検鏡し撮影した顕微鏡写真(fig.01-fig.06)を、上記に示す、なお背景のグリッドは100μm間隔である。
観察したワムシは、初めて見る種に思えたから、手元の資料3点(※04〜※06)で同定を試み、
Brachionus falcatus とした。
カマガタツボワムシは、「その先端が腹面に向って湾曲し鎌刀に似ているのが大きな特徴である」(※05)、
「2番目の2本がもっとも長く、鎌形をしている」(※07)と説明されること等から、和名に漢字表記を充てる場合は、鎌形壷輪虫となろう。
カマガタツボワムシの分布について、水野博士は1964年に『日本淡水プランクトン図鑑』(※01)で、「亜熱帯性で富栄養水域を好み、夏季出現する普通種」(54pp)
としていたが、1992年には『水野寿彦 私のスケッチ画集第U部』(※02)に、大阪北部(16pp)、タイ・カンパヤオミ湖(155pp)、
カンボジア・トンレサップ湖(161pp)、における観察事例スケッチを発表し、
その後、2000年刊行の『日本淡水動物プランクトン検索図説』(※05)では、「北海道から関西地方の各地・韓国・中国各地」に分布(210-211pp)とし、
初期の見解「亜熱帯性」は変更された。
田中博士は、2002年刊行の『日本淡水産動植物プランクトン図鑑』(※06)に、「全国の湖沼に広く分布するが、
やや南方性傾向を有する」(104-105pp)、とマイルドな記述をしている。
また、カマガタツボワムシの生息する水域の有機汚濁の指標性を、β-ms (β-中腐水性;少しよごれた水)と、田中博士は記している(※06・104pp)。
同日調査した「千葉県丑ケ池の藍藻類観察報告(2011年夏季)」(※10)に挙げた藍藻類御三家の存在(通常繁殖レベル)を踏まえつつも、
なお、カメガタツボワムシの存在(※09)と、カマガタツボワムシの存在(※08及び本報)を
併せ考察すると、丑ケ池の水生生物環境は最良ではないものの、かなり良好と考えられる。
カマガタツボワムシの魚類餌料的価値は、(ワムシ類栄養分析資料を持ち合わせないが)直感的に、ツボワムシと同等に思える。
【参考文献(架蔵書)】
(※01)水野寿彦(1964):「カマガタツボワムシ」『日本淡水プランクトン図鑑』54pp,保育社(大阪市)
(※02)水野寿彦(1992):『水野寿彦 私のスケッチ画集第U部』1-217pp,トンボ出版(大阪市), \3800
(※03)よしさん(1996〜2011):丑ケ池「ザ・レイクチャンプ」http://lake-champ.com
(※04)鈴木 實(1999):『車輪虫類同定学』1-151pp,三省堂(東京), \3800+税
(※05)水野寿彦・高橋永治(2000):「カマガタツボワムシ」『日本淡水動物プランクトン検索図説』210-211pp,東海大学出版会(東京), \18900
(※06)田中正明(2002):『日本淡水産動植物プランクトン図鑑』viii+584pp,名古屋大学出版会(名古屋市), \9975
(※07)滋賀の理科教材研究委員会(2005):「カマガタツボワムシ」『やさしい日本の淡水プランクトン図解ハンドブック』102pp,合同出版(東京), \3800+税
(※08)よしさん(2011):「千葉県丑ケ池の魚類餌料プランクトン(2011年夏季)」http://wakasagi.jpn.org/
(※09)よしさん(2011):「千葉県丑ケ池のカメガタツボワムシ」http://wakasagi.jpn.org/
(※10)よしさん(2011):「千葉県丑ケ池の藍藻類観察報告(2011年夏季)」http://wakasagi.jpn.org/
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