fig.05 『頭註国訳本草綱目』の「蜆」
タイワンシジミの原産地域における分布は、黒竜江・吉林・河北・河南・山東・安徽・浙江・江西・湖北・湖南・
福建・台湾・広東・広西・雲南・四川・山西・甘粛・内蒙古等である(※03)。
原産地域由来の旧文献の釈名に、時珍曰く「隋書に『劉臻の父顯は蜆を嗜み、蜆を呼んで扁螺といった
』とある。」と見える(fig.04-fig.05 ※01・※02)のが、「蜆」(タイワンシジミ)の古い記録のひとつと思われ、
はるかな隋時代(580〜618)より食用され、現在まで続くことが解かる。
さらに、原産地域では「蜆」の「肉」と「殻」それぞれの薬効も古くから知られ、記録され、利用されてきた。
日本では外来種として、タイワンシジミの和名を付し、文献にも排他的記述が散見されるが、原産地域では、これこそ
在来種の「蜆」であることに留意し、「タイワンシジミは下水の流入するような劣悪な環境下に生息する」如き、
種に対する誹謗中傷的表現は厳に慎むべきである。
【04 生息地状況・他】
本稿掲載タイワンシジミの、生息地状況(千葉県東金市田中地先の農業用水路)を以下に示す(fig.06)。
fig.06 生息地状況
農業用水路の中(fig.07)及び上流側・雄蛇ケ池で観察された一個体(fig.08)を以下に示す。
fig.07 農業用水路の中 fig.08 雄蛇ケ池で観察された一個体(写真提供:つかじー氏)
雄蛇ケ池を釣りと自然観察のホームグランドとし、永年にわたり観察を続けている、つかじー氏(ハンドルネーム)
より、同氏主宰ブログの写真借用につき快諾を得て、「fig.08 雄蛇ケ池で観察された一個体」を転載使用した。
【原記事はこちらです 雄蛇ヶ池の話 〜蛇の道は蛇〜 By つかじー】
前段で「ほぼ同定した」と、歯切れの悪い表現をしたが、専門家の間の「マシジミ」と「タイワンシジミ」の分類が未確定であることがその理由で、
「雄蛇ケ池で観察された一個体」(fig.08)についても、殻の外観的にはタイワンシジミである可能性が高いように考えられる。
「マシジミ」は、環境省レッドデータブックで準絶滅危惧(NT)に指定され、千葉県では重要保護生物(B)・絶滅危惧T類とされる等、
全国16都県で指定されている。
危惧の主原因は、「タイワンシジミ」の精子を受けた「マシジミ」の産出する子貝は、全て「タイワンシジミ」となる「雄性発生」
(精子側の遺伝子のみが遺伝する)にあり、本報事例を踏まえ、雄蛇ケ池を含めた周辺地域は既にタイワンシジミが侵入し繁殖していることも懸念されるため、
タイワンシジミの分布確認詳細調査が望まれる。
【謝辞】
★「雄蛇ケ池のシジミ」観察事例を報告頂き、写真1点の転載も快諾くださった、つかじーさんに感謝します。
【参考文献】よしさん架蔵書
(※01)原著:李 時珍(1653,承応癸巳02年):「蜆」『本草綱目』和本,四十六巻介之二,武林錢衛蔵版,外題:新刻本草綱目,見返し:重訂本草綱目,
(※02)原著:趙 学敏,監修校註:白井光太郎,訳:鈴木眞海(1932):「蜆」『頭註国訳本草綱目』第十一冊,春陽堂(東京市),非売品,
(※03)主編:姜■梧(1983):「河蜆」『中国薬用動物志』第二冊,第1版第1次印刷,57-58pp,天津科学技術出版社(天津市),7.50元,
(※04)主編:賈玉海(1996):「河蜆」『藍色本草・中国海洋湖沼薬物学』北京第1版第1次印刷,122pp+079図,学苑出版社(北京),65.00元,
(※05)よしさん(1996〜2012):「雄蛇ケ池」『ザ・レイクチャンプ』http://lake-champ.com
(※06)愛知県(2009):「マシジミ Corbicula leana Prime」『レッドデータブックあいち2009動物編』愛知県,pdfファイル
(※07)つかじー(2012):『雄蛇ヶ池の話 〜蛇の道は蛇〜』http://ojyagaike.naturum.ne.jp/e1497837.html
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