スポンサードなし、よしさんの自費研究成果です

ワカサギふ化放流ノート
千葉県亀山湖のアオコ現象(2012年)
Algae phenomenon (2012) of the Lake Kameyama, Chiba.
fig.00 亀山湖(湖畔の宿つばきもと桟橋)
fig.00 亀山湖(湖畔の宿つばきもと桟橋)
【千葉県亀山湖のアオコ現象(2012年)】
亀山湖(千葉県君津市)は、1979(昭和54)年に完成した、千葉県最大の人造湖である(fig.00 写真・※02)。

【目的】
よしさんは近年、魚類餌料プランクトン環境を明らかにすることを目的に、亀山湖のプランクトン調査を実施・報告してきた。
2012年08月31日(金)、湖畔の宿つばきもと桟橋で(ボートを使用せず)プランクトンを採取し、 現地でただちにホルマリン固定の上、持ち帰り保管し、このほど検鏡観察したので報告する。

【結果】

fig.01 ボルボックス属
fig.01 ボルボックス属 Volvox sp.
fig.02 ボルボックス属
fig.02 ボルボックス属 Volvox sp.
fig.03 ボルボックス属
fig.03 ボルボックス属 Volvox sp.
fig.04 ボルボックス属
fig.04 ボルボックス属 Volvox sp.
fig.05 ボルボックス属
fig.05 ボルボックス属 Volvox sp.
fig.06 ボルボックス属
fig.06 ボルボックス属 Volvox sp.
fig.07 ボルボックス属
fig.07 ボルボックス属 Volvox sp.
fig.08 ボルボックス属
fig.08 ボルボックス属 Volvox sp.
検鏡し撮影した顕微鏡写真を、上記に示す(fig.01-fig.08)、なお背景のグリッドは100μm間隔である。
2012年夏季の亀山湖は、4mほど減水しており、原生動物のボルボックス属 Volvox sp. を原因とする アオコ現象が発生し、その程度は、国立環境研究所の提唱した「見た目アオコ現象」(※05)のレベルをあてはめると、 湖畔の宿つばきもと桟橋周辺はレベル3であった(fig.00)。
同日調査した「千葉県亀山湖の魚類餌料プランクトン(2012年夏季)」(※10)は別途報告している。

【考察】
採取したプランクトンを顕微鏡下で観察したところ、今回の水の華(アオコ現象)は、 原生動物のボルボックス属 Volvox sp.(fig.01-fig.08 , 群体)の異常繁殖が原因であることが明らかになった。

アオコ現象を発生させる原因(主因)プランクトンの変遷を解明するため、 亀山湖における2006年〜2012年のプランクトン継続調査結果の中から、関係報 に基づき、時系列に一覧できるよう集計した「亀山湖におけるアオコ現象の原因プランクトン(2006〜2012年)」 を表01に示す(table.01)。


優占種プランクトン 備 考
2012 volvox sp. 上流の笹川湖は Anabaena macrospora に
Chroococcus sp. Microcystis Aeruginosa を
加えた3種複合のアオコ現象発生(※08)
2011 Anabaena sp.  
2010 Anabaena macrospora Microcystis 3種を加えた4種複合現象
2009 不明  
2008 Anabaena sp.  
2007 Anabaena sp.  
2006 Anabaena sp. Anabaena 2種を加えた3種複合現象 
table.01 亀山湖におけるアオコ現象の原因プランクトン(2006〜2012年)

「亀山湖におけるアオコ現象の原因プランクトン(2006〜2012年)」(table.01)を見ると、亀山湖で毎年 アオコ現象を引き起こしている原因プランクトンは、藍藻のアナベナ属であることが判る。

