採取した池水を顕微鏡下で観察したところ、今回の水の華(アオコ現象)は、
藍藻のアナベナ マクロスポーラ(fig.01-02)の異常繁殖を主因とし、
ミクロキスティス エルギノーザ(fig.03)、
ミクロキスティス ベーゼンベルギー(fig.04)、
ミクロキスティス ビリディス(fig.05)、
の合計4種からなる複合現象であることが明らかになった。
優占種のアナベナ マクロスポーラ(fig.01-02)は、以下の特徴を持ち、主として『日本アオコ大図鑑』(※07)の「アナベナ属の種の検索表」(64-65pp)に従って追うと、
アキネートは異質細胞から栄養細胞4個離れた位置に形成されている→「アキネートは異質細胞から栄養細胞3個以上離れた位置に形成される」
⇒⇒アキネートは長い楕円形である→「アキネートは円筒形または長い楕円形」⇒⇒トリコームは螺旋を巻かず、不規則に曲がらず、絡み合わず、直線的である→「トリコームは直線的」
⇒⇒細胞は円筒形でなく、球形である→「細胞は球形ないし樽型」⇒⇒細胞の直径は8.3μm(100μm中に12個=8.3μm・fig.02)、アキネートの直径は20μmである(fig.02)→
「細胞の直径は5−10μm、アキネートの直径は15−20μm」= Anabaena macrospora と導かれた。
同時に「Anabaena macrospora Klebahn」(同書・76-77pp・※07)及び「日本産 Anabaena の種の検索表」(同書・137-139pp・※07)の記載及び掲載写真を注意して
確認し、アナベナマクロスポーラ Anabaena macrospora と同定した。
国立環境研究所の提唱した「見た目アオコ現象」(※12)のレベルをあてはめると、
池北側全体・塚本ボート桟橋周辺・堰堤共にレベル2〜3であった。
【考察】
今回採取のアナベナマクロスポーラ(fig.01-02)中、アキネートを持つ個体は僅少で、直径測定にやや不安が残る。
例年夏季の藍藻類は、多種複合型で発生し、どの種も平均的に繁殖する夏と、ある種のみが異常繁殖する夏が、
見受けられる傾向にある。
近年の雄蛇ケ池において、アナベナマクロスポーラ(fig.01-02)は、2007年夏季に初出現し、
以降は断続して観察されたが、優占種となるのは今夏(2012年)が初めてであり、変遷の詳細は別途報告する。
同日調査した「千葉県雄蛇ケ池の魚類餌料プランクトン(2012年夏季)」(※24)、
「千葉県雄蛇ケ池における藍藻類の変遷(2006〜2012)」(※25)、「雄蛇ケ池のミジンコワムシ(2012)」(※26)、
「雄蛇ケ池のハンゲショウ(2012)」(※27)、については別途報告している。
【謝辞】
藍藻類調査のため、桟橋利用を快諾されたボートハウスツカモトに感謝します。
【参考文献】(よしさん架蔵書)
(※01)生嶋 功(1991):『水の華の発生機構とその制御』第2刷,183pp,東海大学出版会,\1648
(※02)朱 浩然(1991):『中国淡水藻志 第二巻 色球藻綱』第1版,vi+161pp,科学出版社(北京),13.00元
(※03)藤田善彦・大城 香(1993):『ラン藻という生きもの』第2刷,134pp,東京大学出版会,\1648
(※04)渡辺真利代・原田健一・藤木博太(1994):『アオコ−その出現と毒素−』257pp,東京大学出版会,\4738
(※05)よしさん(1996〜2012):雄蛇ケ池「ザ・レイクチャンプ」http://lake-champ.com
(※06)田中正明(2002):Anabaena macrospora 『日本淡水産動植物プランクトン図鑑』260-261pp,名古屋大学出版会(名古屋市), \9975
(※07)渡辺眞之(2007):『日本アオコ大図鑑』159pp,誠文堂新光社,\6000+税
(※08)よしさん(2006):「水の華シロコ現象とは(亀山湖における2005年の事例)」http://wakasagi.jpn.org/
(※09)よしさん(2006):「アオコとは(雄蛇ケ池における2006年の事例)」http://wakasagi.jpn.org/
(※10)よしさん(2007):「アオコとは(雄蛇ケ池における2007年の事例)」http://wakasagi.jpn.org/
(※11)よしさん(2008):「雄蛇ケ池のアオコ現象と原因藍藻類の変遷(2006〜2008年)」http://wakasagi.jpn.org/
(※12)よしさん(2008):「見た目アオコ指標と指標写真」http://wakasagi.jpn.org/
(※13)よしさん(2008):「雄蛇ケ池におけるアオコ現象と想定される毒性」http://wakasagi.jpn.org/
(※14)よしさん(2008):「これがソウギョの糞塊だ(千葉県雄蛇ケ池の事例)」http://wakasagi.jpn.org/
(※15)よしさん(2009):「雄蛇ケ池のアオコ現象、見た目と実態(2009年)」http://wakasagi.jpn.org/
(※16)よしさん(2009):「アオコ現象の千葉県雄蛇ケ池における捨水管理と結末」http://wakasagi.jpn.org/
(※17)よしさん(2009):「紅葉してもアオコ現象の千葉県雄蛇ケ池」http://wakasagi.jpn.org/
(※18)よしさん(2010):「アオコ現象連続発生の千葉県雄蛇ケ池」http://wakasagi.jpn.org/
(※19)よしさん(2010):「師走の雄蛇ケ池における、藍藻類観察報告」http://wakasagi.jpn.org/
(※20)よしさん(2011):「千葉県雄蛇ケ池のアオコ現象(2011年夏季)」http://wakasagi.jpn.org/
(※21)よしさん(2011):「雄蛇ケ池におけるソウギョの糞塊」http://wakasagi.jpn.org/
(※22)よしさん(2011):「師走の雄蛇ケ池における、藍藻類観察報告(2011)」http://wakasagi.jpn.org/
(※23)よしさん(2012):「皐月の雄蛇ケ池における、藍藻類観察報告(2012)」http://wakasagi.jpn.org/
(※24)よしさん(2012):「千葉県雄蛇ケ池の魚類餌料プランクトン(2012年夏季)」http://wakasagi.jpn.org/
(※25)よしさん(2012):「千葉県雄蛇ケ池における藍藻類の変遷(2006〜2012)」http://wakasagi.jpn.org/
(※26)よしさん(2012):「雄蛇ケ池のミジンコワムシ(2012)」http://wakasagi.jpn.org/
(※27)よしさん(2012):「古典籍で味わう雄蛇ケ池のハンゲショウ(三白草)」http://wakasagi.jpn.org/