スポンサードなし、よしさんの自費研究成果です

ワカサギふ化放流ノート
千葉県雄蛇ケ池の魚類餌料プランクトン(2012年夏季)
Fish bait charges plankton survey in the onjyaga-ike pond of the Summer(2012).
fig.00 雄蛇ケ池(ボートハウスツカモト桟橋)
fig.00 雄蛇ケ池(ボートハウスツカモト桟橋)

【千葉県雄蛇ケ池の魚類餌料プランクトン(2012年夏季)】
雄蛇ケ池(千葉県東金市)は、1614(慶長19)年に完成した、大規模な灌漑用溜池である(※01)。

【目的】
漁業権設定のなされていない雄蛇ケ池では、法令に基づく魚類増殖義務がないこともあり、 魚類資源管理という概念は浸透しておらず、ましてや、雄蛇ケ池で自然産卵され、 ふ化した仔稚魚用の餌料プランクトン調査は、過去に見当たらないようだ。
よしさんは近年、仔稚魚用餌料プランクトン環境を明らかにすることを目的に、 雄蛇ケ池のプランクトン調査を継続実施・報告してきた(※05〜※09)が、 2012年07月15日(日)、毎年恒例の雄蛇ケ池クリーンアップ大作戦に参加した機会をとらえ、 夏期の状況を把握するため、ボートハウスツカモト桟橋で(ボートを使用せず)プランクトンを採取し(fig.00 写真)、 現地でただちにホルマリン固定の上、持ち帰り検鏡観察したので報告する。

【結果】

fig.01 ケンミジンコ属
fig.01 ケンミジンコ属
Cyclopoida sp.
fig.02 ヒゲナガケンミジンコ属
fig.02 ヒゲナガケンミジンコ属
Diaptomidae sp.
fig.03 ゾウミジンコ
fig.03 ゾウミジンコ
Bosmina longirostris
fig.04 ヒメネコゼミジンコ
fig.04 ヒメネコゼミジンコ
Ceriodaphnia sp.
fig.05 マルミジンコ
fig.05 マルミジンコ
Chydorus Sphaericus
fig.06 フクロワムシ
fig.06 フクロワムシ
Asplanchna priodonta
fig.07 ツノワムシ
fig.07 ツノワムシ
Schizocerca diversicornis
fig.08 カメノコウワムシ
fig.08 カメノコウワムシ
Keratella cochlearis
fig.09 ハネウデワムシの一種
fig.09 ハネウデワムシの一種
Polyarthra remata
fig.10 トゲナガワムシ
fig.10 トゲナガワムシ Kellicottia longispina
fig.11 ツメナガネズミワムシ
fig.11 ツメナガネズミワムシ Trichocerca cylindrica
fig.12 テマリワムシ
fig.12 テマリワムシ
Conochilus hippocrepis
fig.13 ミジンコワムシ
fig.13 ミジンコワムシ
Hexarthra mira
fig.14 ホソアシアメーバ
fig.14 ホソアシアメーバ
Vexillifera ambulacrallis
fig.15 ツノオビムシ
fig.15 ツノオビムシ Ceratium hirundinella(渦鞭毛虫)
検鏡し撮影した顕微鏡写真を、上記に示す(fig.01-fig.15)、なお背景のグリッドは100μm間隔である。
今回のプランクトン調査結果では、多様なプランクトンが観察された。
藍藻類を除いた優占種は、ツノオビムシ(fig.15)で、次いで多く見られた種は、ケンミジンコ属(fig.01)・ヒメネコゼミジンコ(fig.04)であった。
まとめると、ミジンコ類5種・ワムシ類8種・原生動物2種が観察された。
同日調査した「千葉県雄蛇ケ池のアオコ現象(2012年夏季)」(※10)、 「千葉県雄蛇ケ池における藍藻類の変遷(2006〜2012)」(※11)、「雄蛇ケ池のミジンコワムシ(2012)」(※12)、「雄蛇ケ池のハンゲショウ(2012)」(※13)、 は別途報告している。

