【結果】
2006年早春にソウギョが放流され、直後の2006年夏季から2012年夏季までの、7年間に亘る
藍藻類継続調査結果(※08〜※23)を踏まえ、「千葉県雄蛇ケ池における藍藻類の変遷(2006〜2012)」を作成し、上に示す(table.01)。
さらに、雄蛇ケ池における代表的な藍藻類を、以下に示す(fig.01-06)。
fig.01 ミクロキスティス
エルギノーザ
Microcystis Aeruginosa
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fig.02 ミクロキスティス
ベーゼンベルギー
Microcystis Wesenbergii
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fig.03 ミクロキスティス
イクチオブラーベ
Microcystis Ichthyoblabe
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fig.04 ミクロキスティス
ビリディス
Microcystis viridis
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fig.05 アナベナ
スピロイデス
Anabaena Spiroides var.crassa
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fig.06 アナベナの一種
Anabaena.sp
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【考察01 アオコ現象の主因となる藍藻類の変遷の周期性】
例年夏季の藍藻類は、多種複合型で発生し(2007〜2012、table.01)、どの種も平均的に繁殖する夏と(2007・2009・2011、table.01)、
ある種のみが異常繁殖する夏が(2006・2008・2010・2012、table.01)、周期性を持って隔年交互に発生する特徴が明らかになった。
また同時に、数年間連続し優占種として君臨する強烈な種はないものの、異常繁殖し優占する種は、隔年ごとに交代することも、明らかになった(table.01)。
しかし、隔年交互に発生し、隔年ごとに交代する原因は不明で、雄蛇ケ池における藍藻類のさらなる継続調査が求められる。
2006年に初出現した Microcystis Aeruginosa は、一定レベルを保ちながら、夏季・冬季を通じた全期間(2006〜2012年)観察されており、
次いで出現頻度の高い種は、Microcystis Wesenbergii 及び Microcystis Ichthyoblabe であった(table.01)。
【考察02 ソウギョ放流と藍藻類の異常繁殖の相関】
ソウギョ放流と藍藻類の異常繁殖について、現象の時系列を以下に示す。
●2005年までの雄蛇ケ池は、オオカナダモ・ヒシモ・ハス・ヨシ等の水生植物が繁茂した、
濁りのない「クリアー」な水色の好釣り場であった。
●現場関係者の要望により、2006年早春に東金市がソウギョ(未成魚200尾)を放流し
「藻の繁茂防止を目的にソウギョを放流しています」と看板を設置したことは記憶に新しい。
●ところが「藻だけ」のはずが案に相違し、「藻」(狭義のオオカナダモ・ヒシモ)に限らず、ヨシ・ハス等の水生植物もソウギョに喰われ、
皿池状の池底は「丸坊主」状態になった(2006〜2008年)。
●ソウギョに喰われた水生植物は、糞塊となって池中に拡散した(2006〜2012年)。
●ソウギョによる水面の被植激減が、夏季全層一律水温上昇を加速した(2006〜2012年)。
●底泥中に蓄積された既存栄養塩及びソウギョの糞塊は、高水温により再溶解・分解が促進され、藍藻類の異常繁殖に加担した(2006〜2012年)。
●ソウギョは、草本類に留まらず、木本類のクヌギ(雄花及び新葉)も喰うようになった(2011〜2012年)。
現象の時系列と、上に示した「千葉県雄蛇ケ池における藍藻類の変遷(2006〜2012)」(table.01)を併せ見ると、
雄蛇ケ池の水生植物はソウギョに食害されて糞塊となり、ソウギョの糞塊は藍藻類異常繁殖の主たるトリガーになり、
ソウギョ放流と藍藻類の異常繁殖(アオコ現象)は相関関係にあると指摘できよう。
「ソウギョに藻を喰わせて解決の図式」を描いた、ソウギョ放流推進派の短絡的目論みは崩れ、
雄蛇ケ池を取り巻く生態系を壊滅的に破壊しただけに留まらず、雄蛇ケ池を藍藻類に起因する既知と未知の
水溶性毒素の一大供給源と化したようで誠に残念である。
【謝辞】
雄蛇ケ池を観察し旬の情報を提供くださる「雄蛇ヶ池バスフィッシングガイド」主宰つかじーさんに感謝します。
【参考文献】(よしさん架蔵書)
(※01)生嶋 功(1991):『水の華の発生機構とその制御』第2刷,183pp,東海大学出版会,\1648
(※02)朱 浩然(1991):『中国淡水藻志 第二巻 色球藻綱』第1版,vi+161pp,科学出版社(北京),13.00元
(※03)藤田善彦・大城 香(1993):『ラン藻という生きもの』第2刷,134pp,東京大学出版会,\1648
(※04)渡辺真利代・原田健一・藤木博太(1994):『アオコ−その出現と毒素−』257pp,東京大学出版会,\4738
(※05)よしさん(1996〜2012):雄蛇ケ池「ザ・レイクチャンプ」http://lake-champ.com
(※06)田中正明(2002):Anabaena macrospora 『日本淡水産動植物プランクトン図鑑』260-261pp,名古屋大学出版会(名古屋市), \9975
(※07)渡辺眞之(2007):『日本アオコ大図鑑』159pp,誠文堂新光社,\6000+税
(※08)よしさん(2006):「水の華シロコ現象とは(亀山湖における2005年の事例)」http://wakasagi.jpn.org/
(※09)よしさん(2006):「アオコとは(雄蛇ケ池における2006年の事例)」http://wakasagi.jpn.org/
(※10)よしさん(2007):「アオコとは(雄蛇ケ池における2007年の事例)」http://wakasagi.jpn.org/
(※11)よしさん(2008):「雄蛇ケ池のアオコ現象と原因藍藻類の変遷(2006〜2008年)」http://wakasagi.jpn.org/
(※12)よしさん(2008):「見た目アオコ指標と指標写真」http://wakasagi.jpn.org/
(※13)よしさん(2008):「雄蛇ケ池におけるアオコ現象と想定される毒性」http://wakasagi.jpn.org/
(※14)よしさん(2008):「これがソウギョの糞塊だ(千葉県雄蛇ケ池の事例)」http://wakasagi.jpn.org/
(※15)よしさん(2009):「雄蛇ケ池のアオコ現象、見た目と実態(2009年)」http://wakasagi.jpn.org/
(※16)よしさん(2009):「アオコ現象の千葉県雄蛇ケ池における捨水管理と結末」http://wakasagi.jpn.org/
(※17)よしさん(2009):「紅葉してもアオコ現象の千葉県雄蛇ケ池」http://wakasagi.jpn.org/
(※18)よしさん(2010):「アオコ現象連続発生の千葉県雄蛇ケ池」http://wakasagi.jpn.org/
(※19)よしさん(2010):「師走の雄蛇ケ池における、藍藻類観察報告」http://wakasagi.jpn.org/
(※20)よしさん(2011):「ソウギョはクヌギも食べている」http://wakasagi.jpn.org/
(※21)よしさん(2011):「千葉県雄蛇ケ池のアオコ現象(2011年夏季)」http://wakasagi.jpn.org/
(※22)よしさん(2011):「雄蛇ケ池におけるソウギョの糞塊」http://wakasagi.jpn.org/
(※23)よしさん(2011):「師走の雄蛇ケ池における、藍藻類観察報告(2011)」http://wakasagi.jpn.org/
(※24)よしさん(2012):「皐月の雄蛇ケ池における、藍藻類観察報告(2012)」http://wakasagi.jpn.org/
(※25)よしさん(2012):「ソウギョはクヌギも食べている(その2)」http://wakasagi.jpn.org/
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