検鏡し撮影した顕微鏡写真の一部を、上記に示す(fig.01-fig.03)、なお背景のグリッドは100μm間隔である。
メス♀の全体形状はゾウミジンコに似るが、頸溝が深いこと、殻刺の無いこと、吻が長く伸び先端で左右に分かれた第1触角であること、
第1触角の下方(殻部方向)が切り株状突起であること、
やや不明瞭ながら六角形(ハニカム状)の殻紋が見られる等の、特徴が観察された。
【考察】
ゾウミジンコモドキと同定するために、『日本淡水動物プランクトン検索図説』(※04)を見ると、説明文は詳しいが、図は
簡略であり、図と実物を見比べて同定するにはやや不安を感じる(153-154pp)。
『日本淡水産動植物プランクトン図鑑』(※05)は、説明文がコンパクトで、図はモノクロ写真版3点が掲載されているものの、
写真の特性で線画のようなパンフォーカス表現ではないため、(本書のみを参照しての)細部の比較は困難であろう(204-205pp)。
『中国動物誌 節足動物門甲殻綱淡水枝角類』(※02)は、説明文が充分で、オス♂・メス♀とも詳細な図が添えられている(図113)。
よしさんの観察した部分も、「第二触角基部有一ケ小的突起」と記され、図に描かれ、実物と見比べて同定するに足る内容である(172-174pp)。
見当をつけた範囲内で、除外法を余儀なくされる上述の2書に代わる、種の特定可能な良書の出現を希望したい。
ゾウミジンコモドキは、日本各地・台湾・中華人民共和国(福建・湖南・湖北・四川・河北・丁寧・吉林・黒竜江・新疆)等、
世界に分布する(※02・※04・※05)が、
英国では特別な関心が無いようで、Cladocera をまとめた簡易な小冊子に、ゾウミジンコモドキの記載はなく省略されているのは惜しい(※01)。
今回調査した道仙田と同じ小貝川水系の、より上流に位置する牛久沼におけるゾウミジンコモドキの観察事例を、2008年に報告している(※08)ことを踏まえ、
本種ゾウミジンコモドキ以外にも牛久沼で生息確認された種が、道仙田に生息している可能性が指摘できる。
同日調査した「茨城県道仙田の魚類餌料プランクトン(2011年夏季)」「茨城県道仙田の藍藻類観察報告(2011年夏季)」及び
「茨城県中沼の魚類餌料プランクトン(2011年夏季)」並びに「茨城県中沼のアオコ現象(2011年夏季)」
については、別途報告している(※09〜※12)。
【参考文献(架蔵書)】
(※01)David Joseph Scourfield & John Philip Harding(1966):
『 A Key to the British Freshwater Cladocera, with notes on their ecology 』
Scientific Publication No.5, Freshwater Biological Association, reprinted 1994.(3rd ed.1966) 61pp,£0.50
(※02)蒋燮治・堵南山(1979):Bosminopsis『中国動物誌 節足動物門甲殻綱淡水枝角類』第1版,172-174pp,科学出版社(北京),3.00元
(※03)よしさん(1996〜2011):道仙田・中沼「ザ・レイクチャンプ」http://lake-champ.com
(※04)水野寿彦・高橋永治(2000):ゾウミジンコモドキ『日本淡水動物プランクトン検索図説』153-154pp,東海大学出版会(東京), \18900
(※05)田中正明(2002):ゾウミジンコモドキ『日本淡水産動植物プランクトン図鑑』204-205pp,名古屋大学出版会(名古屋市), \9975
(※06)よしさん(2006):「中沼の動物プランクトン(茨城県龍ヶ崎市)」http://wakasagi.jpn.org/
(※07)よしさん(2006):「道仙田の動物プランクトン(茨城県龍ヶ崎市)」http://wakasagi.jpn.org/
(※08)よしさん(2008):「牛久沼のゾウミジンコモドキ」http://wakasagi.jpn.org/
(※09)よしさん(2011):「茨城県道仙田の魚類餌料プランクトン(2011年夏季)」http://wakasagi.jpn.org/
(※10)よしさん(2011):「茨城県道仙田の藍藻類観察報告(2011年夏季)」http://wakasagi.jpn.org/
(※11)よしさん(2011):「茨城県中沼の魚類餌料プランクトン(2011年夏季)」http://wakasagi.jpn.org/
(※12)よしさん(2011):「茨城県中沼のアオコ現象(2011年夏季)」http://wakasagi.jpn.org/
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