summary:
A grayish white scum-formed film observed in Onjyaga-ike pond (Togane-city, Chiba) on Wednesday, August 07, 2013
treats a kind of the algal bloom, so-called "SHIROKO phenomenon" and the method that I confirmed,
the identification of the cause microbe of the phenomenon,
the chronological order observation example of the surface of the water change in the "SHIROKO phenomenon"
by a phenomenon to open on the surface of the water,
and this report considers the continuance of the "SHIROKO phenomenon".
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fig.00 雄蛇ケ池のシロコ現象(ボート桟橋沖)撮影:2013年08月08日(木)
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【藻食性アメーバ・アステロカエラムによる千葉県雄蛇ケ池のシロコ現象】
雄蛇ケ池(千葉県東金市)は、1614(慶長19)年に完成した、大規模な灌漑用溜池である(※06)。
【経緯と目的】
千葉県雄蛇ケ池では、繁茂した水生植物の除去を目的に、2006年早春に草食魚ソウギョが放流された。
2007年に水生植物の減少が顕著になり、
2007年秋季までに、水生植物帯の約70%程度が消滅し、生態系に最大級の影響を与えた。
水生植物はソウギョに食害され、水中に排出されたソウギョの糞塊は微生物による分解変質を経て、
植物プランクトンに利用されやすい中間体となり、水面被植面積縮小による高水温と底泥巻上げを併せ、
ミクロキスティス・アナベナ・オシラトリア等の藍藻類大繁殖を助長し、重度で複合したアオコ現象を
毎年反復し招来させていることが、明らかになった(※12〜※27)。
換言すれば、雄蛇ケ池の水生植物はソウギョの糞塊となり、藍藻類異常繁殖を引起す主因になっている
という相関関係が指摘できる。
fig.01 雄蛇ケ池のシロコ現象(ボート桟橋)撮影:2013年08月08日(木)
2013年夏季については、07月14日(日)、雄蛇ケ池クリーンアップ大作戦へ参加し、
アオコ現象で異臭が漂う水際のゴミを拾いつつ、アオコ現象の状況確認を行い、原因藍藻類解析のため
池水を採取し、持帰り検鏡観察した結果を報告している(※28)。
その詳細は同報告に譲るが、ここでは アナベナマクロスポーラ Anabaena macrospora の異常繁殖が観察
されたことを(前提条件として)特記しておく。
本報では雄蛇ケ池で観察された、灰白色のスカム状被膜が水面に広がる現象(fig.00-fig.01)を、水の華の一種、
いわゆる「シロコ現象」(アオコ現象=青粉現象=に対して、シロコ現象=白粉現象=の造語)と確認した
方法、現象の原因微生物の同定、シロコ現象における水面変化の時系列観察事例を扱い、
シロコ現象の継続期間についても考察する。
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【シロコ現象確認の方法及び現象の原因微生物の同定】
2013年08月07日(水)、藍藻類の異常繁殖によるアオコ現象発生中の雄蛇ケ池において、
灰白色のスカム状被膜が水面に広がり、一部は波浪で岸辺に打ち寄せられる現象が顕著になったと、
現場に居た知人(ハンドルネーム:つかじー氏)から第一報が入る。
現象の原因を探るべく、水面の灰白色のスカム状被膜の採取を依頼し、同夜サンプルを届けて頂いた。
採取サンプルの外観を fig.02a ・fig.02b に示す。
fig.02a 池水表層水の様子(ペットボトル)撮影:2013年08月07日(水)
採取&提供:(ハンドルネーム)つかじー氏
fig.02b 池水表層水の様子(ペットボトル)撮影:2013年08月07日(水)
採取&提供:(ハンドルネーム)つかじー氏
同夜、採取サンプルを検鏡した結果を fig.03 に示す(背景のグリッドは100μm間隔)。
fig.03 水中の様子 撮影:2013年08月07日(水)
2013年07月14日(日)に観察された、雄蛇ケ池におけるアナベナマクロスポーラ Anabaena macrospora の
異常繁殖(※25)を踏まえ、顕微鏡に現れた映像から、浮遊性アメーバの、アステロカエラム Asterocaelum sp.
