観察したプランクトンを上に示す(fig.01-fig.14)。
多く見られた種は、ヤマトヒゲナガケンミジンコ(fig.01)及びゾウミジンコ(fig.03)、並びにヒメネコゼミジンコ(fig.04)で、
小型種はテマリワムシ(fig.06)及び抱卵したハネウデワムシ(fig.07)を確認したが、個体数は少なかった。
今回は特殊条件下の調査であったが(後述)、合わせて、ミジンコ類3種・ワムシ類2種・原生動物3種・他の出現を確認した。
【考察】
調査日の未明より早朝にかけ、亀山湖周辺の天候は大雨で、F.コテージつばきもと近傍の観測地点「坂畑」における
6時間雨量は64.0mmに達し、湖面水位は常時満水位+0.3m程度まで上昇した。
その詳細を、table.01 「2010年12月22日坂畑の降雨量」に示す。
24時間区分 |
雨量(mm) |
01 |
13.0 |
02 |
9.5 |
03 |
7.5 |
04 |
5.0 |
05 |
27.0 |
06 |
2.0 |
6時間雨量 計 |
64.0 |
table.01 「2010年12月22日坂畑の降雨量」出典:銚子地方気象台
降雨による急激な増水という特殊条件下で、11:00にプランクトンを採取したためか、格別に優占種と呼ぶほどの種は、
存在せず、概ね前年同期の2009年12月22日(※04)調査結果と似た傾向となった。
大型のヤマトヒゲナガケンミジンコ(fig.01)、中型のゾウミジンコ(fig.03)、並びにヒメネコゼミジンコ(fig.04)、
小型のテマリワムシ(fig.06)及びハネウデワムシ(fig.07)と、各サイズのプランクトンが見られ、
魚類餌料プランクトン環境は、優良とは言えぬが良好と推察された。
ヤマトヒゲナガケンミジンコについては別報「亀山湖のヤマトヒゲナガケンミジンコ」(※07)に報告した。
【ワカサギ増殖事業への提言】
【結果】
よしさんの把握する、亀山湖のワカサギ釣り2010〜2011シーズンに関する情報は、以下の通りである。
●2010年03月12日 第1回受精卵受入・ふ化放流日未詳
●2010年04月06日 第2回受精卵受入・ふ化放流日未詳
●2010年04月17日 第3回受精卵受入・ふ化放流日未詳、計1億3000万粒ふ化放流のようである。
●2010年04月16日 優良な初期餌料環境を確認(※05 よしさん調査)
●2010年08月20日 餌料プランクトン不十分(※06 よしさん調査)
●2010年11月 道路下でワカサギ数10尾の釣果あり(ボートハウス松下)
●2010年12月22日 よしさんがF.コテージつばきもと桟橋で試し釣りするも釣果なし
●2010年12月22日 良好な魚類餌料プランクトン環境を確認(※本稿)
【考察】
上記を踏まえ、亀山湖の2010〜2011シーズンのワカサギ増殖を検討すると、
ワカサギそのものを確認した確実なマイルストーンは、2010年11月の釣果(数10尾)であるが、その後は、主要な釣果がないようだ。
一方、補助的マイルストーンづくりを目的とし、2010年04月16日に、よしさんが独自にワカサギの初期餌料プランクトンを調査した結果では、
「優良な初期餌料環境にあると思え、従って、タイミング的に第2回ふ化放流仔魚の生残率は、高い可能性がある。」と報告した(※05)。
さらに、2010年08月20日の餌料プランクトン調査結果では、「大型プランクトンは「大変に豊富」とまで言えず、
量的には、ある程度の魚類を養うに留まるものと考えられ、不足分は小型のテマリワムシで補うことになろう。」
と、報告している(※06)。
総合すると、今季の不振は「ワカサギふ化仔魚の大部分は放流後数日で(初期餌料不足により)餓死した」と見られ、
偶然のタイミングで初期餌料プランクトンに遭遇できたと推定される第2回ふ化放流仔魚は、幾分かの生残があったものの、流失・食害・
夏季の餌料逼迫等により減耗が大きくなった、との主要原因説明が合理的に成立する状況下にある。
受精卵のふ化率というレベルの原因ではないことが明確であるから、別産地の受精卵に変更しても状況の改善はあるまい。
【提言】
2007年02月〜2010年11月に至る4年間のながきに亘り、遊漁料を含む貴重な資金を毎年投入したにもかかわらず、
遊漁対象資源の作出・育成に4シーズン5年間連続失敗した事実は、猛反省されねばならない。
ワカサギ増殖事業は「ワカサギ受精卵ふ化放流作業」のみで完結すると、関係者が勘違いしている節が見受けられる。
平地に築造された浅く皿池状態の人造湖とは異なり、環境変動の激しい山間のV字谷峡谷に設けられた人造湖では、
多年にわたる事前調査の集積による漁場環境の季節的変動解析や、事後の追跡調査による確実なマイルストーンづくりによる
漁場管理は、安定した遊漁対象魚の作出・育成に欠かすことのできない重要事項であることを再認識すべきである。
世の中にあるデータの全てが即自己の漁場に適用できるとは限らず、他所の事例は亀山湖で通用しないこともある
と心得、一番信頼のおける亀山湖で集積・記録された漁場環境データに基づき、増殖事業にあたることが大切である。
同時に、ワカサギに学ぶ会・大学の公開講座等の機会を捕え、聴く耳を持ち、広く探り学び続ける向上心も不可欠であろう。
【参考文献】
(※01)よしさん(1996〜2010):亀山湖「ザ・レイクチャンプ」http://lake-champ.com
(※02)鈴木 實(1999):『車輪虫類同定学』1-151pp,三省堂(東京), \3800+税
(※03)水野寿彦・高橋永治(2000):『日本淡水動物プランクトン検索図説』1-551pp,東海大学出版会(東京), \18900
(※04)よしさん(2009):「亀山湖(F.コテージつばきもと桟橋)の動物プランクトンとワカサギ増殖事業への提言」(2009年12月)http://wakasagi.jpn.org/
(※05)よしさん(2010):「亀山湖(F.コテージつばきもと桟橋)の動物プランクトン」(2010年04月)http://wakasagi.jpn.org/
(※06)よしさん(2010):「千葉県亀山湖(F.コテージつばきもと桟橋)のプランクトン」(2010年08月)http://wakasagi.jpn.org/
(※07)よしさん(2010):「亀山湖のヤマトヒゲナガケンミジンコ」」http://wakasagi.jpn.org/
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