、ヒゲナガケンミジンコ属(fig.02-fig.03)・ヒメネコゼミジンコ(fig.05)・フクロワムシ(fig.08) ・テマリワムシ(fig.09-fig.10)で、どれとも甲乙付けがたい優占度であった。
逆に少数派は、ハネウデワムシ(fig.07)・カメノコウワムシ(fig.11)・トゲナガワムシ(fig.12)で、他は中間的な出現頻度であった。
まとめると、ミジンコ類5種・ワムシ類6種・原生動物3種が観察された。
植物プランクトンの緑藻類では、特徴ある形のクンショウモ(fig.17)の出現を確認した。
本結果中のヒメネコゼミジンコについては「千葉県雄蛇ケ池のヒメネコゼミジンコ続報」(※07)に、 フクロワムシについては「千葉県雄蛇ケ池のフクロワムシが捕食したもの」(※08)に、 同日調査した藍藻類については「師走の雄蛇ケ池における藍藻類観察報告」(※09)に、 また、ボートハウスツカモト前水路の水草については「雄蛇ケ池前水路のコカナダモ」(※10)に、 それぞれ報告している。

【考察】
師走(12月)という時節柄、プランクトンの種は貧弱なものと予測していたが、結果は案に相違し、種の数・個体数ともに 驚くほど豊富であった。
12月に観察した動物プランクトン中、個体数が多数であった4種(前述)をサイズ別に見ると、 大型では、ヒゲナガケンミジンコ属(fig.02-fig.03)・フクロワムシ(fig.08)、中型では、ヒメネコゼミジンコ(fig.05)、 小型では、テマリワムシ(fig.09-fig.10)というように、大中小の各サイズが揃っていた。
先ごろ「千葉県雄蛇ケ池における11月のブルーギル稚魚」(※06)により、 雄蛇ケ池で自然産卵し、ふ化した再生産魚の事例を確認・報告したが、 口径の小さな稚魚の餌料に適する200μm以下のサイズのプランクトンも多量であることから、 12月の雄蛇ケ池は良好な餌料プランクトン環境にあると見られる。
ただ、ヒメネコゼミジンコ(fig.05)の一部が耐久卵(冬卵)を作っていたこと(※07に詳細報告)、 及び亀山湖(千葉県君津市)の深層で採取観察され(※04)、北方起源とされるトゲナガワムシ(fig.12)の出現から、 本格的な冬の兆しも垣間見るようであった。
夏季に観察されたオオアタマミジンコは姿を消し、圧倒的優占種であったボルボックス属(原生動物)も観察されなかった。

【謝辞】
プランクトン調査のため、桟橋利用を快諾されたボートハウスツカモトに感謝します。 

【参考文献】
(※01)よしさん(1996〜2010):雄蛇ケ池「ザ・レイクチャンプ」http://lake-champ.com
(※02)鈴木 實(1999):『車輪虫類同定学』1-151pp,三省堂(東京), \3800+税
(※03)水野寿彦・高橋永治(2000):『日本淡水動物プランクトン検索図説』1-551pp,東海大学出版会(東京), \18900
(※04)よしさん(2007):トゲナガワムシ「亀山湖(角柳)の動物プランクトン −表層と深層の解明−」http://wakasagi.jpn.org/
(※05)よしさん(2010):「雄蛇ケ池でふ化した仔稚魚用、餌料プランクトン調査報告(2010)」http://wakasagi.jpn.org/
(※06)よしさん(2010):「千葉県雄蛇ケ池における11月のブルーギル稚魚」http://wakasagi.jpn.org/
(※07)よしさん(2010):「千葉県雄蛇ケ池のヒメネコゼミジンコ続報」http://wakasagi.jpn.org/
(※08)よしさん(2010):「千葉県雄蛇ケ池のフクロワムシが捕食したもの」http://wakasagi.jpn.org/
(※09)よしさん(2010):「師走の雄蛇ケ池における藍藻類観察報告」http://wakasagi.jpn.org/
(※10)よしさん(2010):「雄蛇ケ池前水路のコカナダモ」http://wakasagi.jpn.org/

採取:2010年12月08日(水)13:00 天候◎○ 気温:13.0℃ (at13:00 mobara) 水温:11.6℃
水位:0.2m減水 水の透明度:約1m 検鏡撮影:2010年12月08日(水)〜12日(日)
発表:2010年12月19日(日)前・牛久沼漁業協同組合顧問よしさん
「ザ・レイクチャンプ」シークレット・ポイント0001 雄蛇ケ池
転載許可: 「雄蛇ヶ池バスフィッシングガイド」 に本稿転載を許可します。よしさん。

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