検鏡し撮影した顕微鏡写真を、上記に示す(fig.01-fig.03)、なお背景のグリッドは100μm間隔である。
2012年夏季の笹川湖は、5mほど減水しており(※11・fig.00)、藍藻類のアナベナ・マクロスポーラ Anabaena macrospora を主因とする
アオコ現象が発生し(※12)、その程度は、国立環境研究所の提唱した「見た目アオコ現象」(※06)のレベルをあてはめると、
レンタルボートすずき桟橋周辺はレベル2〜3であった(※11・fig.00)。
異常繁殖したアナベナ・マクロスポーラ Anabaena macrospora の中に、フサカ属の幼虫 Chaoborus flavicans を観察した(fig.01-fig.03)。
同日調査した「千葉県笹川湖の魚類餌料プランクトン(2012年夏季)」(※11)・「千葉県笹川湖のアオコ現象(2012)」(※12)
は別途報告している。
【考察】
「幼虫期だけを淡水中ですごす昆虫にはユスリカ・カゲロウ・トビケラ・カワゲラ・トンボなどがあって、魚の食物として
大切な役割をしている。(中略)ユスリカなどと同じ双翅目に属するフサカの幼虫にはえらはなく、体内に前後一対づつ、
いぶし銀色の空気ぶくろを備えている。」と宮地伝三郎博士は述べている(※01)。
フサカ幼虫は、プランクトンを捕食するので、従来肉食性と見られていたが、
「フサカ幼虫の主な餌は夏には鞭毛藻類の Ceratium hirundinella,春と秋には Daphnia rosea Sars
であることが判った。」という研究がある(※02)。
Ceratium hirundinella は、笹川湖で多くみられるツノオビムシ(渦鞭毛虫・※10・fig.10)で、
Daphnia rosea Sars は、和名カワリハリナガミジンコである(※04)。
また、フサカ幼虫はプランクトン食性であるため、フサカ幼虫の生息する水域のプランクトン(Daphnia Pulex)は、
より喰われ難いように体の一部を「トゲ(棘)」に変化させる、つまり防御形態(ネックティース)を形成することも報告されている(※05)。
フサカ幼虫に、なじみのない釣り人もいるであろうが、
例えば、長野県深見池(最大深度7.75m)に生息するフサカ幼虫は、夏季において、
ブラックバスやブルーギルに捕食されていることが知られている(※07)。
本稿フサカ幼虫は、笹川湖において夏季の午前10:00に、中表層から採取された個体で、斜面を成すボトムから
採泥器で直接採取されたものではないことから、「昼間は泥に浅く潜っているが、夜間に水中に出て食物を採りこのときふくろの
空気を更新する。」(※01)というフサカ幼虫の本来の生活史を外れた個体と言え、
異常繁殖したアナベナ・マクロスポーラ Anabaena macrospora に阻まれ、朝になっても泥に沈むことが
できなかったと推定される。
「1m2あたり1万を越える生息密度も希ではない」(※01)とされるフサカ幼虫の、笹川湖における生息密度及び分布、並びに
推定総個体数等が将来明らかになれば、魚類資源管理等に応用の道が開けよう。
【謝辞】
プランクトン調査のため、桟橋利用を快諾されたレンタルボートすずきに感謝します。
【参考文献】よしさん架蔵書
(※01)宮地伝三郎(1972):フサカ『淡水の動物誌』第2刷,152-153pp,朝日新聞社, \400
(※02)謝 平(1989):「魚のいない、富栄養池におけるプランクトン群集の栄養関係」
筑波大学理学博士学位論文(要旨), 104-105pp, http//www.tulips.tsukuba.ac.jp/dspace/bitstream/2241/.../A0621.pdf
(※03)よしさん(1996〜2012):笹川湖「ザ・レイクチャンプ」http://lake-champ.com
(※04)田中正明(2002):『日本淡水産動植物プランクトン図鑑』viii+584pp,名古屋大学出版会(名古屋市), \9975
(※05)今井眞木(2005):「環境変化に応じたミジンコの形態変化の分子機構」,
平成17年度リサーチアシスタント成果報告書,北海道大学・大学院地球環境科学研究院・低温科学研究所(札幌市),
http://www.ees.hokudai.ac.jp/coe21/J/study/17RA/imai.pdf
(※06)よしさん(2008):「見た目アオコ指標と指標写真」http://wakasagi.jpn.org/
(※07)永野真理子ら(2009):「可塑的防衛行動はいつも適応的か?:魚捕食のない冬期のフサカ日周鉛直移動」
日本生態学会第56回全国大会一般講演(ポスター発表) PC2-772, http://www.esj.ne.jp/meeting/abst/56/PC2-772.html
(※08)よしさん(2010):「千葉県笹川湖のプランクトン(2010)」http://wakasagi.jpn.org/
(※09)よしさん(2010):「千葉県笹川湖のディフルギア属」http://wakasagi.jpn.org/
(※10)よしさん(2010):「千葉県笹川湖のツノオビムシと淡水赤潮」http://wakasagi.jpn.org/
(※11)よしさん(2012):「千葉県笹川湖の魚類餌料プランクトン(2012年夏季)」http://wakasagi.jpn.org/
(※12)よしさん(2012):「千葉県笹川湖のアオコ現象(2012)」http://wakasagi.jpn.org/
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