(がシストを形成し球状になったもの)であろうと推定できた。
しかし、確定するためには信頼のおける先行文献を引いて比較検討する必要があり、
オンラインで文献を探し、山本鎔子博士の「湖沼における溶藻性微生物の分布と藍藻への影響」(※09)
figure 11.木崎湖のアメーバ Asterocaelum anabaenophilum の(a)・(f)・(g)・(h)
カラー写真及び本文と注意深く比較し、一部相違点もあるため、 Asterocaelum anabaenophilum (Cook et al.1974,1976)であるか、
Asterocaelum algophilum (Canter.1973)かの種の特定をせず、Asterocaelum sp. と深夜過ぎに同定した。
翌08月08日(木)午前、雄蛇ケ池を訪れ、揚水機場横・ボート桟橋沖・ボート桟橋で
シロコ現象を目視観察・撮影し再確認した。
特に、ボート桟橋沖(fig.00)及びボート桟橋の水面に広がった灰白色のスカム状被膜の様子(fig.01)は、かつて2005年07月25日(月)〜26日(火)に、
亀山湖(千葉県君津市・人造湖)で、発生・観察した現象の再現であると確信した(※11)。
雄蛇ケ池のアステロカエラム Asterocaelum sp.の生活環の一端における諸相については、
国立国会図書館複写受託センターに依頼した関係文献(コピー)との比較検討を含め、別途報告する(※30)。
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【シロコ現象における水面変化の時系列観察事例】
一般的に、顕微鏡や専門文献を用いる微生物の検鏡・同定よりも、目視で可能な水面観察のほうが
簡易で速効性が高いメリットがあろう。
そこで以下に、2013年07月14日(日)( fig.04)・08月04日(日)( fig.05)・08月07日(水)( fig.06)
・08月08日(木)( fig.00-fig.01, fig.07)・08月12日(月)( fig.08- fig.09)・08月15日(木)( fig.10)における雄蛇ケ池
の水面の様子を時系列で示し、併せて国立環境研究所の提唱した「見た目アオコ現象」(※15)のレベル並びに水温を示す。
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fig.04 07月14日(日)・岸辺に灰白色のスカム状被膜あり(揚水機場横)
レベル5・水温31.6℃(10:30)
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fig.05 08月04日(日)・北岸
撮影:(ハンドルネーム)つかじー氏
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fig.06 08月07日(水)・岸辺
撮影:(ハンドルネーム)つかじー氏
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fig.07 08月08日(木)・灰白色のスカム状被膜渦あり(揚水機場横)
レベル2〜3・水温32.6℃(10:30)
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fig.08 08月12日(月)・アオコ現象の渦あり(揚水機場横)
レベル2〜3・水温33.8℃(11:00)
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fig.09 08月12日(月)・灰褐色のスカム状被膜の集積浮遊物あり(ボート桟橋)
レベル2〜3・水温33.8℃(11:30)
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fig.10 08月15日(木)・堰堤の灰褐色沈殿物
レベル1〜2
撮影:(ハンドルネーム)つかじー氏
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■07月14日(日)に、揚水機場横の岸辺に灰白色のスカム状被膜が観察された(fig.04)。
しかし、再度検鏡の結果、アステロカエラム Asterocaelum sp.の生活環の諸相に該当しそうな形態の
アメーバは未検出であった。
■07月31日(水)は、アオコ現象の継続は観察されたが、水面に被膜は存在しなかった。