【考察】
プランクトンを採取した桟橋附近も、アオコ現象が拡散しており、 国立環境研究所の提唱した「見た目アオコ現象」のレベルをあてはめると、レベル2〜3であった(※10)。
桟橋の水面直下に、全長5cm程度のオオクチバス稚魚を数尾目視した。
本年05月に多く見られた、ボルボックス属は消滅し、テマリワムシ(fig.12)は群体を解いて散っていた。
05月に多数派第2グループであったツノオビムシ(fig.15)は、上述の通り優占種になった。
2012年夏季の雄蛇ケ池は、良好な餌料プランクトン環境にあると見られる。

しかし、雄蛇ケ池の魚類相を見渡すと、動物プランクトンを主たる餌料として利用する魚種(稚魚・未成魚)は限られ 、植物プランクトン⇒動物プランクトン⇒× の箇所で食物連鎖が極端に狭まり、辛うじてブルーギル(主として全長≒50mm未満まで) により動物プランクトンが摂餌され、⇒魚食魚(ナマズ・ライギョ・オオクチバス)に利用される状況と推測される。
水生植物が壊滅的状態にあり、池中に何もない皿池に変化した雄蛇ケ池では、雑食性魚類のマブナ(キンブナ・ギンブナ)・モツゴ(クチボソ) 等が姿を消し(漁業権なし=魚類増殖義務がない=放流はなされない)、それを餌料とする鳥類のサギ(アマサギ・コサギ・チュウサギ・アオサギ)・カワセミ等も激減し、 カワウも寄り付かない現状が、今後も数年から10年近く続くのではあるまいかと残念だ。

【謝辞】
プランクトン調査のため、桟橋利用を快諾されたボートハウスツカモトに感謝します。 

【参考文献】よしさん架蔵書
(※01)よしさん(1996〜2012):雄蛇ケ池「ザ・レイクチャンプ」http://lake-champ.com
(※02)鈴木 實(1999):『車輪虫類同定学』1-151pp,三省堂(東京), \3800+税
(※03)水野寿彦・高橋永治(2000):『日本淡水動物プランクトン検索図説』1-551pp,東海大学出版会(東京), \18900
(※04)田中正明(2002):『日本淡水産動植物プランクトン図鑑』viii+584pp,名古屋大学出版会(名古屋市), \9975
(※05)よしさん(2010):「雄蛇ケ池でふ化した仔稚魚用、餌料プランクトン調査報告(2010)」http://wakasagi.jpn.org/
(※06)よしさん(2010):「師走の雄蛇ケ池における魚類餌料プランクトン調査報告(2010)」http://wakasagi.jpn.org/
(※07)よしさん(2011):「千葉県雄蛇ケ池の魚類餌料プランクトン(2011年夏季)」http://wakasagi.jpn.org/
(※08)よしさん(2011):「千葉県雄蛇ケ池の魚類餌料プランクトン(2011年師走)」http://wakasagi.jpn.org/
(※09)よしさん(2012):「皐月の雄蛇ケ池における、魚類餌料プランクトン(2012)」http://wakasagi.jpn.org/
(※10)よしさん(2012):「千葉県雄蛇ケ池のアオコ現象(2012年夏季)」http://wakasagi.jpn.org/
(※11)よしさん(2012):「千葉県雄蛇ケ池における藍藻類の変遷(2006〜2012)」http://wakasagi.jpn.org/
(※12)よしさん(2012):「雄蛇ケ池のミジンコワムシ(2012)」http://wakasagi.jpn.org/
(※13)よしさん(2012):「古典籍で味わう雄蛇ケ池のハンゲショウ(三白草)」http://wakasagi.jpn.org/

採取:2012年07月15日(日)07:50 天候○ 気温:28.9℃ (at08:00 Mobara) 水温:27.6℃
水位:満水 水の透明度:不良 検鏡撮影:2012年07月17日(火)〜21日(土)
発表:2012年07月26日(木)前・牛久沼漁業協同組合顧問よしさん
「ザ・レイクチャンプ」シークレット・ポイント0001 雄蛇ケ池

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