検鏡し撮影した顕微鏡写真を、上記に示す(fig.01-fig.04)、なお背景のグリッドは100μm間隔である。
今回の植物プランクトン調査結果の優占種は、アナベナ マクロスポーラ Anabaena macrospora (fig.01-fig.02)であったが、個体数は少数に留まった。
他の種は僅少を観察した。
【考察】
網走湖は「1976年(昭和51年)頃から富栄養化による藍藻類(Anabaena sp.)の異常繁殖、いわゆる水の華が見られるようになった」
と『北海道の湖沼』(※02)に記述され(399pp)、植物プランクトンは Melosira sp. Anabaena sp.が挙げられている(402pp)。
15年後の『北海道の湖沼』改訂版(※04)では、「塩化物イオン濃度が高くなりすぎると、Anabaena のアオコが発生しなくなることがわかった(日野,1992)。」
、つまり、塩化物イオン濃度が高くなりすぎると、Anabaena は異常繁殖しない、という藍藻類(Anabaena sp.)の生態が解明されたことが紹介されている(28pp)。
見学日は厳冬期であるにも拘らず、藍藻類のアナベナ マクロスポーラ Anabaena macrospora (fig.01-fig.02)が観察されたこと、
及びクロオコックス属(fig.03)・シネドラ属(fig.04)が同時に存在したことから、網走湖は富栄養湖であることを再確認させられた。
網走湖は、地元の水産業で主要漁場を占めるに留まらず、ワカサギ増殖分野においては、国内湖沼への受精卵供給マザーレイクとして
重要な位置にあることを踏まえ、二重底の動向・青潮予防・富栄養化の監視等を関係者に切にお願いしたい。
fig.05 網走湖のワカサギ氷下漁
しかし、Melosira sp.(珪藻)、クサリケイソウ(Bacillaria paradoxa)は、未観察であった。
【謝辞】
プランクトン採取にあたり、漁場の利用を快諾された西網走漁業協同組合にお礼申し上げます。
また、有益な助言を頂いた、北海道立総合研究機構水産研究本部さけます・内水面水産試験場道東内水面
グループ真野修一研究主査に感謝します。
【参考文献(架蔵書)】
(※01)山路 勇(1979):『日本海洋プランクトン図鑑』,保育社(大阪), \4000
(※02)坂田康一ほか(1990):網走湖『北海道の湖沼』,399-402pp,北海道公害防止研究所,札幌,
(※03)渡辺真利代・原田健一・藤木博太(1994):『アオコ−その出現と毒素−』257pp,東京大学出版会,\4738
(※04)北海道環境科学研究センター(2005):網走湖『北海道の湖沼』改訂版,26-31pp,北海道環境科学研究センター,札幌, \2370
(※05) 渡辺眞之(2007):『日本アオコ大図鑑』159pp,誠文堂新光社,\6000+税
(※06)よしさん(2012):「第16回ワカサギに学ぶ会参加報告」http://wakasagi.jpn.org/
(※07)よしさん(2012):「網走湖のワカサギ氷下漁見学」http://wakasagi.jpn.org/
(※08)よしさん(2012):「網走湖の動物プランクトン」http://wakasagi.jpn.org/
(※09)よしさん(2012):「分水嶺から網走へ」http://lake-champ.com
(※10)よしさん(2012):「氷雪の支笏湖をJeep Grand Cherokeeでドライブ」http://lake-champ.com
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