【目的】 漁業権設定のなされていない雄蛇ケ池では、法令に基づく魚類増殖義務がないこともあり、 魚類資源管理という概念は浸透しておらず、ましてや、雄蛇ケ池で自然産卵され、 ふ化した仔稚魚用の餌料プランクトン調査は、過去に見当たらないようだ。 よしさんは近年、仔稚魚用餌料プランクトン環境を明らかにすることを目的に、 雄蛇ケ池のプランクトン調査を継続実施・報告してきた(※05〜※09)が、 2012年07月15日(日)、毎年恒例の雄蛇ケ池クリーンアップ大作戦に参加した機会をとらえ、 夏期の状況を把握するため、ボートハウスツカモト桟橋で(ボートを使用せず)プランクトンを採取し(fig.00 写真)、 現地でただちにホルマリン固定の上、持ち帰り検鏡観察したので報告する。
【結果】
【考察】 プランクトンを採取した桟橋附近も、アオコ現象が拡散しており、 国立環境研究所の提唱した「見た目アオコ現象」のレベルをあてはめると、レベル2〜3であった(※10)。 桟橋の水面直下に、全長5cm程度のオオクチバス稚魚を数尾目視した。 本年05月に多く見られた、ボルボックス属は消滅し、テマリワムシ(fig.12)は群体を解いて散っていた。 05月に多数派第2グループであったツノオビムシ(fig.15)は、上述の通り優占種になった。 2012年夏季の雄蛇ケ池は、良好な餌料プランクトン環境にあると見られる。
しかし、雄蛇ケ池の魚類相を見渡すと、動物プランクトンを主たる餌料として利用する魚種(稚魚・未成魚)は限られ 、植物プランクトン⇒動物プランクトン⇒× の箇所で食物連鎖が極端に狭まり、辛うじてブルーギル(主として全長≒50mm未満まで) により動物プランクトンが摂餌され、⇒魚食魚(ナマズ・ライギョ・オオクチバス)に利用される状況と推測される。 水生植物が壊滅的状態にあり、池中に何もない皿池に変化した雄蛇ケ池では、雑食性魚類のマブナ(キンブナ・ギンブナ)・モツゴ(クチボソ) 等が姿を消し(漁業権なし=魚類増殖義務がない=放流はなされない)、それを餌料とする鳥類のサギ(アマサギ・コサギ・チュウサギ・アオサギ)・カワセミ等も激減し、 カワウも寄り付かない現状が、今後も数年から10年近く続くのではあるまいかと残念だ。
【謝辞】 プランクトン調査のため、桟橋利用を快諾されたボートハウスツカモトに感謝します。
【参考文献】よしさん架蔵書 (※01)よしさん(1996〜2012):雄蛇ケ池「ザ・レイクチャンプ」http://lake-champ.com (※02)鈴木 實(1999):『車輪虫類同定学』1-151pp,三省堂(東京), \3800+税 (※03)水野寿彦・高橋永治(2000):『日本淡水動物プランクトン検索図説』1-551pp,東海大学出版会(東京), \18900 (※04)田中正明(2002):『日本淡水産動植物プランクトン図鑑』viii+584pp,名古屋大学出版会(名古屋市), \9975 (※05)よしさん(2010):「雄蛇ケ池でふ化した仔稚魚用、餌料プランクトン調査報告(2010)」http://wakasagi.jpn.org/ (※06)よしさん(2010):「師走の雄蛇ケ池における魚類餌料プランクトン調査報告(2010)」http://wakasagi.jpn.org/ (※07)よしさん(2011):「千葉県雄蛇ケ池の魚類餌料プランクトン(2011年夏季)」http://wakasagi.jpn.org/ (※08)よしさん(2011):「千葉県雄蛇ケ池の魚類餌料プランクトン(2011年師走)」http://wakasagi.jpn.org/ (※09)よしさん(2012):「皐月の雄蛇ケ池における、魚類餌料プランクトン(2012)」http://wakasagi.jpn.org/ (※10)よしさん(2012):「千葉県雄蛇ケ池のアオコ現象(2012年夏季)」http://wakasagi.jpn.org/ (※11)よしさん(2012):「千葉県雄蛇ケ池における藍藻類の変遷(2006〜2012)」http://wakasagi.jpn.org/ (※12)よしさん(2012):「雄蛇ケ池のミジンコワムシ(2012)」http://wakasagi.jpn.org/ (※13)よしさん(2012):「古典籍で味わう雄蛇ケ池のハンゲショウ(三白草)」http://wakasagi.jpn.org/