■08月04日(日)に、北岸で灰白色のスカム状被膜が観察された(fig.05 )。
■08月07日(水)に、岸辺で灰白色のスカム状被膜が観察された(fig.06 )。
■08月08日(木)に、揚水機場横で灰白色のスカム状被膜渦が観察された(fig.07 )。
同日、ボート桟橋沖合及びボート桟橋で灰白色のスカム状被膜が観察された( fig.00-fig.01)。
■08月12日(月)に、揚水機場横の灰白色のスカム状被膜渦は消失し、アオコ現象の渦が観察された(fig.08 )。
同日、ボート桟橋で灰褐色のスカム状被膜の集積浮遊物が観察された(fig.09 )。
■08月15日(木)に、堰堤の水底で灰褐色沈殿物が観察された(fig.10 )。
一方、国立環境研究所の提唱した「見た目アオコ現象」(※15)のレベルは、次のように変化した。
■07月14日(日)レベル5
■08月08日(木)レベル2〜3
■08月12日(月)レベル2〜3
■08月15日(木)レベル1〜2
異常繁殖した藍藻類の一種アナベナマクロスポーラ Anabaena macrospora を、
藻食性アメーバの一種アステロカエラム Asterocaelum sp. が捕食し、池面全体を灰白色のスカム状被膜で覆った
水の華現象(俗称:シロコ現象)の水面変化の時系列観察事例から、今回の現象は、少なくとも08月01日(木)〜04日(日)に始まり、
08月04日(日)〜08日(木)にピークを迎え、12日(月)には一部が水中に沈降し始め水面から消失し(揚水機場横)、
また灰褐色の別の一部は水面に集積浮遊し(ボート桟橋)、
池水そのもののアオコ現象は、アナベナマクロスポーラ Anabaena macrospora
が食害されアステロカエラム Asterocaelum sp. がシストとなって減じた分だけ軽減化されたと見られる。
さらに、08月15日(木)に、堰堤の水底で灰褐色沈殿物が観察された(fig.10 )ことは、シストの沈降を意味し、
船越真樹らの「木崎湖における浮遊性アメーバの爆発的増殖」(※01)の記述、「耐久シストは、沈降性が高く、岸辺の水中では見かけることもあるが、
沖合水の水中から出てくることはまれである。」(35pp)、「底泥上にも多数のシストと耐久シストが降下するものと考えられる。」(38pp)に合致し、
よしさんが保管するサンプルも一部はボトムに沈殿していることと符合する。
従って、今回のアステロカエラム Asterocaelum sp. の活動は、08月01日(木)〜04日(日)に始まり、08月08日(木)
まで継続した後、12日(月)〜15日(木)にかけて池底に沈降し、ひとまず静穏化した1峰型と考察される。
過去に雄蛇ケ池において、本報に掲載した現象写真に類似した事例が発生した可能性は否定できないものの、
確たる報文も見当たらないため、本報が雄蛇ケ池における藻食性アメーバ・アステロカエラムによるシロコ現象
の初報に相当しよう。
アステロカエラムの飼育に関する水温の倍化時間は、20℃で31時間、25℃で15時間というデータがあり(※01・36pp)、
高水温(25℃)になると、より短時間で勢力を増す(倍化時間が20℃の時よりも短縮される)と言える。
木崎湖(長野県)の事例では、「06月」「07月31日」「10月05日」と断続的に出現の報告があり(※01・32pp)、
湖面標高は木崎湖764m・雄蛇ケ池17.12m(※06)で、両者の立地比較では雄蛇ケ池の方が温暖と見られることから、
雄蛇ケ池においては木崎湖の出現期間を超え、アステロカエラム Asterocaelum sp.によるシロコ現象が出現する可能性が暗示され、
今後の観察努力次第では、雄蛇ケ池で新たに明らかになる部分があると考えられる。
【謝辞】
水面状況変化を見抜き、即座にサンプルを採取しお届けくださり、写真転載を快諾された
「雄蛇ヶ池の話 〜蛇の道は蛇〜」主宰つかじー氏(ハンドルネーム)に感謝します。
現地調査のため、桟橋利用を快諾されたボートハウスツカモトに感謝します。
【参考文献】(よしさん架蔵書)
(※01)船越真樹・清沢弘志・林 秀剛(1985):「木崎湖における浮遊性アメーバの爆発的増殖」『環境科学研究報告集』
B258-R12-7 「らん藻アナベナによる水の華の消長と藻食性アメーバ」,29-43pp,国立国会図書館複写受託センターよりコピー受取
(※02)生嶋 功(1991):『水の華の発生機構とその制御』第2刷,183pp,東海大学出版会,\1648
