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ワカサギふ化放流ノート
千葉県三直大堰の植物プランクトン(2012年夏季)
Phytoplankton (the 2012 summer) of the Minou reservoir, Chiba pref.
【千葉県三直大堰の植物プランクトン(2012年夏季)】
三直大堰(千葉県君津市)は、1869(明治02)年以前に完成した、小規模な貯水池(潅漑用)である(※03)。

【目的】
漁業権設定のない三直大堰では、法令に基づく魚類増殖義務がないこともあり、 魚類資源管理という概念はなく、魚類餌料プランクトン調査は、過去に見当たらないようだ。
よしさんは、三直大堰の夏季の魚類餌料プランクトン環境を明らかにすることを目的に、 2012年08月30日(木)、三直大堰でプランクトンを採取し、 現地でただちにホルマリン固定の上、持ち帰り検鏡観察したので報告する。

【結果】

fig.01 ミクロキスティス(藍藻)
fig.01 ミクロキスティス(藍藻) Microcystis firma(Kutzing)Schmidle
fig.02 セネデスムス(緑藻)
fig.02 セネデスムス(緑藻)イカダモ Scenedesmus sp.
検鏡し撮影した顕微鏡写真を、上記に示す(fig.01-fig.02)、なお背景のグリッドは100μm間隔である。
今回のプランクトン調査結果では、藍藻類・緑藻類が観察され、多くみられた種は、アオミドロ属(緑藻・未掲載)であった。
同日調査した「千葉県三直大堰の動物プランクトン(2012年夏季)」(※07)は別途報告している。

【考察】
2012年夏季の三直大堰は、ほぼ満水で、2003年当時に比し、ハス等の被植がなくなり、水面は堰堤から中央部までオープンであった(※07・fig.00)。
浅い溜池であること及び水面に被植がないことに加え、夏季の時節柄が助勢し、三直大堰の 南西部尺八附近の表層水温は33.4℃であった。

ミクロキスティス(fig.01・藍藻)は、一先ず、ミクロキスティス イクチオブラーベ Microcystis Ichthyoblabe と考えられたが、 『日本アオコ大図鑑』(※05)の写真46〜48(16pp)及び Microcystis firma(Kutzing)Schmidle (52pp)にも似ている。
従って同定には、 Microcystis firma(Kutzing)Schmidle に関する他の資料でクロスチェックする必要がある。
フランスの『Les Algues d'eau Douce』Tome 3,Les Algues bleues et rouges,(※01)では、 Microcystis firma(Kutzing)Schmidle の 記述がない(314-315pp)。
『中国淡水藻志第2巻 色球藻綱』(※02)の色球藻科 Chroococcaceae 微嚢藻属 Microcystis Kutz. に、Microcystis firma(Breb. et Lemm)Schmidle を引いた記述があり(15pp)、図版II:4 (107pp,中段)も示されている。
「群体小、褐色、細胞球形、直径0.8〜2.3μm」、生境は「漂浮生活静止的水体中」、分布は中国において「黒竜江、陜西(西安)」国外では 徳国、非洲」とあるが、図版は細胞がギッシリと密ではなく、疎らに描かれており、本稿個体とは大分相違する。
やはり、主には『日本アオコ大図鑑』(※05)の写真47(16pp)が本稿個体と近似すること、及び補足的には、その採取地が手賀沼(1995年07月・千葉県)で、 分布が同県内であることから、ミクロキスティス(fig.01・藍藻)は、 Microcystis firma(Kutzing)Schmidle と推定しておく。

三直大堰への新たな富栄養の流入、及び(又は)強風による底泥の攪拌作用、等の環境条件が揃えば、 ミクロキスティス(fig.01・藍藻)は、異常繁殖し、アオコ現象を引き起こす可能性がある。
三直大堰の北岸は水生植物が残されており、魚類の生息環境は高いレペルではないものの、保たれていると思われる。

【参考文献】よしさん架蔵書
(※01)Pierre Bourrelly(1985):『Les Algues d'eau Douce』Tome 3,Les Algues bleues et rouges,Les Eugleniens, Peridiniens et Cryptomonadines, 606pp,Societe Nouvelle des Editions Boubee(Paris),98.00ユーロ
(※02)朱 浩然:主編(1991):『中国淡水藻志第2巻 色球藻綱』第1版,161pp,科学出版社(北京・中国),13.00元
(※03)よしさん(1996〜2012):三直大堰「ザ・レイクチャンプ」http://lake-champ.com
(※04)田中正明(2002):『日本淡水産動植物プランクトン図鑑』viii+584pp,名古屋大学出版会(名古屋市), \9975
(※05)渡辺眞之(2007):『日本アオコ大図鑑』159pp,誠文堂新光社,\6000+税
(※06)よしさん(2011):「師走の雄蛇ケ池における、藍藻類観察報告(2011)」http://wakasagi.jpn.org/
(※07)よしさん(2012):「千葉県三直大堰の動物プランクトン(2012年夏季)」http://wakasagi.jpn.org/

採取:2012年08月30日(木)11:00 三直大堰 天候○ 水温:33.4℃
水位:ほぼ満水 水の透明度:やや不良 検鏡撮影:2012年09月08日(土)〜11日(火)
発表:2012年09月21日(金)前・牛久沼漁業協同組合顧問よしさん
「ザ・レイクチャンプ」シークレット・ポイント0105 三直大堰

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