『日本アオコ大図鑑』(※04)の「11章 アオコ構成種の地理的分布の傾向」に、渡辺眞之博士は 「アオコ構成種の地理的分布の特徴について、北海道や東北地方といった寒冷な地域のアオコでは アナベナとアファニゾメノンが主体で、関東以西の地域のアオコはミクロキスチスが主体であると述べてきた。」と記され(120-122pp)、 「ミクロキスチスの採集を行った湖沼・池」(128-129pp)、「アナベナの採集を行った湖沼・池」(132-133pp)と共に、 分布概要を示されたが、同時に「日本列島のアオコ関係の情報と知見は極めて不十分である。」とも述べている。
よしさんの調査で、アナベナ属の異常繁殖を主因としてアオコ現象が発生する近隣湖沼は、 笹川湖(千葉県小櫃川水系・人造湖)、雄蛇ケ池(千葉県真亀川水系・人造湖)、丑ケ池(千葉県作田川水系・人造湖)等で あることが判明している。

亀山湖に生息するボルボックス属を2006年から継続観察したところ、2012年05月は、ボルボックス属が優占 する状況に至ったことを報告している(※06)が、アオコ現象は未発生であった。
ところが、2012年夏季の亀山湖では、原生動物の一種ボルボックス属(fig.01-fig.08 , 群体)が異常繁殖し、 湖水を「ボルボックスグリーン」色に染め(fig.00)、いわゆるアオコ現象を引き起こした。
ボルボックス属(fig.01-fig.08)は、淡水域で水の華を引き起こすことが、 有賀祐勝(東京水産大学名誉教授)により、既に指摘されている(第7章水産学,「C.おもな赤潮原生動物」,※01,189-190pp,)。
しかしなぜ、亀山湖において、ほぼ6年間(2006〜2011)アオコ現象の原因プランクトンであり続けたアナベナ属を押しのけ、 ボルボックス属の大繁殖をもたらしたのか、アナベナ属及びボルボックス属の生態の詳細、及び両者競合の構造 は不明で今後解明されるテーマのひとつであろう。
また、上流の笹川湖におけるアオコ現象の原因プランクトンがアナベナ属であるのに対し(2012年夏季・※09)、 笹川湖の直下に位置し、笹川湖の放流水を受け入れる亀山湖におけるアオコ現象の原因プランクトンが、 ボルボックス属である(2012年夏季・本報)ことはなぜか、についても同様である。

【謝辞】
プランクトン調査のため、桟橋利用を快諾された湖畔の宿つばきもとに感謝します。

【参考文献】よしさん架蔵書
(※01)猪木正三(1981):ボルボックス目『原生動物図鑑』,284-285pp,講談社,東京, \25800
(※02)よしさん(1996〜2012):亀山湖「ザ・レイクチャンプ」http://lake-champ.com
(※03)田中正明(2002):『日本淡水産動植物プランクトン図鑑』viii+584pp,名古屋大学出版会(名古屋市), \9975
(※04)渡辺眞之(2007):『日本アオコ大図鑑』159pp,誠文堂新光社,\6000+税
(※05)よしさん(2008):「見た目アオコ指標と指標写真」http://wakasagi.jpn.org/
(※06)よしさん(2012):「亀山湖のボルボックス」http://wakasagi.jpn.org/
(※07)よしさん(2012):「千葉県笹川湖の魚類餌料プランクトン(2012年夏季)」http://wakasagi.jpn.org/
(※08)よしさん(2012):「千葉県笹川湖のフサカ属(2012年)」http://wakasagi.jpn.org/
(※09)よしさん(2012):「千葉県笹川湖のアオコ現象(2012年)」http://wakasagi.jpn.org/
(※10)よしさん(2012):「千葉県亀山湖の魚類餌料プランクトン(2012年夏季)」http://wakasagi.jpn.org/

採取:2012年08月31日(金)09:00 亀山湖(湖畔の宿つばきもと桟橋) 天候○ 水温:29.0℃
水位:減水4m 水の透明度:かなり不良 検鏡撮影:2012年09月09日(日)〜12日(水)
発表:2012年09月29日(土)前・牛久沼漁業協同組合顧問よしさん
「ザ・レイクチャンプ」シークレット・ポイント0005 亀山湖

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