検鏡し撮影した顕微鏡写真を、上記に示す(fig.01-fig.15)、なお背景のグリッドは100μm間隔である。
今回のプランクトン調査結果では、多様なプランクトン及び水生昆虫(幼体)が観察された。
多く見られた種は、オオアタマミジンコ(fig.03)であった。
まとめると、ミジンコ類3種・ワムシ類2種・原生動物4種が観察された。
同日調査した藍藻類については「茨城県中沼のアオコ現象(2011年夏季)」(※09)に、報告している。
【考察】
中沼では、アオコ現象が発生しており、国立環境研究所の提唱した「見た目アオコ現象」(※08)のレベルをあてはめると、レベル2〜3弱であった(※09)。
2011年夏季の中沼は、藍藻類の異常繁殖があるものの、植物性プランクトン食魚(ヘラブナ)・雑食性魚類(マブナ・モツゴ等)には、
良好な魚類餌料プランクトン環境にあると見られる。
原生動物の内、繊毛虫類 CILIATEA・第2亜綱旋毛類 Spirotrichia・第2目少毛類 Oligotrichida・ケナシコムシ科(ストロビリディウム科) Strobilidiidae は、
中国名だと、旋毛亜綱・寡毛目・寡毛亜目・侠盗科・侠盗虫属・旋回侠盗虫 Strobilidium gyrans(Stokes,1887) のように記される(※01)。
『西蔵水生無脊椎動物』に記載された旋回侠盗虫(体長36〜48μm)の採取地を見ると、
★1973年07月22日 標高1600m 水温26.5℃ 察隅区水田(tb-73-010)
★1973年08月29日 標高3890m 水温19.0℃ 八宿自然区放牧地湖岸(tb-73-020)
★1974年08月04日 標高3540m 水温17.0℃ 西蔵東南地区小水塘(tb-74-035)
等とあり、ストロビリディウム属の一種 Strobilidium sp. (fig.09)は、中華人民共和国の高地からも採取されている(※01・6-9pp,202pp,図版XLIの357図)。
これらの事例から、中沼(標高3m・水温28.0℃)〜中国西蔵地区(標高3890m・水温17.0℃)に至る、
標高・水温に広く順応し生息していることが解かる。
中沼のプランクトン調査は、国・茨城県・大学等の機関により、相互に内容的な脈絡もなく、散発的に実施されており、
結果は其々の調査者の所属する特定の範囲内で発表・利用されるスタイルが、大部分を占めてきた。
換言すれば、地元でプランクトン採取をしながら、調査結果は地元(不特定多数)に還元されない不思議な事態
が常態化してきた。
その原因に、業績評価及び費用負担(旅費・経費・助成金)の関連もあろうかと推察される。
しかし、よしさんは、いつでも誰でも、特別な許可手続きなしに、利用者の端末から、閲覧できる形で、成果がインターネット上に公表され、
不特定多数が多様な目的を達成するための二次利用に、もっと無償提供されるべきと思う。
【参考文献(架蔵書)】
(※01)蒋燮治(1983):『西蔵水生無脊椎動物』第1版,vi+492pp,科学出版社(北京),80元
(※02)よしさん(1996〜2011):道仙田・中沼「ザ・レイクチャンプ」http://lake-champ.com
(※03)鈴木 實(1999):『車輪虫類同定学』1-151pp,三省堂(東京), \3800+税
(※04)水野寿彦・高橋永治(2000):『日本淡水動物プランクトン検索図説』1-551pp,東海大学出版会(東京), \18900
(※05)田中正明(2002):『日本淡水産動植物プランクトン図鑑』viii+584pp,名古屋大学出版会(名古屋市), \9975
(※06)よしさん(2006):「中沼の動物プランクトン(茨城県龍ヶ崎市)」http://wakasagi.jpn.org/
(※07)よしさん(2006):「道仙田の動物プランクトン(茨城県龍ヶ崎市)」http://wakasagi.jpn.org/
(※08)よしさん(2008):「見た目アオコ指標と指標写真」http://wakasagi.jpn.org/
(※09)よしさん(2011):「茨城県中沼のアオコ現象(2011年夏季)」http://wakasagi.jpn.org/
(※10)よしさん(2011):「茨城県道仙田の魚類餌料プランクトン(2011年夏季)」http://wakasagi.jpn.org/
(※11)よしさん(2011):「茨城県道仙田のゾウミジンコモドキ」http://wakasagi.jpn.org/
(※12)よしさん(2011):「茨城県道仙田の藍藻類観察報告(2011年夏季)」http://wakasagi.jpn.org/
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