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ワカサギふ化放流ノート
千葉県雄蛇ケ池のアオコ現象(2011年夏季)
The waterbloom of the Onjyaga-ike pond, Chiba.(2011,Summer)
fig.0a 雄蛇ケ池のアオコ現象(弁天谷津西側)
fig.0a 雄蛇ケ池のアオコ現象(弁天谷津西側)

【千葉県雄蛇ケ池のアオコ現象(2011年夏季)】
雄蛇ケ池(千葉県東金市)は、1614(慶長19)年に完成した、大規模な灌漑用溜池である(※05)。

【経緯と目的】
千葉県雄蛇ケ池では、繁茂した水生植物の除去を目的に、2006年早春に草食魚ソウギョが放流された。
2007年に水生植物の減少が顕著になり、 2007年秋季までに、水生植物帯の約70%程度が消滅し、生態系に最大級の影響を与えた。
水生植物はソウギョに食害され、水中に排出されたソウギョの糞塊は微生物による分解変質を経て、 植物プランクトンに利用されやすい中間体となり、水面被植面積縮小による高水温と底泥巻上げを併せ、 ミクロキスティス・アナベナ・オシラトリア等の藍藻類大繁殖を助長し、重度で複合したアオコ現象を 毎年反復し招来させていることが、明らかになった(※08〜※19)。
換言すれば、雄蛇ケ池の水生植物はソウギョの糞塊となり、藍藻類異常繁殖を引起す主因になっている という相関関係が指摘できる。

2011年は、雄蛇ケ池の一部エリアで、06月09日・16日・23日・30日に、アオコ現象が発生していた(※21)。
よしさんは、2011年07月17日、雄蛇ケ池クリーンアップ大作戦へ参加し、アオコ現象で異臭が漂い、吐き気を催す水際のゴミを一人 黙々と拾いつつ、アオコ現象の状況確認を行い(fig.0a-0b 写真)、原因藍藻類解析のため弁天谷津で池水を採取し、持帰り検鏡した。

【結果】

fig.0b 雄蛇ケ池のアオコ現象
fig.0b 雄蛇ケ池のアオコ現象(見た目アオコ指標 レベル3〜4)
fig.01 ミクロキスティス
fig.01 ミクロキスティス
Microcystis Aeruginosa
エルギノーザ
fig.02 ミクロキスティス
fig.02 ミクロキスティス
Microcystis Novacekii
ノバセキ
fig.03 ミクロキスティス
fig.03 ミクロキスティス
Microcystis Wesenbergii
ベーゼンベルギー
fig.04 ミクロキスティス
fig.04 ミクロキスティス Microcystis Ichthyoblabe イクチオブラーベ
fig.05 ネンジュモ科
fig.05 Pseudanabaena mucicola (NAUMANN et HUBER-PESTALOZZI) BOURRELLY
糸状に散在する群体(和名なし・※06)
fig.06 アナベナ
fig.06 アナベナ スピロイデス クラッサ
Anabaena Spiroides var.crassa
fig.07 アナベナ
fig.07 アナベナ Anabaena macrospora マクロスポーラ
採取した池水を顕微鏡下で観察したところ、今回の水の華(アオコ現象)は、
藍藻のミクロキスティス エルギノーザ(fig.01)、 ミクロキスティス ノバセキ(fig.02)、 ミクロキスティス ベーゼンベルギー(fig.03)、 ミクロキスティス イクチオブラーベ(fig.04)、 ネンジュモ科の1種(fig.05)、 アナベナ スピロイデス クラッサ(fig.06)、 アナベナ マクロスポーラ(fig.07)、 の合計7種からなる複合現象であることが明らかになった。
国立環境研究所の提唱した「見た目アオコ現象」(※12)のレベルをあてはめると、 池全体・塚本ボート桟橋周辺は2〜3、堰堤北側・弁天谷津(東側・西側共)でレベル3〜4であった。

