検鏡し撮影した顕微鏡写真を、上記に示す(fig.01-fig.07)、なお背景のグリッドは100μm間隔である。
2012年夏季の笹川湖は、5mほど減水しており(fig.00)、藍藻類のアナベナ・マクロスポーラ Anabaena macrospora を主因とする
アオコ現象が発生し、その程度は、国立環境研究所の提唱した「見た目アオコ現象」(※04)のレベルをあてはめると、
レンタルボートすずき桟橋周辺はレベル2〜3であった(fig.00)。
同日調査した「千葉県笹川湖の魚類餌料プランクトン(2012年夏季)」(※09)・「千葉県笹川湖のフサカ属(2012)」(※10)
は別途報告している。
【考察】
採取した池水を顕微鏡下で観察したところ、今回の水の華(アオコ現象)は、
藍藻のアナベナ マクロスポーラ(fig.01-fig.05)の異常繁殖を主因とし、クロオコックス属(fig.06)、ミクロキスティス エルギノーザ(fig.07)
の合計3種からなる複合現象であることが明らかになった。
優占種のアナベナ(fig.01)を詳しく観察すると、
「アキネートは異質細胞から栄養細胞3個以上離れた位置に形成される」(fig.02-fig.05)、
「アキネートは長い楕円形である」、「トリコームは螺旋を巻かず、不規則に曲がらず、絡み合わず、直線的である」、「細胞は球形」
等の特徴を持っていた。
これを、『日本アオコ大図鑑』(※07)の「アナベナ属の種の検索表」(64-65pp)、及び
「Anabaena macrospora Klebahn」(同書・76-77pp)、並びに「日本産 Anabaena の種の検索表」(同書・137-139pp)
の記載及び掲載写真を注意して確認し、アナベナマクロスポーラ Anabaena macrospora と同定した。
よしさんは、2010年の笹川湖におけるプランクトン調査結果(※05)で、アナベナマクロスポーラが多く観察されたことに関し、
水の華(アオコ現象)を形成するほどの異常繁殖ではなく、「挙動を観察継続することがベターであろう」と指摘した。
今回調査では、全プランクトンを通じ、アナベナマクロスポーラが優占種となっただけでなく、
クロオコックス属(fig.06)、ミクロキスティス エルギノーザ(fig.07)の合計3種からなる複合現象として、
アオコ現象を発生させており、笹川湖の富栄養化は重篤化傾向が進んだことに一層の注意を要する。
【謝辞】
プランクトン調査のため、桟橋利用を快諾されたレンタルボートすずきに感謝します。
【参考文献】よしさん架蔵書
(※01)よしさん(1996〜2012):笹川湖「ザ・レイクチャンプ」http://lake-champ.com
(※02)田中正明(2002):『日本淡水産動植物プランクトン図鑑』viii+584pp,名古屋大学出版会(名古屋市), \9975
(※03)渡辺眞之(2007):『日本アオコ大図鑑』159pp,誠文堂新光社,\6000+税
(※04)よしさん(2008):「見た目アオコ指標と指標写真」http://wakasagi.jpn.org/
(※05)よしさん(2010):「千葉県笹川湖のプランクトン(2010)」http://wakasagi.jpn.org/
(※06)よしさん(2010):「千葉県笹川湖のディフルギア属」http://wakasagi.jpn.org/
(※07)よしさん(2010):「千葉県笹川湖のツノオビムシと淡水赤潮」http://wakasagi.jpn.org/
(※08)よしさん(2012):「千葉県雄蛇ケ池のアオコ現象(2012年夏季)」http://wakasagi.jpn.org/
(※09)よしさん(2012):「千葉県笹川湖の魚類餌料プランクトン(2012年夏季)」http://wakasagi.jpn.org/
(※10)よしさん(2012):「千葉県笹川湖のフサカ属(2012)」http://wakasagi.jpn.org/
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