亀山湖・牛久沼は首都圏近郊のワカサギ釣り場をめざします

ワカサギふ化放流ノート
東京海洋大学「フィッシング・カレッジ2010」12月講座参加報告
"Fishing college 2010" December lecture participation report.
fig.01 開講挨拶をされる奥山文弥客員教授
fig.01 開講挨拶をされる奥山文弥客員教授

東京海洋大学(東京都港区港南)「フィッシング・カレッジ2010」12月講座は、2010年12月13日(月)、 7号館1階多目的交流研修室で開催され、よしさんも参加したので報告する。

はじめに、「フィッシング・カレッジ」を提唱し、主宰する東京海洋大学奥山文弥客員教授の開講挨拶と話題提供があった。
「フィッシング・カレッジ」は、釣りを通じて海洋河川環境に親しむ目的で、毎月1回開催されている参加費無料の 公開講座で、どなたでも聴講できる特徴がある。
講座のテーマと講師は都度変わり、様様な遊漁対象魚種が登場する。
さらに、講座の内容に連動した、講義参加者有志による釣行会も開催され、教室と実際のフィールドで水辺に親しめる ダブルエンジョイ仕掛けである。

続いて、12月講座(連続120分)本番となる。
今回のテーマは「冬の風物詩ワカサギの釣りの実情」、副題は「-ワカサギ釣りを楽しむために- ワカサギの生態から、漁業、そして ワカサギ釣りの裏舞台を探る」で、講師は、よしさんのワカサギに関する先生のお一人、東京海洋大学工藤貴史准教授であった。
レジメ項目は、以下の通り。
■熱いぞ!ワカサギ釣り!
■ワカサギの生態
■ワカサギと人のかかわり
■ワカサギ釣りが存立している理由
■移殖史と増殖効果
■人とワカサギと水の関係

fig.02 「ワカサギの生態」を説明される工藤貴史准教授
fig.02 「ワカサギの生態」を説明される工藤貴史准教授

「ワカサギは、遊漁対象魚として、数々の楽しみ方を提供してくれる魚種である」と、先ずワカサギ釣りの楽しみ方を 紹介頂いた。
曰く、氷上に穴を開け、釣る楽しみ
曰く、グループで楽しめるレジャー
曰く、釣った魚を食べる楽しみ
曰く、釣り具を手作りする楽しみ
曰く、(ボートに漁探装備で)群れを自分で探す楽しみ
曰く、手ぶらで出掛け、レンタル釣り具を使用して、ドーム船でポカポカしながら釣れる楽しみ
曰く、誰でも釣れるが、奥も深い楽しみ

セオリー通り、ワカサギの分類的位置は、硬骨魚綱(Osteichthyes)キュウリウオ目(Osmeriformes)キュウリウオ科(Osmeridae) ワカサギ属(Hypomesus)ワカサギ(nipponensis)である、と説明された。
そこから一層の深みに脱線し、「分類の混乱−H.nipponensisまでの道筋−」では、
1811年に、Pallas が、Salmo olidus とし
1925年に、Jordan & Hubbs が、Hypomesus olidus とし
1961年に、Hamada が、ワカサギを Hypomesus olidus, イシカリワカサギを Hypomesus sakhalinus, チカを Hypomesus japonicus とし
1963年に、Mcallister が、Hypomesus sakhalinus こそは Hypomesus olidus で、Hypomesus olidus は Hypomesus transpacificus nipponensis とし
1970年に、Kljukanov が、Hypomesus transpacificus nipponensis こそが Hypomesus nipponensis であると分類したが、 中国や韓国では今も H.olidus や H.transpacificus nipponensis が使用されており混乱に拍車をかけていると、さすがに児童・生徒級には難しいと思われる専門的なお話を伺った。

しかし、ワカサギに関するピンホール的で高度な脱線も、次の如き場面では、おおいに役立つからありがたいことだ。
米国の世界的魚類学者デビッド・スター・ジョーダン博士 David Starr Jordan は、1900(明治33)年魚類調査に来日し、後にはスタンフォード大学の総長となった。
よしさん架蔵の『FISHES』(※01)は、1925(大正14)年にアプレットン社から再出版された、伝説の魚類学者・ Jordan 博士の著書で、その The Grayling and the Smelt (347pp)に、 「The surf-smelt is marine, as is also a similar species, Hypomesus japonicus, in Japan. H.olidus, the pond-smelt of Alaska, Kamchatka, and Northern Japan, spawns in fresh-water ponds.」 と記載がある。
また、よしさん架蔵の『STUDIES ON THE GEOGRAPHICAL DISTRIBUTION OF FRESHWATER FISHES IN EASTERN ASIA』(※02)は、1936(昭和11)年、当時の 京城帝国大学森為三教授の著書で、その A catalogue of freshwater fishes of Chosen.(15pp)に、Osmeridae として、 「20 Hypomesus olidus (Pallas)」や「21 Hypomesus japonicus (Brevoort)」が記載されている。
これらを、講師の説明を頼りに読み解けば、 Jordan 博士は、「チカは日本の海岸にいる。ワカサギはアラスカ・カムチャツカ・北日本に分布し、淡水池で産卵する」とし、 森為三教授は、「(Chosen には)ワカサギとチカが分布する」と、述べたことが楽々と判明する。
ちなみに、東京海洋大学附属図書館蔵書に両書はなく、『FISHES』は、九大・京大・東大等国内大学図書館に18冊、 『STUDIES ON THE GEOGRAPHICAL DISTRIBUTION OF FRESHWATER FISHES IN EASTERN ASIA』は、九大・京大・北大等国内大学図書館に10冊が所蔵されているようだ。

fig.03 質疑に回答される工藤貴史准教授
fig.03 質疑に回答される工藤貴史准教授

その後も、硬軟とりどりの話が続き、章建ての的確さをはじめ、講師自身の調査資料を駆使し、高いレベルで内容を統一されていること等、 学生・社会人も充分満足できる「フィッシング・カレッジ」であった。
地の利に恵まれた首都圏の諸兄は、ぜひ機会をひねりだして、聴講されることをお勧めしたい。

【謝辞】
special thanks Mr S.watanabe and hi's Grandfather, yoshisan.
special thanks Mr T.shikano, yoshisan.

【参考文献】
(※01)David Starr Jordan(1925):
『FISHES』xiii+773pp,appleton版(New York, London),記述言語:英語,$7.50{原書:1907,Henry Holt版(USA)},
(※02)森 為三(1936):
『STUDIES ON THE GEOGRAPHICAL DISTRIBUTION OF FRESHWATER FISHES IN EASTERN ASIA』1+88pp,自費出版(京城),記述言語:英語

「フィッシング・カレッジ2010」12月講座:2010年12月13日(月)東京海洋大学にて
発表:2010年12月21日(火)
前・牛久沼漁業協同組合顧問よしさん
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