【千葉県雄蛇ケ池のヒメネコゼミジンコ(続報)】
雄蛇ケ池(千葉県東金市)は、1614(慶長19)年に完成した、大規模な灌漑用溜池である(※02)。
冬期の雄蛇ケ池において、魚類餌料プランクトン調査を実施したところ、ヒメネコゼミジンコ Ceriodaphnia pulchella を多数観察したので報告する。
メス♀の成体・第1触角・抱卵個体(fig.01〜fig.03)及び耐久卵抱卵個体・耐久卵(fig.04〜fig.05)を示す。
『中国動物誌 節足動物門甲殻綱淡水枝角類』(※01)に「種群3月始出現、10月消失、」(136-137pp)と記載され、
『日本淡水動物プランクトン検索図説』(※03)で「3月頃出現し10月頃に消滅する。単周期生殖で9−10月に雄が出現する。」(145pp)
と記述される。
本種は、2010年07月04日(日)にも雄蛇ケ池で観察された(※05)が、2010年は記録的高温の夏秋であったことを裏付けるように、
2010年12月08日(水)に至っても消滅せず、通常卵(夏卵)・耐久卵(冬卵)の抱卵個体が観察された。
オス♂の成体・第1触角(fig.06〜fig.07)及び・後腹部(fig.09)を示す。
ヒメネコゼミジンコ♂の第1触角(fig.07)は長く伸び、メス♀の第1触角(fig.02)は太く短い。
また、オス♂は第1胸脚の長い鞭毛に特徴がある(fig.06〜fig.07)。
高温側に異常気象の2010年は、「千葉県雄蛇ケ池における11月のブルーギル稚魚」(※06)により、ブルーギルの10月産卵が初めて確認され、
「師走の雄蛇ケ池における魚類餌料プランクトン調査報告(2010)」(※07)により、ヒメネコゼミジンコ・オス♂の出現も、2ケ月ほど後倒しになったことが明らかになった。
異常な高気温は、水中のプランクトンの生活史を塗り替えたと言える。
【謝辞】
プランクトン調査のため、桟橋利用を快諾されたボートハウスツカモトに感謝します。
【参考文献】
(※01)蒋燮治・堵南山(1979):『中国動物誌 節足動物門甲殻綱淡水枝角類』第1版,130-143pp,科学出版社(北京),3.00元
(※02)よしさん(1996〜2010):雄蛇ケ池「ザ・レイクチャンプ」http://lake-champ.com
(※03)水野寿彦・高橋永治(2000):『日本淡水動物プランクトン検索図説』1-551pp,東海大学出版会(東京), \18900
(※04)よしさん(2009):ネコゼミジンコ「亀山湖(F.コテージつばきもと桟橋)の動物プランクトンとワカサギ増殖事業への提言」http://wakasagi.jpn.org/
(※05)よしさん(2010):「雄蛇ケ池でふ化した仔稚魚用、餌料プランクトン調査報告(2010)」http://wakasagi.jpn.org/
(※06)よしさん(2010):「千葉県雄蛇ケ池における11月のブルーギル稚魚」http://wakasagi.jpn.org/
(※07)よしさん(2010):「師走の雄蛇ケ池における魚類餌料プランクトン調査報告(2010)」http://wakasagi.jpn.org/
(※08)よしさん(2010):「千葉県雄蛇ケ池のフクロワムシが捕食したもの」http://wakasagi.jpn.org/
(※09)よしさん(2010):「師走の雄蛇ケ池における藍藻類観察報告」http://wakasagi.jpn.org/
(※10)よしさん(2010):「雄蛇ケ池前水路のコカナダモ」http://wakasagi.jpn.org/
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