【考察】
今回の調査結果から(少なくとも)、2011年夏季は、2010年夏季と同様の原因藍藻類で 構成されるアオコ現象であることが判明した。
もし、藍藻類研究のエキスパートが観察したならば、上述の7種以外に原因を構成する種を指摘できる 可能性も残されていよう。
秋季に雄蛇ケ池の水温が下降開始するまでに「見た目アオコ現象」のレベルは、更に悪化する ものと考えられる。
同日調査した「千葉県雄蛇ケ池の魚類餌料プランクトン(2011年夏季)」については、別途報告している(※20)。

【謝辞】
雄蛇ケ池を通年観察し、都度状況を報告くださる「雄蛇ヶ池の話 〜蛇(じゃ)の道は蛇(へび)〜」主宰つかじーさんに感謝します。

【参考文献】
(※01)生嶋 功(1991):『水の華の発生機構とその制御』第2刷,183pp,東海大学出版会,\1648
(※02)朱 浩然(1991):『中国淡水藻志 第二巻 色球藻綱』第1版,vi+161pp,科学出版社(北京),13.00元
(※03)藤田善彦・大城 香(1993):『ラン藻という生きもの』第2刷,134pp,東京大学出版会,\1648
(※04)渡辺真利代・原田健一・藤木博太(1994):『アオコ−その出現と毒素−』257pp,東京大学出版会,\4738
(※05)よしさん(1996〜2011):雄蛇ケ池「ザ・レイクチャンプ」http://lake-champ.com
(※06)田中正明(2002):Pseudanabaena mucicola『日本淡水産動植物プランクトン図鑑』258-259pp,名古屋大学出版会(名古屋市), \9975
(※07)渡辺眞之(2007):『日本アオコ大図鑑』159pp,誠文堂新光社,\6000+税
(※08)よしさん(2006):「水の華シロコ現象とは(亀山湖における2005年の事例)」http://wakasagi.jpn.org/
(※09)よしさん(2006):「アオコとは(雄蛇ケ池における2006年の事例)」http://wakasagi.jpn.org/
(※10)よしさん(2007):「アオコとは(雄蛇ケ池における2007年の事例)」http://wakasagi.jpn.org/
(※11)よしさん(2008):「雄蛇ケ池のアオコ現象と原因藍藻類の変遷(2006〜2008年)」http://wakasagi.jpn.org/
(※12)よしさん(2008):「見た目アオコ指標と指標写真」http://wakasagi.jpn.org/
(※13)よしさん(2008):「雄蛇ケ池におけるアオコ現象と想定される毒性」http://wakasagi.jpn.org/
(※14)よしさん(2008):「これがソウギョの糞塊だ(千葉県雄蛇ケ池の事例)」http://wakasagi.jpn.org/
(※15)よしさん(2009):「雄蛇ケ池のアオコ現象、見た目と実態(2009年)」http://wakasagi.jpn.org/
(※16)よしさん(2009):「アオコ現象の千葉県雄蛇ケ池における捨水管理と結末」http://wakasagi.jpn.org/
(※17)よしさん(2009):「紅葉してもアオコ現象の千葉県雄蛇ケ池」http://wakasagi.jpn.org/
(※18)よしさん(2010):「アオコ現象連続発生の千葉県雄蛇ケ池」http://wakasagi.jpn.org/
(※19)よしさん(2010):「師走の雄蛇ケ池における、藍藻類観察報告」http://wakasagi.jpn.org/
(※20)よしさん(2011):「千葉県雄蛇ケ池の魚類餌料プランクトン(2011年夏季)」http://wakasagi.jpn.org/
(※21)つかじー(2011):「雄蛇ヶ池の話 〜蛇(じゃ)の道は蛇(へび)〜」http://ojyagaike.naturum.ne.jp/

採取:2011年07月17日(日)10:00 天候◎○ 気温:33℃ (at10:00 tanaka) 水温:30.8℃
水位:0.4m減水 水の透明度:不良 検鏡撮影:2011年07月20日(水)〜22日(金)
発表:2011年07月27日(水)前・牛久沼漁業協同組合顧問よしさん
「ザ・レイクチャンプ」シークレット・ポイント0001 雄蛇ケ池
転載許可: 「雄蛇ヶ池バスフィッシングガイド」 に本稿転載を許可します。よしさん。

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