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ワカサギふ化放流ノート
茨城県中沼の魚類餌料プランクトン(2011年夏季)
Fish bait charges plankton survey in the Nakanuma of the Summer(2011).
fig.00 茨城県中沼
fig.00 茨城県中沼

【茨城県中沼の魚類餌料プランクトン(2011年夏季)】
中沼(茨城県龍ケ崎市)は、小貝川破堤の跡と云われ、平野部の池沼として関東一の水深14mを持ち、水面標高は3mである(fig.00・※02)。

【目的】
夏期における中沼の魚類餌料プランクトン環境を明らかにすることを目的に、 2011年08月26日(金)、プランクトンを採取し(fig.00 写真)、 現地でただちにホルマリン固定の上、持ち帰り検鏡観察したので報告する。

【結果】

fig.01 ケンミジンコ属
fig.01 ケンミジンコ属
Cyclopoida sp.
fig.02 ゾウミジンコ
fig.02 ゾウミジンコ
Bosmina longirostris
fig.03 オオアタマミジンコ
fig.03 オオアタマミジンコ
Diaphanosoma dubia
MANUILIOVA
fig.04 ノープリウス
fig.04 ノープリウス幼生
Nauplius
fig.05 テマリワムシ
fig.05 テマリワムシ
Conochilus hippocrepis
fig.06 不詳
fig.06 不詳
Rotifera
fig.07 ツノオビムシ
fig.07 ツノオビムシ
Ceratium hirundinella
(渦鞭毛虫)
fig.08 不詳
fig.08 不詳(原生動物)
Halteria sp.
fig.09 ストロビリディウム属
fig.09 ストロビリディウム属の一種
Strobilidium sp.
fig.10 ツリガネムシの一種
fig.10 ツリガネムシの一種
Vorticella sp.
fig.11 クンショウモ(緑藻)
fig.11 クンショウモ(緑藻)
Pedia strum sp.
fig.12 不詳
fig.12 不詳
Unknown
fig.13 緑藻の一種
fig.13 緑藻の一種
Chlorophyceae
fig.14 緑藻の一種
fig.14 緑藻の一種
Chlorophyceae
fig.15 植物片
fig.15 植物片
Unknown
検鏡し撮影した顕微鏡写真を、上記に示す(fig.01-fig.15)、なお背景のグリッドは100μm間隔である。
今回のプランクトン調査結果では、多様なプランクトン及び水生昆虫(幼体)が観察された。
多く見られた種は、オオアタマミジンコ(fig.03)であった。
まとめると、ミジンコ類3種・ワムシ類2種・原生動物4種が観察された。
同日調査した藍藻類については「茨城県中沼のアオコ現象(2011年夏季)」(※09)に、報告している。

【考察】
中沼では、アオコ現象が発生しており、国立環境研究所の提唱した「見た目アオコ現象」(※08)のレベルをあてはめると、レベル2〜3弱であった(※09)。
2011年夏季の中沼は、藍藻類の異常繁殖があるものの、植物性プランクトン食魚(ヘラブナ)・雑食性魚類(マブナ・モツゴ等)には、 良好な魚類餌料プランクトン環境にあると見られる。

原生動物の内、繊毛虫類 CILIATEA・第2亜綱旋毛類 Spirotrichia・第2目少毛類 Oligotrichida・ケナシコムシ科(ストロビリディウム科) Strobilidiidae は、 中国名だと、旋毛亜綱・寡毛目・寡毛亜目・侠盗科・侠盗虫属・旋回侠盗虫 Strobilidium gyrans(Stokes,1887) のように記される(※01)。
『西蔵水生無脊椎動物』に記載された旋回侠盗虫(体長36〜48μm)の採取地を見ると、
★1973年07月22日 標高1600m 水温26.5℃ 察隅区水田(tb-73-010)
★1973年08月29日 標高3890m 水温19.0℃ 八宿自然区放牧地湖岸(tb-73-020)
★1974年08月04日 標高3540m 水温17.0℃ 西蔵東南地区小水塘(tb-74-035)
等とあり、ストロビリディウム属の一種 Strobilidium sp. (fig.09)は、中華人民共和国の高地からも採取されている(※01・6-9pp,202pp,図版XLIの357図)。
これらの事例から、中沼(標高3m・水温28.0℃)〜中国西蔵地区(標高3890m・水温17.0℃)に至る、 標高・水温に広く順応し生息していることが解かる。

中沼のプランクトン調査は、国・茨城県・大学等の機関により、相互に内容的な脈絡もなく、散発的に実施されており、 結果は其々の調査者の所属する特定の範囲内で発表・利用されるスタイルが、大部分を占めてきた。
換言すれば、地元でプランクトン採取をしながら、調査結果は地元(不特定多数)に還元されない不思議な事態 が常態化してきた。
その原因に、業績評価及び費用負担(旅費・経費・助成金)の関連もあろうかと推察される。
しかし、よしさんは、いつでも誰でも、特別な許可手続きなしに、利用者の端末から、閲覧できる形で、成果がインターネット上に公表され、 不特定多数が多様な目的を達成するための二次利用に、もっと無償提供されるべきと思う。

【参考文献(架蔵書)】
(※01)蒋燮治(1983):『西蔵水生無脊椎動物』第1版,vi+492pp,科学出版社(北京),80元
(※02)よしさん(1996〜2011):道仙田・中沼「ザ・レイクチャンプ」http://lake-champ.com
(※03)鈴木 實(1999):『車輪虫類同定学』1-151pp,三省堂(東京), \3800+税
(※04)水野寿彦・高橋永治(2000):『日本淡水動物プランクトン検索図説』1-551pp,東海大学出版会(東京), \18900
(※05)田中正明(2002):『日本淡水産動植物プランクトン図鑑』viii+584pp,名古屋大学出版会(名古屋市), \9975
(※06)よしさん(2006):「中沼の動物プランクトン(茨城県龍ヶ崎市)」http://wakasagi.jpn.org/
(※07)よしさん(2006):「道仙田の動物プランクトン(茨城県龍ヶ崎市)」http://wakasagi.jpn.org/
(※08)よしさん(2008):「見た目アオコ指標と指標写真」http://wakasagi.jpn.org/
(※09)よしさん(2011):「茨城県中沼のアオコ現象(2011年夏季)」http://wakasagi.jpn.org/
(※10)よしさん(2011):「茨城県道仙田の魚類餌料プランクトン(2011年夏季)」http://wakasagi.jpn.org/
(※11)よしさん(2011):「茨城県道仙田のゾウミジンコモドキ」http://wakasagi.jpn.org/
(※12)よしさん(2011):「茨城県道仙田の藍藻類観察報告(2011年夏季)」http://wakasagi.jpn.org/

採取:2011年08月26日(金)08:50 天候○◎ 気温:26.9℃ (at08:00 ryugasaki) 水温:28.0℃
水位:満水 水の透明度:不良(レベル2〜3弱) 検鏡撮影:2011年09月01日(木)〜04日(日)
発表:2011年09月07日(水)前・牛久沼漁業協同組合顧問よしさん
「ザ・レイクチャンプ」シークレット・ポイント0026 道仙田・中沼

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