(※03)朱 浩然(1991):『中国淡水藻志 第二巻 色球藻綱』第1版,vi+161pp,科学出版社(北京),13.00元
(※04)藤田善彦・大城 香(1993):『ラン藻という生きもの』第2刷,134pp,東京大学出版会,\1648
(※05)渡辺真利代・原田健一・藤木博太(1994):『アオコ−その出現と毒素−』257pp,東京大学出版会,\4738
(※06)よしさん(1996〜2013):雄蛇ケ池「ザ・レイクチャンプ」http://lake-champ.com
(※07)田中正明(2002):Anabaena macrospora 『日本淡水産動植物プランクトン図鑑』260-261pp,名古屋大学出版会(名古屋市), \9975
(※08)山本鎔子(2003):「湖沼における溶藻性微生物の分布と藍藻への影響」『明治大学農学部研究報告』
(136)1-23pp,国立国会図書館複写受託センターよりコピー受取
(※09)山本鎔子(2003):「湖沼における溶藻性微生物の分布と藍藻への影響」『明治大学農学部研究報告』
(136)1-23pp,
(※10)渡辺眞之(2007):『日本アオコ大図鑑』159pp,誠文堂新光社,\6000+税
(※11)よしさん(2006):「水の華シロコ現象とは(亀山湖における2005年の事例)」http://wakasagi.jpn.org/
(※12)よしさん(2006):「アオコとは(雄蛇ケ池における2006年の事例)」http://wakasagi.jpn.org/
(※13)よしさん(2007):「アオコとは(雄蛇ケ池における2007年の事例)」http://wakasagi.jpn.org/
(※14)よしさん(2008):「雄蛇ケ池のアオコ現象と原因藍藻類の変遷(2006〜2008年)」http://wakasagi.jpn.org/
(※15)よしさん(2008):「見た目アオコ指標と指標写真」http://wakasagi.jpn.org/
(※16)よしさん(2008):「雄蛇ケ池におけるアオコ現象と想定される毒性」http://wakasagi.jpn.org/
(※17)よしさん(2008):「これがソウギョの糞塊だ(千葉県雄蛇ケ池の事例)」http://wakasagi.jpn.org/
(※18)よしさん(2009):「雄蛇ケ池のアオコ現象、見た目と実態(2009年)」http://wakasagi.jpn.org/
(※19)よしさん(2009):「アオコ現象の千葉県雄蛇ケ池における捨水管理と結末」http://wakasagi.jpn.org/
(※20)よしさん(2009):「紅葉してもアオコ現象の千葉県雄蛇ケ池」http://wakasagi.jpn.org/
(※21)よしさん(2010):「アオコ現象連続発生の千葉県雄蛇ケ池」http://wakasagi.jpn.org/
(※22)よしさん(2010):「師走の雄蛇ケ池における、藍藻類観察報告」http://wakasagi.jpn.org/
(※23)よしさん(2011):「千葉県雄蛇ケ池のアオコ現象(2011年夏季)」http://wakasagi.jpn.org/
(※24)よしさん(2011):「雄蛇ケ池におけるソウギョの糞塊」http://wakasagi.jpn.org/
(※25)よしさん(2011):「師走の雄蛇ケ池における、藍藻類観察報告(2011)」http://wakasagi.jpn.org/
(※26)よしさん(2012):「皐月の雄蛇ケ池における、藍藻類観察報告(2012)」http://wakasagi.jpn.org/
(※27)よしさん(2012):「千葉県雄蛇ケ池における藍藻類の変遷(2006〜2012)」http://wakasagi.jpn.org/
(※28)よしさん(2013):「千葉県雄蛇ケ池のアオコ現象(2013年夏季)」http://wakasagi.jpn.org/
(※29)よしさん(2013):「千葉県雄蛇ケ池の魚類餌料プランクトン(2013年夏季)」http://wakasagi.jpn.org/
(※30)よしさん(2013):「千葉県雄蛇ケ池における、藻食性アメーバ・アステロカエラムの諸相」http://wakasagi.jpn.org/
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