検鏡し撮影した顕微鏡写真を、上記に示す(fig.01-fig.02)、なお背景のグリッドは100μm間隔である。
今回のプランクトン調査結果では、藍藻類・緑藻類が観察され、多くみられた種は、アオミドロ属(緑藻・未掲載)であった。
同日調査した「千葉県三直大堰の動物プランクトン(2012年夏季)」(※07)は別途報告している。
【考察】
2012年夏季の三直大堰は、ほぼ満水で、2003年当時に比し、ハス等の被植がなくなり、水面は堰堤から中央部までオープンであった(※07・fig.00)。
浅い溜池であること及び水面に被植がないことに加え、夏季の時節柄が助勢し、三直大堰の
南西部尺八附近の表層水温は33.4℃であった。
ミクロキスティス(fig.01・藍藻)は、一先ず、ミクロキスティス イクチオブラーベ Microcystis Ichthyoblabe と考えられたが、
『日本アオコ大図鑑』(※05)の写真46〜48(16pp)及び Microcystis firma(Kutzing)Schmidle (52pp)にも似ている。
従って同定には、 Microcystis firma(Kutzing)Schmidle に関する他の資料でクロスチェックする必要がある。
フランスの『Les Algues d'eau Douce』Tome 3,Les Algues bleues et rouges,(※01)では、 Microcystis firma(Kutzing)Schmidle の
記述がない(314-315pp)。
『中国淡水藻志第2巻 色球藻綱』(※02)の色球藻科 Chroococcaceae 微嚢藻属 Microcystis Kutz. に、Microcystis firma(Breb. et Lemm)Schmidle
を引いた記述があり(15pp)、図版II:4 (107pp,中段)も示されている。
「群体小、褐色、細胞球形、直径0.8〜2.3μm」、生境は「漂浮生活静止的水体中」、分布は中国において「黒竜江、陜西(西安)」国外では
徳国、非洲」とあるが、図版は細胞がギッシリと密ではなく、疎らに描かれており、本稿個体とは大分相違する。
やはり、主には『日本アオコ大図鑑』(※05)の写真47(16pp)が本稿個体と近似すること、及び補足的には、その採取地が手賀沼(1995年07月・千葉県)で、
分布が同県内であることから、ミクロキスティス(fig.01・藍藻)は、 Microcystis firma(Kutzing)Schmidle と推定しておく。
三直大堰への新たな富栄養の流入、及び(又は)強風による底泥の攪拌作用、等の環境条件が揃えば、
ミクロキスティス(fig.01・藍藻)は、異常繁殖し、アオコ現象を引き起こす可能性がある。
三直大堰の北岸は水生植物が残されており、魚類の生息環境は高いレペルではないものの、保たれていると思われる。
【参考文献】よしさん架蔵書
(※01)Pierre Bourrelly(1985):『Les Algues d'eau Douce』Tome 3,Les Algues bleues et rouges,Les Eugleniens,
Peridiniens et Cryptomonadines, 606pp,Societe Nouvelle des Editions Boubee(Paris),98.00ユーロ
(※02)朱 浩然:主編(1991):『中国淡水藻志第2巻 色球藻綱』第1版,161pp,科学出版社(北京・中国),13.00元
(※03)よしさん(1996〜2012):三直大堰「ザ・レイクチャンプ」http://lake-champ.com
(※04)田中正明(2002):『日本淡水産動植物プランクトン図鑑』viii+584pp,名古屋大学出版会(名古屋市), \9975
(※05)渡辺眞之(2007):『日本アオコ大図鑑』159pp,誠文堂新光社,\6000+税
(※06)よしさん(2011):「師走の雄蛇ケ池における、藍藻類観察報告(2011)」http://wakasagi.jpn.org/
(※07)よしさん(2012):「千葉県三直大堰の動物プランクトン(2012年夏季)」http://wakasagi.jpn.org/
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